鵜飼ヨシキ

京都の裏寺/極楽寺の僧侶。元書店員。2022年にほぼ1年間イギリス留学してました。I’…

鵜飼ヨシキ

京都の裏寺/極楽寺の僧侶。元書店員。2022年にほぼ1年間イギリス留学してました。I’m from Kyoto, Japan. I was born at GOKURAKU-ji temple.

マガジン

  • webマガジン「退屈と恍惚」

    鵜飼ヨシキによる考えたことや読書記録やその他もろもろ

  • 『コロナの時代の僕ら』を読む

    『コロナの時代の僕ら』の章のひとつひとつをもう一度読み、そこから思うことを、いまだからこそ書き残しておきたいと思い、マガジンを作りました。読書録やそこから発想したエッセイのようなものです。

  • 祈りの実践

    祈るとはなんなのか、何に対して祈るのか。毎日の祈りを通して見つける生活の実践記録。

最近の記事

歩行記 #1 ポーランドの味の輪郭

ポーランドの料理は味がする。 この数年、ヨーロッパの各地に行ったけれども、食事の場面では考えさせられることが多かった。 留学していたイギリスの料理は美味いと言えるものではなかった。このニュアンスは難しい。まずいわけではない。味というのは個人の感覚に左右されるものなので、僕には合わないとか、日本人には合わないとか、そういう表現が正しい。正確にその人の言うまずいというのは boring なのか tasteless なのか disgusting なのか、明確にせず「まずい」とい

    • 感情をめぐる旅の過程 vol.2 いい感情と悪い感情

      ヴィパッサナー瞑想というものがある。インドでブッダが取り入れた瞑想方法がミャンマーに伝わり、そこで深められたのちに世界に発信された瞑想方法だ。いろんな国や地域で受けることができて、10日間施設に入って勉強をする。「観察」や「気づき」の瞑想とよく言われている。 僕は東京に住んでいたころに、このヴィパッサナーのコースを受けた。日本では京都と千葉で受けることができる。森に囲まれたなかで、朝から晩までひたすら瞑想をする。瞑想は一回1時間、それを一日4-8回くらい行う(無理はしなくて

      • 感情をめぐる旅の過程 vol.1 SNS

        最近SNSを見ていてつらい。SNSどころか、スマホを見るのも億劫になってきている。誰かに会いたくないわけではない、体力も体調もいい感じだ。だけれどもスマホを手に取るとため息が出る。本や映画に時間を費やしているときは感情の行き場が落ち着く。誰かと話していてもそうだ。TwitterもInstagramもThreadsも関係ない。 じゃあSNSなんてやめればいいんじゃないの?とも思うのだが、ここで感情が働き始める。もちろんやめない理由はたくさんある。自分の活動を誰かに伝えたいし、

        • 感情をめぐる旅の過程 vol.0

          「愛」と「感情」と「可愛い」という言葉が苦手だ。こんな戯言を続けて10年くらいになる。 誰かのことを知りたければ、何が好きかより、何が苦手かを聞いた方が面白くてその人のことがよくわかる。嫌いなものや不得意なことを話す人の顔は輝いている。そして本当に苦手なことは容易には口にしない。なので口に出すことのできる苦手なことというのは、コミュニケーションに役立つ。 だから僕が言う「愛」と「感情」と「可愛い」は、苦手なんだけれどもどこか気になって仕方ないものなのだろう。 ではなぜ気

        歩行記 #1 ポーランドの味の輪郭

        マガジン

        • webマガジン「退屈と恍惚」
          13本
        • 『コロナの時代の僕ら』を読む
          6本
        • 祈りの実践
          1本

        記事

          祈りと実践 0日目

          祈りとはなんなのか。祈るとはなんなのだろうか。何に向かって、どうやって祈るのか。あるときそんなことを思った。 ぼくは寺で生まれた僧侶としてやっている。なのでおつとめでお経を読んでいる。お寺は浄土宗のお寺なので、南無阿弥陀仏と何度も何度も念仏を唱える。 いまの人たちは宗教が身近に無いと言われている。これについては反論があるのだけれども、まあ少なくとも既成の宗教行為を行う数は以前よりも減ったことは事実である。うちみたいな、観光寺院ではない小さなお寺はお参りに来る人の数が年々減

          祈りと実践 0日目

          イギリス行くんやで

          2022年4月2日。イギリスに向かって出発する飛行機を待っている。 夜の関西空港はひとけが少ない、わけでもない。わりと人はいる。 2年前、突如ぼくらは人との距離を計られ、顔を見ない生活がはじまった。そのころに比べると、いくぶんかマシになったんだろうけれど、やっぱりまだ関空のレストランは閉まっている。もしかしたら時間のせいかもしれないけど。 搭乗ゲートのフロアの喫煙所は閉まっていて、さらに夕食を取り損なった僕は、ひたすらジュースを飲んで気を散らしている。 友人からもらった本を

          イギリス行くんやで

          22通目「what's new?」

          お久しぶりです。ほんとお久しぶりですね。とは言ってもしょっちゅう話しはしているのですが。ここではお久しぶりです。 いやー。なんかね、不安定というか、ずっとめまいがしているんだけど軽口叩けるくらいの気分はあって、だからか思考が変な方向に行きがち。ネガティブの波が襲ってきて、いかんですね。 京都は桜が咲き始めて、通勤路の蹴上の疎水ではちらほら桜色が目立つようになってきました。桜を桜色って表現するこの感じをあえて。 what' new?に対して私はnot muchなわけなんで

          22通目「what's new?」

          19通目「成り行きに任せるとかじゃなくて」

          前回の手紙 中西森奈さま どもども。絶賛棚行(お盆参り)中の鵜飼ですよ。空いた時間でぽちぽちお手紙を書いてますよ。今日の文体はスマホで書いているので、スマホ的文体ですよ。違うと思うんだよね、スマホとPCでは。それが伝わるかは知らないけど。 うん。おれは共感って結構どうでもいいと思ってる。むかしは「共感なんてしてやるもんか!」って思っていたけど、いまは共感もしていると思う。でも、それが大事なんじゃなくて、その先が大事。おれも共鳴って言葉が好きで、なんなら共振でもいい。わか

          19通目「成り行きに任せるとかじゃなくて」

          17通目「恋は1対1だから」

          前回の手紙 仲西森奈さま 送ってもらった動画見て、動画見ながらお返事書きます。いいなあ。すごいいい。 笑い続ける勇気。朗らかであり続ける勇気。楽しみ続ける勇気。どんな行為にも(たとえそれがどんなポジティブさを伴うものでも/ポジティブさを伴うからこそ)勇気ってたぶんぜったい必要で。 本当いまこれが大事だと思う。なんでもかんでもいまの時世とかに絡めるのも好きじゃないんだけれど、だけれど、やっぱりネガティブになりがちな時代にポジティブであることは勇気だし希望だと思う。楽観で

          17通目「恋は1対1だから」

          15通目「いつだって、恋をするのは14歳の自分です」

          仲西森奈さま ちょっと間があきました。お元気ですか。もうなんかずっと雨、雨、雨ですね。もろもろのことはあるのですが、実はすこし雨が好きで、だって空から水が降ってくるって変じゃないですか? なにごと!?って思ったころがあると思うのです、僕らにも。まあ体調とか、災害のことを考えたらそんなのんきなことは言ってられないんだけれど、でも真面目に考えるからこそ、両面から捉えていたいという気持ちがあるのです。そうじゃないと、なんかつまらないじゃないですか、世界。 そういえば仲西ってたま

          15通目「いつだって、恋をするのは14歳の自分です」

          13通目「ぼくらは檻を見ている」

          前回の記事 仲西森奈さま 梅雨ですね。7月っていつもこんな天気だったっけなあ。7月はいつも遠い。高校時代の憧れや恋が混濁した視線で見ていた先輩みたいな。そんな気持ちでいつも7月を見ている。あつい。 今週はトーキングライブな一週間で、友人とのpodcastや職場でもストリーミング配信、別の企画のミーティングや授業など、話して話して話しまくった一週間でした。声を出すって疲れるね。だけれど楽しい。私は人と話すのが好きだ。聞くのも話すのも好きだ。誰とでも話すのは得意ではないけれ

          13通目「ぼくらは檻を見ている」

          11通目「いいなあ自由って、自由なんだもんなあ」

          前回の手紙 仲西森奈さま こんばんは。京都はずっとしぐれ続き。窓をあけると雨がしんしんと屋根を打っています。陽が出ると暑く、雨が降ると肌寒い。いつも、6月ってこんなんだったっけて思っている気がする。暦のうえでは夏ですが、こころがまだ夏を受け入れていない、そんな季節。そういえば先日ふと書店で七十二候を呼んでいて、すごく面白い季節の捉え方をしているなと関心しました。今日は「乃東枯(なつかれくさかるる)」と「菖蒲華(あやめはなさく)」のあいだの日。物と動詞で季節を区切っていくと

          11通目「いいなあ自由って、自由なんだもんなあ」

          9通目「もしかしたら24歳かもしれないし、もしかしたら13歳かもしれませんからね」

          前回の記事 仲西森奈さま こんばんは。久しぶりに実家に泊まりながら書いています。おれの場合、実家に帰るって言っても帰省っていうより仕事前日に飲んで寝るために帰っているんだけれど。でも15年以上も実家を離れて暮らしているせいで、やっぱりなんかヨソ感あるね。不思議な気分。畳っていいなあ。実家で暮らしていたときは畳なんてって思っていたけど、夏になるとやっぱりいい。人間って贅沢な生き物だなってつくづく思う。あるときには全然良さに気づかない。物事を正確に見定める目がほしい。とくに近

          9通目「もしかしたら24歳かもしれないし、もしかしたら13歳かもしれませんからね」

          7通目「好きであり続けるっていうのは本当に難しい」

          前回の手紙 仲西森奈さま 京都は梅雨入り中の晴れ日で、じっとりと暑い一日。お元気ですか。僕は右腿にこぶし大の虫刺されみたいなのができて、いたがゆい。職場の同僚に見せたら「それって帯状疱疹じゃないですか?」って言われて、たいじょうほうしん? って脳が混乱しました。もちろん帯状疱疹は知っているのですが、この足の痛みと帯状疱疹っていう言葉が抱える感覚がマッチしなくて、そうか、帯状疱疹かーって燕の巣を見ながら考えていました。帯状疱疹じゃないかもしれないんだけどね。 それにしても

          7通目「好きであり続けるっていうのは本当に難しい」

          5通目「信じてさらに救われる」

          前回の手紙 ----- 仲西森奈 さま 京都は曇りつつ時雨。しぐれって不思議な言葉やな。"ときさめ"と"しぐれ"の音と形の繋がりの距離感が掴めないな。 引越しかー。東京での引越しは大イベントやな。自分は結局南阿佐ヶ谷で3年ほど過ごしただけなので、他の街でも暮らしたいと思っていたなあ。西荻、中野、世田谷憧れ、なんか文化系の悪いところばかり出ている気がする。それでもまあ、どこか憧れを持って引越したので、仕方ないというか。持ち物というか、物持ちの多さってどうしようもないとこ

          5通目「信じてさらに救われる」

          3通目「祈るということ」

          -- 仲西森奈さま そうか東京って涼しいんだなーって、むかし阿佐ヶ谷に住んでいたことを思い出した。確かに、東京での生活と京都での生活で大きく変化したことって、冷凍庫にアイスの備蓄があるかないかだな。阿佐ヶ谷の生活は本当充実してて、人間であることを再確認したなあ。ナカニシとかニッキーとかが突然泊まりに来たりして、下世話な話ばっかりしたことを思い出す。最近何かと昔のことを思い出すこととかがあって、それはいい思い出ばかりではないんだけれど、思い出を反芻するたびに反芻する自分が成

          3通目「祈るということ」