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【競馬】福永祐一に漂う「賢者の風格」/5月30日(日)の見どころ:日本ダービーほか

「あの年」のことを思い出している。

若武者たちが挑んだ世代の頂点。そこに立ちはだかったのは、ダービーの勝ち方を知る百戦錬磨の名手だった。テイエムオペラオーと和田竜二、そしてナリタトップロードと渡辺薫彦の執念を、大外から華麗に突き抜けたのがアドマイヤベガと武豊だった。

前年の日本ダービーをスペシャルウィークで制し、悲願を達成したからこそ見せられた余裕たっぷりの手綱さばき。勝負を急いだ二人をゴール前できっちりと捕らえられたのは、まさに「ダービーの勝ち方」を知っているがゆえに、ギリギリまでスパートのタイミングを待つことができた。

あれから22年もの時が流れ、再び皐月賞馬と若き相棒がダービーのタイトルを目指す。エフフォーリアと横山武史。
その強さと鞍上の手腕はもはやケチのつけようがないものだ。初めてのG1制覇がかかった皐月賞でも、ソツなく好位インを確保し進路が空くところを冷静に見極める隠れた好騎乗。このコンビには重圧など無縁のようにも感じられる。

そこにこっそりとチャンスを狙っている男がいる。シャフリヤールと福永祐一。

18年にワグネリアンとのコンビで悲願の日本ダービーのタイトルを制覇。そこで重圧から開放されたかのように、昨年はコントレイルとのコンビで無敗の二冠を達成。もし勝利の経験がないままコントレイルに騎乗していたら、あそこまで落ち着いた騎乗ができたかどうか。「悲願」の呪縛から解き放たれたことの重大さを感じさせられた。

もう「勝ちたい」とか「大きなチャンス」といった気負いはゼロだろう。たぶん普段のレースと変わらない平常心で望めているはず。いわゆる賢者モード。勝ち急ぐことなく、この馬の力を発揮できる乗り方をしてくれれば、自ずと好結果を導き出してくれるだろうという確信がある。

そう、シャフリヤールも強いのだ。

毎日杯は変なハイペースに巻き込まれながらも、持続力十分の末脚で押し切った内容が秀逸。馬場の影響もあったとはいえ、1:43.9のレコードをマークしたのは実力の証。
2000m前後の距離で結果を残したアルアインの弟ということで距離延長が不安視される声もあるようだが、これまでのレース内容を見る限りむしろ1800mでは少し忙しい印象もあるほど。少なくとも2000mは欲しいし、2400mも十分こなせる適性の持ち主だと判断した。
共同通信杯でエフフォーリアに0.4秒差つけられたのは、脚質と枠順によるもの。あのスローペースを外を回って差し切るのは不可能。勝負づけなど全く済んでいない。逆転は十分に可能と見た。



もちろんエフフォーリアも有力。まともに走れば勝利に最も近いのはこの馬。しかし、日本を代表するホースマン達もそう簡単に手にすることができなかったのがダービーのタイトルだ。横山武史も思わぬ形で取り逃す恐れも。

土曜の東京の馬場を見ていると、例年のようなCコース替わりのイン有利のコンディションになっていない。外差しでも間に合うような状態になっており、最内枠があまりアドバンテージにならなさそうな雰囲気。馬場のいいところを選んでこられる脚質ではあるが、早めに抜け出したところを後続の強襲に遭うシーンも想定できる。

◎ シャフリヤール
◯ エフフォーリア
▲ グレートマジシャン
△ ワンダフルタウン
☆ サトノレイナス
× ヴィクティファルス

一時は出走も危ぶまれたグレートマジシャンだが、結果的にここ一本に絞ったローテが正解。毎日杯では初の長距離輸送で馬体を減らしながらも差のない2着に踏ん張った。再度のワンツーもありえる。

ワンダフルタウンは皐月賞をパスして叩き台に使った青葉賞を勝利。もともと叩き良化型だけに上積みは大きいと見た。この馬は毎回レース最速の上がりを使っている一方、まだ33秒台の脚は使えていない。それだけにパンパン馬場でヨーイドンになると分が悪いのだが、近年の傾向を見る限り34秒台でも間に合う可能性はある。

サトノレイナスはもちろん頑張ってほしいが、現実的に牡馬相手に上位争いを演じるのは簡単ではない。単純な能力の比較だけでなく、初めて牡馬しかいない環境でのレース、そして1角から繰り広げられる厳しいポジション争い..外的要因によってメンタル面に悪影響が及ぶリスクが先に立ってしまう。ただ、外を回しても間に合いそうな馬場傾向になっているのは悪くない話。ルメールがどう乗るかも含めて楽しみにはしたい。

こっそり狙いたいのはヴィクティファルス。共同通信杯でシャフリヤールに先着し、スプリングSを制した実力は確かなものがある。皐月賞の凡走で評価をがっつり落としているが、巻き返しの可能性は十分。


馬券は◎の単勝と馬連◎◯が大本線。他の組み合わせはかなり妙味があるので気楽に買えますね。場合によっては印が届いていないところにも買っておくかもしれない。あとは◯からの馬連も持っておいて損はなさげ。



その他のレース。

日本ダービーの余韻に浸りながらの目黒記念は混戦ムード。これならゴールドシップ産駒ウインキートスにもチャンスはありそう。前走の日経賞は3角での不利がすべて。軽量も味方に巻き返してくれるはず。

東京10Rむらさき賞も毎年おなじみの前座レースだが、18頭の大激戦。ここは追い込みに目覚めたダイワクンナナの3連勝が見どころ。このメンバーも退けるようならいよいよ重賞でも楽しみに。

あとは東京4R未勝利戦のアヒージョケッパー。この馬が勝てばPOG2世代連続でゴールドシップ産駒が勝ち上がりの快挙達成ということになる。後ろから行った方がよさそうだが、仕掛けどころが難しいタイプだけに自信は持てないが、継続騎乗のミルコが神騎乗を見せてくれれば..

中京11R白百合Sはゴールドシップ産駒マカオンドールが人気を背負う。しっかり頼みますよ幸さん。京都新聞杯3着で賞金を積めず日本ダービー参戦を断念したが、結果的にフルゲート割れで登録だけでもしとけばよかったのに感。ここを勝って秋に備えたい。

中京に居残りの幸さんはさすがに有力馬の騎乗が多いし、坂井瑠星もまたしかり。朝から油断せずに応援していきたい。



はい、ということで皆さんもよい日本ダービーをお迎えください。

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