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【競馬コラム】信頼されること、信頼に応えること

今季ここまで57勝を挙げ、すでにキャリアハイの勝ち星をマークしている坂井瑠星。ちょくちょく海外遠征を挟みながらの数字だけに価値も余計に高く、ジョッキーとして充実期に突入しつつある。
しかし、これまでコンスタントに勝っていた重賞のタイトルにはなかなか手が届かず(まあゴドルフィンマイル勝ってるんですけど)。秋のG1でチャンスをつかむためにも、そろそろ存在感をアピールする勝利がほしいところで巡ってきたのが、紫苑Sのスタニングローズだった。
2月のこぶし賞で手綱を取って以来のコンビ。のちにフラワーCを勝ちオークスでも2着と善戦した頼れる相棒である。前走で短期免許のダミアン・レーンが騎乗していたこともあって、空白となった鞍上に再び戻ってこられたのは幸運でしかない。ファンも単勝1番人気に支持。番手追走からサウンドビバーチェの粘りに手こずったが、ゴール前でどうにか前に出た。オークス2着馬の底力。

これでJRAの重賞は通算9勝目。単勝1番人気馬での勝利は初めてである。これまでは見事なまでに人気薄での勝ちばかりで、最小の単勝オッズでも20年カペラS(ジャスティン)の7.8倍。ドレッドノータスの京都大賞典(90.7倍)を筆頭に、魅力的な配当がズラリと並ぶ。正直チャンスの少ない騎乗馬で結果を残してきたことは、胸を張っていいと思う。

しかし、彼が目指すべきはそこじゃない。常にいい馬を任され、その馬に相応しい結果を残す。そこで勝ち取った信頼が、次の依頼につながるというスパイラルを巻き起こすことが求められる立場。そういう意味では非常に意義のある勝利となった。

ありがたいことに秋華賞でもコンビ続投が明言されたことで、JRAのG1初制覇の大きなチャンスがやってきた。もちろんスタニングローズで勝てればベストだが、「人気馬を勝たせる仕事」をこれからも続けていくことができれば、そのうち強い新馬も任されることになるはず。これからもその道を見守り続けたい。

もう一頭の実績上位馬サークルオブライフはマイナス22キロでの出走。中間の陣営からも「馬体が寂しい」とコメントがあったが、フタを開けてみるとデビューから最少馬体重。これはもう回ってくるだけでは..と後方を追走する姿を見ていたが、向こう正面からポジションを押し上げ4着と格好をつけた。これには驚き。オークスでは崩れてしまったが、さすがは世代屈指の実力馬である。
ただ、この馬体でそれなりに走ってしまったことが尾を引かなければいいのだが。今度は長距離輸送を挟んでの一戦だけに不安はまだ続く。

最後にカヨウネンカの追い込みにも触れておきたい。4角をロスなく回りつつも、直線では進路確保に時間がかかり、まともに追えたのは残り200mを過ぎてから。それでも勝ち馬に迫ろうという脚色で、十分に見せ場を作った。先週はゴールドシップ産駒の2歳馬が同じような負け方ばかりで歯がゆい思いをしたが、こうして上のクラスで通用するメドを立ててくれる力走はうれしくなる。

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