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【競馬コラム】エフフォーリアの悔しさは、エフフォーリアでしか晴らせない

ゴーグル越しの目元の様子を確かめることはできなかったが、わずかな表情の変化や仕草を見ていると、そこには光るものがあることは容易に想像できた。

横山武史、エフフォーリアとのコンビで天皇賞制覇。

先週の菊花賞に続くG1連勝となったが(さらっと書いているがとんでもない活躍ぶりである)、「してやったり」の大逃げで感情を爆発させたのとは対照的に、どこか喜びをかみしめるような姿が印象的だった。

「ダービーのこともあったので..」。

圧倒的1番人気で無敗の二冠を目指した日本ダービーで、シャフリヤールの強襲に遭った屈辱は、たとえ菊花賞を勝ったところで拭えるものではなかった。エフフォーリアで味わった悔しさは、エフフォーリアでしか晴らせない。だから喜びもまた格別なものとなった。

勝利をたぐり寄せた騎乗もまた絶妙である。

これまた菊花賞との対比になるが、大逃げで後続馬群に何もさせなかった「大胆さ」とは打って変わって、今回はスローペースの中で折り合いとスパートのタイミングに細心の注意を払う「繊細さ」が問われる戦況に。それでもデビューからコンビを組み続ける人馬の呼吸は一糸乱れず、前にグランアレグリア、後ろにコントレイルがいる難しい隊列でも進出のタイミングを狂わせることなくスパート。残り200mを過ぎたところで先頭に躍り出ると、後続の追撃も難なく退け1馬身差の完勝。福永祐一やルメールとの駆け引きも制しての勝利は、またジョッキーとしてステップアップを果たす経験値となったことだろう。

個人的には昨年の百日草特別でこの馬の才能を見出し、共同通信杯以降は何らかの形で馬券を買い続けてきた。しかし正直ここまで強いとまでは想像していなかった..思い入れのある一頭だけにうれしい反面、やや戸惑いも。

そうなんですよね、皐月賞の圧勝ぶりから持久力勝負に強いタイプというイメージがありますけど、元々はサッと前に付けられて速い上がりでまとめられる機動力&瞬発力勝負が得意なんですよね。そういう意味では今回のスローペースはドンピシャの条件。
3歳馬の天皇賞勝利は02年のシンボリクリスエス以来。母数も少ないとはいえ、菊花賞をパスするケースが増えてきた近年の流れを考えるとやや意外な感もあるが、それだけ重い扉をこじ開けたと言っていいだろう。今季はあと一戦、有馬記念を予定しているようだが、今から◎を打つ心の準備はしておこうと思う。それだけの馬だ。

コントレイルにとっては年下にねじ伏せられる屈辱的な敗戦になってしまった。昨年のジャパンC・大阪杯に続く3連敗だが、これまではまだ情状酌量の余地もあったのに比べるとさすがに悲観的にならざるを得ない。脚を余したのならまだしも、坂を上がってから勝ち馬に並びかけようというところで再び突き離される完敗。ぐぬぬ..
福永祐一はゲートでのわずかなロスを悔やんでいたようだが、それがなくても..と思ってしまう内容。次はラストランとなるジャパンCだが、やられっぱなしでは終われない。エフフォーリアとの再戦は叶わないと思うが、どうにか有終の美を。

逆にグランアレグリアとしては清々しい敗戦と言えるのでは。2000mへのチャレンジは大阪杯に続いて実を結ばなかったが、実績のあるカテゴリを飛び出しての参戦は確実にファンの心を熱くしてくれた。
この馬はどうするんでしょうね今後。遅くとも現役続行のリミットは来年の春まで。それまでの適鞍といえば香港かドバイかという話になるが、そこまで無理させるだろうか。もう引退でも全然いいと思うんだけど。

勝負事ですから明暗が分かれるのは避けられぬこと。しかし早くからこの3頭が激突する天皇賞は楽しみだったし、それぞれがいいコンディションで出てきてくれたおかげで色濃く記憶に残る一戦となりました。パドックに出てきた時点で3頭とも惚れぼれするような姿を見せてくれて、レース内容も見どころたっぷり。ありがとうございました。

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