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【競馬コラム】「見られる意識」がスターの証、今村聖奈の重賞初勝利

一般的に、若手の女性ジョッキーが取材に対応するとき、「ファッションやおしゃれには気を使っていますか?」と質問されると「今は競馬に集中しているので..」と答えるのが模範解答だろうと思う。謙虚な姿勢の優等生。嫌われない人格を形成することは、騎手として成功するためにも必要な要素だ。

ところが今村聖奈は違う。ちょうど今週、CBC賞で重賞初騎乗の機会が訪れるにあたり各メディアでも改めてクローズアップされたのだが、そこで残したコメントに非凡さがにじみ出ていた。

「常に見られている立場なので」という意識。これよ。これがあるから自分がどう振る舞うべきかを省みながら実践できる。たぶん騎乗技術よりも身につけるのが難しい感覚なんじゃないだろうか。そして数少ない持ち主だけが「スター」になれる。

重賞初騎乗初勝利も、そのスター性からすれば必然の結果だっただろうか。
テイエムスパーダとのコンビ結成も話題性に満ちている。本来であれば所属厩舎の伏兵シホノレジーナで参戦予定だったのが、テイエムスパーダのハンデが想定以上に軽い48kgに決定。本来、手綱を取るはずだった国分恭介が騎乗できなくなり、急遽バトンが回ってきた。
武豊が初めてG1を勝った89年菊花賞も、除外対象だったスーパークリークが回避馬続出によって出走可能になるとか、主人公属性の持ち主にはありがちなシナリオである。

こうして単勝2番人気の有力馬を任されることになった今村聖奈。しかし迷いはなくハナを奪うと、前半600mが31.8秒というとんでもないハイペースを刻みながら最後の直線へ。高速馬場のアシストもあって脚は鈍らずむしろ突き離す強さ。鮮やかな逃げ切りで3馬身半差の圧勝を飾ったのであった。

インタビューも無難にして冷静。ちょっと昔の田村亮子さんを思い出す話しぶりである。テレビとは別枠の場内インタビューではきちんと国分恭介に関しても触れていたし、「伝えるべきことを伝える」咄嗟の判断力にも長けていることがよくわかった。

勢いもそのままに小倉最終レースも人気のキングスソードで制し、3月のデビューから早くも19勝目をマーク。順調すぎるキャリアの幕開けとなった。もちろん現時点では減量の恩恵も大きく、手放しで「将来はリーディング争いを」とまでの期待をかけるのはやや荷が重いと思うが、少なくとも他のジョッキーにはない華が彼女にはある。芽が出てくるとアンチも湧いて出てくるのが世の常だが、どうかいつでも今村聖奈らしくジョッキー生活を突き進んでほしい。

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