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昔々関西で「ハケ」に出会っていた。

関西では、よほど地理好きでもない限り「はけ」について知っている人はいないかもしれません。

私は大阪と京都の間の街で生まれ育っています。図書室で読んだレトロな小説・大岡昇平の「武蔵野夫人」の中で、私ははけという言葉を初めて知りました。

『土地の人はなぜそこが「はけ」と呼ばれるかを知らない。』で始まり、かなり詳しい地理的な説明が続きます。

舞台となる場所の地形描写は、巻頭のいいかげんな略図以外の挿絵が無いので頭の中で想像するしかありません。

ストーリーはあまり関心がなかったのか覚えていませんでした。

それより、彼らの歩くはけの街の在り方、特に水の源を探す散歩の様子に興味津々…
水が這い出るよう湧いている清冽さを、自分なりに思い浮かべてはうっとりしていました。

主人公の家は武蔵野台地の縁の崖の中にあり、北側は斜面に古代の原生林、高く聳える欅があり、南側はガクッと下がって開けていて、庭から野川まで畑や広大な水田が見渡せ、その先は楯状の台地になり、下ってまた崖。

それから、逃避行で行く国分寺の北西の屏風のような丘陵と山上の貯水池から見下ろす武蔵野一望…というのもなかなか想像しにくいものでした。
行きは西武線の電車で、帰りは歩き??距離感と広がる景色の描写が合いません。

関西でそういう地形を見慣れないから。

泉が街の道端から湧き出ている!
まるで絵本の中のような、空想の世界がほんとうに、しかも東京に実在するというのです。
いつか実際に眺めて歩いてみたいと思いました。

ついでに大好きなユーミンの曲に出てくる"上水沿いの小径"(情景は国分寺の武蔵野美大そばの玉川上水でスケッチをしている)の歌とセットで、
私の記憶の中に国分寺崖線の景色はすでに刻まれていました。

(写真は後に、想像が現実になった時に撮影したもの。)

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