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【競馬コラム】「マリアライト姉さん」への嫉妬

現役時代からマリアライトをこよなく愛し続けている女性がいる。ガンバ大阪サポーター仲間でもあり、あおくろ競馬部の一員にしてPOGメンバーの一人でもある。

この「マリアライト姉さん」、競馬のことは好きなのだが、いかんせんいつまで経っても点が線につながらない。「あの時のあのレース、みんなで見に行ったやん!?」と説明しても「そやったっけ..?」と反応が薄いのがデフォ。それがもどかしくて仕方がない。

だが、ことマリアライト関連の話については点が線となり面になるのだ。

「伝説の緑風S」について熱く語られ(いや、さすがにそれは知らん..)とこちらが困惑させられたり、同じキャサリーンパーの一族に関しては近況をしっかりと把握できていたりと、俄然ウマ偏差値が上昇するのだ。
それだけの熱意の持ち主ゆえ、エリザベス女王杯で初G1制覇を成し遂げた時の喜び、そして翌年の宝塚記念でドゥラメンテとキタサンブラックを破った快感たるや相当なものがあっただろう。宝塚記念では強敵相手にも勝てると信じてお買い上げになった馬券がおいしい夕食に変身したという話も聞いている。


その秋、連覇を目指したエリザベス女王杯は1番人気に支持されるも7着に終わり、クイーンズリング→シングウィズジョイという難解な決着で誰も馬券を取れなかったあおくろ競馬部一同、京都競馬場のスタンドで静まり返ったのも覚えている。

艶やかな容姿と、牝馬ながらタフな条件で力を発揮するド根性に魅了された現役生活も終わり、「マリアライト姉さん」も第2フェーズへ突入。その血を受け継ぐ二世の活躍を願うターンがやってきた。
ただ、現役時代にG1を勝つほどまでにバリバリ活躍した名牝の仔が同じように優秀な能力を持っているとは限らないのが競馬の世界。どちらかといえば期待はずれに終わってしまうケースが多いのが現実だ。それゆえマリアライトの仔とてそう簡単に走るとは思えんよな..と自称ベテラン競馬ファンのハシスポさんは悲観的な見解を示すのであった。

そして2020年春。「あおくろPOG2020-21」オンラインドラフト会議の1位入札の際に、彼女が記入したメモには当然のようにその名が記されていた。

「マリアライト」

これを見たハシスポさんは「さすが、愛やね」とその想いを称えつつ、内心では(いやー、G1勝ち馬の初仔とか地雷確定でしょ..ましてマリアライトみたいな晩成タイプじゃいくら走っても3歳春までに本格化するはずが..)と思っていたのである。

ところが、オーソクレースと命名された2歳馬は夏の間に北海道に入厩するという想定外の事態が発生。調教も順調にこなし、トントン拍子でデビュー予定も決まってくる。この時点でこっちが思ってたのとはだいぶ違う。
そして鮮烈なデビュー勝ち。札幌ではめったにお目にかかれない、上がり3F33.9秒の脚を使って、その非凡な才能を見せつけた。
さらに快進撃は続き、2戦目のアイビーSも差し切り勝ち。直線の追い比べでは外からラーゴムに被されながらも、狭い馬群の間を割って伸びてきた。あのメンタルの強さはまさに母譲り。「マリアライト姉さん」ならずとも、惚れぼれさせられる勝ちっぷりだった。

大好きな馬が産んだ仔がデビュー2連勝で一躍クラシック候補に..競馬ファンとしてこんなに羨ましいことがあるだろうか。我が心の名馬スティルインラブは仔を一頭しか残せず、しかもJRAでは1勝も挙げられず引退したんですけどね..こんなんズルいわ。

その後はご存知の通り、ホープフルSでも2着に入り翌春クラシック参戦を決定的にしながらも、皐月賞を目指しての調教中に骨折が判明。休養を余儀なくされることとなったが、休み明けのセントライト記念で3着。レース前の陣営のコメントはやや不安げだったが、本調子にない中であれだけ走れたことで改めてこの馬はタダモノではないと感じさせた。

そして菊花賞へ。

ダービーウィナーのシャフリヤールも、皐月賞馬エフフォーリアも不在。春に惜敗が続いたステラヴェローチェが主役を務めることになりそうだが、オーソクレースだって能力は全く引けを取らないと思っている。何なら母から授かった長所が色濃けば濃いほど、阪神3000mのタフな長丁場はこの馬が最も力を発揮できる舞台だという確信すらある。

昨年の10月24日、アイビーの若葉のようにその才能を艷やかに輝かせた少年が、ちょうどぴったり1年の時を経て今度は菊の大輪を咲かせる時が来た。余談ながら「マリアライト姉さん」の誕生日は確か10月23日だったはず。2年続けて愛する「息子」から勝利のプレゼントが届いたりしたら、ますます嫉妬するしかないな。

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