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泣きながら食べたケーキ

3年前のクリスマス。
私はまさにどん底にいた。

離婚調停が牛歩みたく進まず
DVで家に最寄り付かず、
フラフラ飲み歩いては
私や子どもたちに暴言を吐く元夫(以下クズ)
そんなくせに親権を要求してきて
更に調停を遅らせる。
クズが残した借金をずっと返済し続ける10年間。
『次はちゃんとする』
『これで終わりにする』
幼い子どもたちを抱きしめ
クズの戯言に10年付き合ってきた。
もう限界に達して離婚を言うと
どこかへ逃げた。
話し合いにすらならなかった。
引き摺り出して、調停離婚にしたけれど
月に一回の調停は歯痒いものでしか無い。

調停員はあくまで仲をとり持つだけ。
クズがあまりにひどく、書記官まで同席する次第にもなった。

子どもたちから離婚してほしいと言われて
腹を括ったものの
クズとの話にならない話し合いは
私をズタズタにした。

それでも私は笑顔を作って仕事に行ったし、
私と子ども達の身の危険から、と言う理由で実家暮らしをしていた。
子どもたちの前ではいつもの母で居た。

それが母である私の勤めだと思っていたから。

金銭的にもキツかった。
その時はまだ市の嘱託で、非正規雇用。
離婚が成立していないので何も手当もなく、
クズが調停中に振り込むべきお金も滞っていて。
実家暮らしとはいえ、食費は全て出した。
光熱費は出せないから食費だけでも出して、社会人と言う名目を保ちたかった。

共同名義の住宅ローンは私1人が支払う事になり、それだけはクズの口座から引き落としになっていたので、それが止まってしまいかなりの出費となった。

クリスマス間近になって、
子どもたちへプレゼントも
ケーキすら買ってあげられる余裕も無い現実を前に1人、風呂場で泣くしかなかった。

そんな母を見て2人は
『無理しなくていいよ、クリスマスはまた来るから。』って言ってくれたけど
母としての不甲斐なさと無力さが堪らなく私を刺し続けた。

そんな時、冬休みに、ひょこっと名古屋から叔父が来福した。
祖母が亡くなってからは久しぶりな事で、子どもたちも久しぶりの優しい叔父に大喜びだった。

私が仕事に行ってる間、叔父は子どもたちを連れて買い物に連れて行ってくれて、こう言ったそうだ。
『お母さんをいつも助けてくれてありがとう。叔父ちゃんが2人の欲しいもの、全て買ってあげるから言うてごらん』って。

2人は素直に喜んで、
娘は英和辞典と百科事典とバックを買ってもらった。
息子は新しいスニーカーと本を買ってもらった。
叔父は『それだけか?』と聞いたらしいけれど
2人は今はこれが欲しい、他に思いつかないと言ったとの事。

仕事から帰宅して嬉しそうに話す2人を見て、叔父に感謝しかなかった。
叔父が帰る日の朝、駅まで送って行くと
『これは少し早いけど、お年玉やから正月が来たら子どもたちに渡してな』と
3つポチ袋をくれた。

1つには私の名前が書いてあった。

『キツかったらいつでも言いなさい。そんな大金持ちじゃ無いけど、力になるから』
そう言って叔父は名古屋に帰って行った。

開けると5万円があった。
泣くほど嬉しかった。
子どもたちにケーキが買ってあげれる。
支払いものが出来る。

車の中で私は音楽を大音量にして
わんわん子どもみたいに泣いた。

その日の夜
友人から電話がかかってきた。
『ねぇ、もうケーキ頼んだ?』
私はまだだよと答えると、
『良かったー♪実はさ送ったんだよねー』と。

クリスマス当日の朝、
それはそれは大きくてツヤツヤの
チョコレートケーキが届いた。

私は叔父からの5万円を思い
友からのケーキを泣きながら食べた。
子どもたちが
『母は泣き虫なんだからー』とヨシヨシされながら涙は止まる事は無かった。

翌年の4月に、私は正社員として新しい一歩を踏み出し、5月に調停離婚は成立した。
結果的にクズは自己破産寸前で、今までの借金も返済されなかったけど、私は子どもたちとの生活と、戸建てを手に入れた。

相変わらず実家暮らしは続けていたが、10月に家に戻る事にした。
父とは決して悪く無い関係性で、どちらかと言うと仲は良いのだけど、ずっと一緒に暮らすのも正直しんどくなってきていた。

光熱費の支払い、住宅ローンの支払い、
いろんなことが不安だったけど、あれから2年が経つ。
家に戻って2回目のクリスマスが来る。

私はあの冬を忘れない。

オランダ姓の彼が亡くなったのも冬だった。

絶望感だけだった冬と
人の優しさが心底有り難かった冬。

私はどちらも忘れない。

今だって決して生活には余裕なんてないし
クズの嫌がらせもある。

けれど、私は知ってしまった。

私の周りの人たちの尊さを。
それは何より私を強くする。



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