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『話すことを話す きちんと声を上げるために』

キム・ハナさんの声が好きです。

韓国語の勉強をはじめたころ、とりあえずなにもわからなくていいから勉強中にBGM的に流しておけきたいな、と思ってポッドキャストやラジオ番組をあれこれ聞いて探しまわっていたある日のこと。韓国MBCのラジオ番組 “별이 빛나는 밤에“ に出会いました。

適度に明るい雰囲気で、でも気が散るほど賑やかすぎず、私の韓国語学習タイムの守り番になってくれた “별밤” 。週に一度の「お悩み相談」的なコーナーにレギュラー出演していたのがキム・ハナさんでした。

彼女の声はいつでも落ち着いていてあたたかく、話している言葉はわからなくてもその人の感情が伝わってくる、そんな声だと思います。声を聞いているだけで心地よく、ふくよかな気分になります。韓国語が全然わからなくても、“별밤” を聞き続けていくうちに彼女の話し方は私の憧れになり、「こんなふうに話す人になりたい!」と思うようになったんです。

今回『話すことを話す』を読んで、ますます彼女のファンになりました。
彼女のあの声や話し方は、持って生まれたものであると同時に、良い意味で「経験や学習に裏付けられた表現方法」なんだなあと感心する一方で、意識の持ち方ひとつで「その人が生きてきた年輪、人柄がそのまま色濃くあらわれる」ツールなんだということ。だからこそ考えて表現するべきだということや、相手への敬意や誠意を欠くことなく「対話」することの大切さなどを学べたと思います。

〈序文〉に書いてあったこの一文に、最近モヤモヤしていることへの答えが見えて泣きました。

 ところが、話すことには歩くことと違って非常に多彩な側面がある。話すことはコミュニケーションであり、共感であり、暴力であり、音楽であり、教えであり、遊びであり、挑発であり、解消であり、響きであり、礼儀であるという意味で。にもかかわらず、私たちは話すことと歩くことを同じように考えている。誰もがすることであり、それぞれの歩き方があるようにそれぞれの話し方があるにすぎないと思うだけで、私たちは話すという行為についてあまり深くは考えない。
p.4

ハッとすること、発見、気付きが盛りだくさんで、普段は本に線引いたりふせん貼ったりするタチじゃないのですが、この本は線だらけのふせんフサフサに。
とても愛おしくていつもそばに置いておきたい一冊になりました。

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