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【競馬】壁を乗り越え立ちはだかった福永祐一が、横山武史をまた強くさせる/日本ダービー振り返り

決してエフフォーリアの力が及ばなかったわけではない。横山武史の騎乗にもロスなど一切なかった。逆にシャフリヤールと福永祐一が、幸運に恵まれたわけでもない。

わずか10cmの差で分かれた勝敗。その決め手を一言で現すことなどできない。本当に、どちらが勝ってもおかしくなかった。だからこそ、今もなお使い古された格言が威厳を保ち続けられているのであろう。

「ダービーは最も運のいい馬が勝つ」と。

■ レース前の評価

皐月賞を3馬身差で勝ったエフフォーリアが断然に人気に支持され、最終的に単勝オッズは1.7倍。牝馬ながら参戦を決めたサトノレイナスも高い評価を集め、単勝2番人気の5.1倍。
ここから離れた3番手集団は横並び。毎日杯2着後ここ一本に照準を絞ったグレートマジシャン、その毎日杯をレコードで制したシャフリヤール、年明け初戦で青葉賞を制したワンダフルタウンと続いた。
この後が皐月賞で差し届かなかったヨーホーレイクとディープモンスター、そして同2着のタイトルホルダーと3着のステラヴェローチェ。タイトルホルダー以下は単勝30倍を越える、完全な伏兵扱いとなった。
力の差は開いているように見える一方で、3着までの馬券を買うなら何が紛れ込んでもおかしくないと感じさせるメンバー構成だったように思う。

■ 馬場とラップタイム・隊列

例年通りCコースに替わるダービーウィーク。当然ながら土曜から馬場バイアスを確認するのが重要となるが、目立ったのは速い時計と差し馬優勢の傾向。いつもならインベタ有利がデフォなのだが、今年はちょっと様子が異なって見えた。せっかく1番枠をゲットしたエフフォーリアにとっては、アドバンテージを活かしづらいコンディションとなった。

<ラップタイム>
12.2-10.6-12.2-13.0-12.3-12.4-12.8-11.7-11.4-11.5-10.8-11.6=142.5 (av. 11.9)

大外枠から宣言通りバスラットレオンがハナ。藤岡佑介はかつてクリンチャーで先行に失敗した苦い経験があるだけに、まずは自分の形に持ち込めたのがよかった。
同じく外からタイトルホルダーが番手を確保し、エフフォーリアもコーナーワークでスムーズにイン3番手。ヴィクティファルスやバジオウ、グラティアスら内枠勢も好位につけ、その後ろにシャフリヤール。
サトノレイナスはもう少しじっくり構えるかと思ったが中団で1角に入り、バックストレッチに出るまでにポジションを押し上げる形。
ワンダフルタウンやヨーホーレイクがその後ろ、グレートマジシャンやステラヴェローチェもじっくりと構え、さらにディープモンスターがその後ろ。そして離れた最後方にレッドジェネシス..

レースが大きく動いたのが3角手前から。後方に控えていたディープモンスターが動き、それに呼応する形でアドマイヤハダルも進出。外の3番手につけていたサトノレイナスが被されるのを嫌って先頭に並びかけ、残り1000m地点から11秒台にペースアップすることに。その影響でエフフォーリアはポジションを下げるが、横山武史は慌てない。

■ 直線の攻防

各馬とも荒れた内を避けながらのコース取り。いち早く先頭に躍り出たのは牝馬サトノレイナス。押し切りを狙うが内から進路を確保したエフフォーリアが満を持してスパートを開始し前に並びかける。
外から脚色がいいのはグレートマジシャン。進路を内に切り替えながら迫るのはシャフリヤール。ワンテンポ置いて大外から追い込んでくるのはステラヴェローチェ。
残り100mの時点で争いはエフフォーリアとシャフリヤールの2頭に絞られ、粘り込みを図るエフフォーリアと懸命に脚を伸ばすシャフリヤールの馬体が全く並んだところでゴールイン。ストップモーションでシャフリヤールが優勢に映ったが、さすがに両馬の鞍上とも勝敗の確信は得られずウイニングランはなし。まっすぐに検量室へと引き上げたが、その間に写真判定が解けシャフリヤールに凱歌が上がった。

■ ダービーウィナーの背中を知る福永祐一が認めた逸材、シャフリヤールが大舞台で才能を開花!

ワグネリアンとコントレイル、2頭のダービーウィナーと出会った福永祐一がデビュー時から高く評価していた◎シャフリヤール。毎日杯では先約の関係もあって乗り替わりとなったが、再度コンビを組んだ大舞台でその才能を思う存分に開花させた。
道中は馬群の狭いところで揉まれながらも我慢を重ね、出入りの激しい展開になっても冷静に動くタイミングを待っていた。直線では外に持ち出そうと試みるも、すぐさま内に切り替えエンジン点火。先に抜け出した皐月賞馬を交わすのは簡単ではなかったが、ゴール前でわずかに先着。共同通信杯では完敗を喫した相手に対し、最高の形で雪辱を果たすことができた。

毎日杯でのスーパーレコードに続き、2:22.5のダービーレコードを更新しての勝利。脚質は異なるが、マイルから2000mで活躍したアルアインの全弟らしくスピードに長けたタイプなのは間違いなさそうだ。となると気になるのは秋。何となく菊花賞は合わない予感がするのだが、陣営はどう判断するだろう。

福永祐一は3度目の日本ダービー制覇。これは通算5勝の武豊に続き、歴代単独2位に浮上することとなった。あれだけダービーの呪縛に苦しんだ名手が、完全に勝ち方を極めたかのよう。一度勝ったことで「どんな馬がダービーを勝てるのか」の基準を知り、それが騎乗馬の選定にもつながっているのは間違いない。「ダービーの勝ち方」は新馬戦から始まっているのだ。
縁の深い藤原英昭厩舎での優勝はまた格別の喜びがあるだろう。もう自分のためだけでなく、誰かに栄光をプレゼントする立場になったその姿には、風格と貫禄が漂いまくっている。

■ 無敗の二冠ならずも力は示したエフフォーリア、横山武史にとってはいい経験にしかならない

繰り返しになるが、◯エフフォーリアのレース内容には何の問題もなかった。むしろ中団までポジションを下げながらも内が空くのをわかっていたかのように冷静に構えていた人馬は称賛ものだとさえ思う。それでもわずかに及ばなかったのは、本当に運としか言いようがない。

横山武史も大チャンスを逃し少なからず気落ちもしているだろうが、言葉をかけられるとすれば「これがダービーだ」という理不尽な内容になってしまう。日本を代表する幾多のホースマンでさえ、簡単には手にすることのできなかった栄光。そう簡単に勝てるものではないからこそ、みな渇望するのではないだろうか。この敗戦を機に、きっと「ダービーを勝ちたい」という気持も強くなったのでは。そしてその想いは必ず報われる。きょう敗れた相手こそが、誰よりも力強くその足跡を辿ってきたわけだから。

日本ダービーで敗れたことが相棒の成長につながる..皐月賞を勝ったとはいえ、やっぱりこの馬はメジロライアンだったわけだ。

■ 果敢な挑戦で確かに残した爪痕、サトノレイナスは大健闘の5着

☆サトノレイナスは確かな爪痕を残した。決して思い通りの競馬にはならなかったが、それでもゴール前まで食い下がり5着と善戦。早めに先頭に立つ厳しい流れになっただけに、もしいつも通りの末脚勝負に徹していたら..と少し悔いも残るが、それもここまで頑張れたから。本当にナイスファイトでした。
余談ながら、里見治オーナーはともかく国枝栄調教師は「まあ来年コマンドラインで勝つからええわ」と切り替えてそうw

■ その他ひとことメモ

・ 3着 ステラヴェローチェ
外差し馬場とはいえ超高速馬場でも3着に追い込んでくるバゴ産駒。確か凱旋門賞も登録してましたよね..クロノジェネシスともどもGOでしょう。期待。

・ 4着 ▲グレートマジシャン
上位2頭とは完成度の差。毎日杯の時にも書いた気がするが、この馬のフィエールマン感は異常。菊花賞はこの馬かな、きっとルメールが乗ってるでしょうw

・ 10着 △ワンダフルタウン
「時計が速すぎた」と和田竜二も振り返ったように、やはりこの高速決着は適性外。上がり33秒台の壁は厚かった。しかしこの馬も菊花賞はチャンスありそう。神戸新聞杯からレースぶりに注目しておきたい。

・ 11着 レッドジェネシス
ここでポツンをキメる横山典弘、さすがにちょっとどうかと思いますね。ゲート出て数秒でもう勝負圏外。馬券を買ってた人は納得できるんでしょうかね?

・ 14着 ×ヴィクティファルス

スムーズに好位を取れたけど、それが活きる流れにならず。この馬は頭打ちかなあ..

・ 16着 ディープモンスター
奇襲などめったにやらない武豊の向こう正面マクリ。「何とかしてやろう」という意地のようなものが感じられて軽く胸を打つものがあった。

■ 馬券は大本線的中、クラシックに直結するレースをしっかりと見てきたのが報われた結果に

馬券は最高の形で当てられました。前日の記事に書いていた通り、シャフリヤールの単勝とエフフォーリアとの馬連が大本線に。

レースが終わってから「福永祐一の経験が活きた」という評論はあちこちで見かけたけど、戦前からここまでドンピシャの予想できてた人います? 怖いくらい会心の予想。


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ポイントは2つ。まずは「共同通信杯で勝負付けは済んだ」という間違った判断をしなかったこと。あれは枠順とペースがシャフリヤールに厳しかっただけ。再戦すれば逆転も十分あるだろうと。
もうひとつはサトノレイナスの評価。未知の魅力が買われたとはいえ、あれだけの強さを見せた皐月賞馬をG1未勝利の牝馬が負かすのはさすがに無理があった。そこを冷静に見極められたおかげで、おいしい馬券にありつくことができた。

これ、皐月賞が終わった直後のツイートなんですけど、この時点では5倍6倍くらいしかつかんやろなあと思ってたんですよ。それが馬連1,010円でしたっけ? ツイてる時はこんなもんですね。

■ 回収:26,850円/投資:3,500円
→ 2021年間回収率:326.3%

■ POGは馬券に活きることがわかった2020-21クラシック

2020-21クラシックをハッピーエンドで迎えられたのも、POG関連で有力馬のレースを新馬戦からしっかり見てこられたからだと思ってます。特にエフフォーリアとシャフリヤールは早くから高く評価していて、それぞれ共同通信杯・毎日杯でも馬券でお世話になった。
どんなレースが得意で、どんな課題があるか..それを見極めることで、馬券的に妙味があるうちに買えるアドバンテージは大きい。これは来季もきっと活きてくるはず。

競馬は同じことの繰り返しで、いつも新しいことばかりが起こる。さあ、また新しいシーズンの始まりです。


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