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【競馬コラム】短絡的思考を疑え

天皇賞はゴールドシップ産駒マカオンドールの応援馬券だけ買ってまったりと観戦。勝てばメジロアサマからメジロマックイーンまでの三代制覇から一代経て、計5世代にわたって盾の栄誉にあやかれるという偉業が成し遂げられたのだが、残念ながらまだまだ修行が足りなかった様子。まあ懲りずに来年以降もこの舞台に立つ産駒が出てきてくれることを願いたい。

ところで馬券の売れ行きを見ていると、戦前のイメージとはちょっと違う形になっていた。1番人気ディープボンド、2番人気タイトルホルダーがもっと他を離した支持を受けるかと思いきや、そこまで大きな差が生じなかった。この2頭の馬連が最終的に5.2倍。正直3倍を切るくらいの状況を想像していただけに意外だったし、単勝3番人気のアイアンバローズが7.8倍、4番人気のテーオーロイヤルが9.9倍とそこそこ売れており、どちらかといえば混戦ムードに感じられた。

せっかく「一騎打ち列伝」なる煽り記事まで書いたのにw

とにかく枠順の影響が大きかったと思われる。ディープボンド・タイトルホルダーともに8枠に入ると決まった瞬間からTwitterではざわざわした反応が見られたし、枠順決定直後の陣営のコメントもやや微妙なトーンに。この2頭にぶっこもうとしていた人もちょっとたじろいだのではないだろうか。

しかし思うんですよね、「外枠イコール不利」って何と短絡的な思考なんだろうと。

もちろん外枠がしんどいレースもたくさんある。有馬記念なんかはスタートから最初のコーナーまでの距離が短く、しかもコーナーを6度も回るコース設計。だからあれだけ枠順抽選会が盛り上がるし、ピンク帽が決まった瞬間のジョッキー(主に蛯名正義さん)の神妙な面持ちを拝むことができるのだ。

ただ、このレースはどうだろうか。

代替開催で行われる阪神3200mは一周目に外回りコースを使用するため、最初のコーナーに差し掛かるまでの距離が長い。外枠の馬も内に寄れる余地が十分にあるため、そこまで気にするもんじゃないだろうと。

にもかかわらず「8枠」ということだけで騒ぎ立てる人の多いこと。挙句の果てには過去の京都で行われた天皇賞の結果から「8枠は来ていない」って..馬場もコース設計も異なるサンプルを抽出したデータに何の説得力があるんでしょう。
だいたい、こういううわべの数字だけを取り揃えた「データ予想」とやらが大嫌いなんですよね。例えば「真ん中の枠が強い」とか、「関東の騎手が強い」とか..その調査対象にどういう馬がいたか、なぜそういう結果になるのかが説明できて初めて「データ」と呼べると思うんです。

別に予想のスタイルなんて人それぞれですし好きにしてくれたらいいんですけど、もしマカオンドールが負けるなら人気の2頭で決まってほしいなと思っていたので満足です。もちろん強い馬が強いレースを見せてくれたということもあるし、「外枠だから」で人気馬を嫌った人々の馬券が外れて少し気分がよくなるのでw

最近の馬券の売れ方を見ていると本当にみなさん上手だなと思う一方、「楽に当てようとしすぎなのでは?」と感じることもしばしば。見た目の数字にとらわれた的はずれな考察を逆手に取るチャンスもまだまだありそうだなと、改めて手応えを得られる事象でした。

実際タイトルホルダーなんて見事なロケットスタート決めて、枠順など関係なく一瞬でハナ取り切っちゃいましたもんね。そこからはレースの主導権を完全に掌握。緩急自在の逃げで後続の脚を使いながら手応えたっぷりで直線に向くと、後ろをさらに引き離す圧巻の強さ。さすが菊花賞馬にしてメンバー唯一のG1馬。有馬記念後の頓挫で状態面も少し心配されたが、それも杞憂に終わった。

そして横山和生のメンタルよ。自身はまだG1勝ちの経験がない身でこれだけの有力馬を任されながら、守りに入ることなく強気の逃げでタイトルホルダーの力をフルに発揮させた。この一族の肝の据わり方はすごい。大舞台でも怯むことなく乗れる鞍上には、今後も有力馬のオファーが舞い込むのでは。そうあってほしい。

悲願のG1制覇へ大チャンスだったディープボンドだが、完敗の2着。こちらも特に外枠が仇になるような戦況にはならなかったし、シンプルに相手が強すぎた。早いタイミングから手応えが悪くなりながらゴール前までタレずに、最後テーオーロイヤルを競り落としたあたりがえらい。いかにも和田竜二のお手馬って感じがまたね。

それにしても阪神3200mの過酷さよ。スタミナ自慢のステイヤーたちがみんなバテバテでゴールにたどり着く恐ろしい設計。こういう負荷のかかるコースの方が馬の能力がストレートに発揮されやすくて個人的には好きです。京都みたいな大逃げが決まってドン引きすることもなさそうだしw しかし来春の天皇賞はもう京都に戻るんですってね? てっきり来年まで阪神だと勘違いしてました。

そうか、来年の春には淀に行けるんか..よし、頑張って生きよう。

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