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「ゴールドシップ産駒の一番星」に見た黄金色の夢

父譲りの不器用さと逞しい末脚に見た夢は、黄金色のようにまばゆかった。

2年前の札幌2歳Sで、最後方からの追い込み2着に入ったサトノゴールド。序盤はまるでレースについて行けず、完敗も覚悟した矢先にエンジンが点火。豪快な末脚で大外から猛然と追い上げ、同じゴールドシップ産駒ブラックホールとの見事なワンツーフィニッシュを決めたのだった。

新馬戦の勝利に続く重賞2着と、順調すぎるステップアップ。期待と不安が入り交じる中で迎えた種牡馬ゴールドシップに希望を灯すと同時に、早期の賞金加算に成功したことでクラシック参戦の可能性が大きく膨らんだ。

ゴールドシップの初年度産駒の中でも、エース級の期待を寄せたくなる一頭だった。セレクトセールで里見治オーナーに5,000万円と高値で落札され、預託先も父と同じ須貝尚介厩舎。さらに、担当するのは今浪隆利厩務員という好待遇。おまけにデビュー戦の鞍上には武豊が起用されるという気合の入りようだった。

その期待に応え、ゴールドシップ産駒としての初勝利を飾ってくれたのだが..

まさか、それ以降は出口のないトンネルに迷い込んでしまうことになるとは..

「しばらく寝かせる」という須貝流の判断のもと、約半年のブランクを経て出走したきさらぎ賞は6着と凡走。もっとも、前が止まらないスローペースではこの馬の持ち味は出せず、度外視できる敗戦だった。ただ、その後すみれSに出走予定と聞きながら放牧に出てしまい、蹄を痛めていたことが後になって判明。残念ながら皐月賞出走は断念せざるを得なくなってしまった。

戦線に戻ってきたのは7月、デビューの地・函館だった。2600mの長丁場である横津岳特別を使ってきたのは菊花賞を見据えてのことだったと思うが、10着と大敗。実績もある洋芝コースで見せ場もなく終わってしまったショックはそれなりに大きなものがあった。
その後も勝ち馬から1秒以上も離される大敗が続き、陣営は去勢やダート転向など、あの手この手で再生を試みたが報われず。奇しくも昨年も出走した横津岳特別(8着)をもって、JRAの登録を抹消されることになった。

競馬に対する意欲や闘争心のようなものが全く感じられないレースばかりだった。思えば勝利を収めた新馬戦だって、武豊が道中からずっと促しながらの追走で、直線だけサッと脚を使う「ナメた勝ち方」だった。
どこかで彼の「やる気スイッチ」が入れば未来も変わったかもしれないが、ゴールドシップの血を誰よりも知る須貝&今浪チームですらそれが叶わなかったのだから、いずれにせよ難しい問題だったのかもしれない。

あの札幌2歳Sから2年も経たないうちに、サトノゴールドの中央競馬での戦いは幕を下ろすことになった。思い描いた未来とは全く違う現実が待っていたが、それでも「ゴールドシップ産駒の一番星」が見せてくれた輝きは、かつて父に魅了された人々の心に刻まれたに違いない。

<あとがき>
きさらぎ賞のパドックにて。たった一度の対面だったけど、会えてよかった。幸いオークス馬ユーバーレーベンを筆頭に活躍馬も出てきている種牡馬ゴールドシップですけど、この馬は特別な一頭として記憶に残り続けるでしょう。どうやら地方競馬で現役を続けるという情報を聞いているので、引き続き元気に頑張ってほしいですね。少しはやる気も出してねw

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