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「九州産」の枠を超えた名馬ヨカヨカ・幸英明さんにとっても格別の勝利

白毛の女王ソダシの力走に沸いた北の大地・札幌。そこから遠く離れた九州の地でも、同じ3歳牝馬が場内を盛大に盛り上げた。熊本県産のヨカヨカが北九州記念を制覇。九州産馬としては05年アイビスサマーダッシュのテイエムチュラサン以来、そして熊本県産馬としては史上初のJRA平地重賞勝利という歴史的な偉業を成し遂げた。

すでに九州産馬の枠を越えた活躍を見せる「名馬」である。

普通なら小倉の九州産限定戦でデビューを迎えるところを、この馬は6月の阪神で早々に出撃。キャロットFのダイワメジャー産駒モントライゼとマッチレースを演じ勝利を収めた時点で、タダモノではない感が漂っていた。小倉に転戦後、フェニックス賞でも一般馬相手に逃げ切り勝ちを収めると、さらに九州産限定のひまわり賞にも出走。獲得賞金の関係で、2歳牝馬には異例中の異例といえる57kgの斤量を背負いながらも、力の違いを見せつける形で3連勝を飾った。
さらにこの馬の奮闘は続く。過去の九州産馬のパターンであれば、ここから対戦する相手もさらに強くなって劣勢に立たされるのがデフォだが、ヨカヨカは懸命に食い下がっていく。1400mのファンタジーSでも5着にまとめ距離延長にメドを立てると、さらに1F延びる阪神ジュベナイルFでも大崩れすることなく5着と善戦。そう簡単には逃げ粘れない阪神外回りのマイル戦でも互角に走れることが、この馬の非凡さを改めて感じさせた。
年明け初戦のフィリーズレビューは僅差の2着。桜花賞は17着と大敗を喫するも、本格的にスプリント路線に転向してからは葵S2着、古馬相手のCBC賞も5着と勝利まであと一歩のところまで肉薄。馬券でも上位人気に支持され、もう誰も「九州産にしてはがんばっている」なんて見方はしていなかったのではないだろうか。

そしてそして、待望の重賞初勝利。管理する谷潔調教師も、生産者の本田土寿さんもこの勝利にはこみ上げてくるものがあったようで。

勝負の世界に生きる男たちの感情をここまで揺さぶるなんて、やはりヨカヨカは名馬でしかない。

そして、手綱を取った幸さんにとっても格別の勝利となった。初騎乗のフィリーズレビュー、そして前々走の葵Sと結果を残せないながら再度オファーを受け「チーム九州」で喜びを分かち合うことができた。今回はハンデが51kgと軽かったため、恐らくまあまあ気合の入った減量を経て臨んだ一戦だったかと思うが、その努力も報われたw
何より、デビュー時に師事した谷八郎元調教師の一周忌のタイミングで、そのご子息の谷潔調教師の管理馬で重賞を勝てたのが大きな出来事だった。重賞勝ちのインタビューでも口数の多くない彼が自ら師匠のことを切り出して話すのは珍しいと感じたし、それだけ期する思いもあったのだろう。

心なしか感極まるような目元に見えなくもない。
温厚な人柄で、それゆえ普段は頼りなげな雰囲気も残る幸さんだが、やるときはやるのである。だからこの厳しい世界で30年近くも落ちぶれることなく戦い続けてこられている。尊敬。

今後はスプリンターズSを目指すことになるだろう。待ち受けているのはダノンスマッシュやレシステンシア、さらにはインディチャンプあたりとのガチバトルである。厳しいw
しかしそんなことは関係ない。これまでと同様、どんなステージでも臆することなく挑戦を続けてきた道のりが、ヨカヨカに携わる多くの人々の心を震わせてきたのだ。堂々とぶつかればいい。そこにまた新たな感動が生まれるはずだ。

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