見出し画像

実は梅雨時が一番美しい?殿ヶ谷戸庭園が再開しました。

国分寺駅前にある殿ヶ谷戸庭園は、文化財の都立9庭園の一つで、国指定名勝に指定されている美しい庭園です。
長らく休園されていましたが、6月1日から時短ですが開園しています。
今はまだ午前10時から15時半までに入園、16時閉園ですのでお気をつけください。

中門を潜ると、庭園で最も本数が多い木斛(モッコク)が両脇に並んで出迎えてくれます。
まるで券売所まで誘導してくれるみたいです。
券売所は、写真真ん中明るい所の左手にあり、実は昭和初期の岩崎家の別荘をそのまま利用した建物です。
入園料はなんと150円。
私は年パスを持っているのですが、僅か600円で一年じゅう静寂に浸れます。

わざと鬱蒼とさせているのは、舞台の幕のイメージ。ワクワクさせる効果ですね。

トンネルを潜ると二股の石畳が。

幕が開くなりもう、ため息です!大芝生と呼ばれるエリアに、赤松が100本、もみじが200本。美しく刈られた芝が雨上がりでしっとり、翡翠のようです。

こんなに広い?と思うのは、国分寺崖線(ハケ)をそのまま利用した庭園の作り方が絶妙に遠近感を出しているからでしょう。ここはJRの駅と同じ標高のハケ上です。

二股の左手に進むと先程の券売所の建物。横のサンルーム側から中に入れます。
ここは三菱創始者のお孫さんの岩崎彦弥太さんの別荘地。岩崎家の別荘の中でも「カントリーハウス」だったのでナチュラルですが、椅子に座って庭園を眺めれば…財閥令嬢気分が味わえますね。
庭園や岩崎家のことが詳しくわかる展示も。

サンルームから眺めると目の前にある、巨木の榎です。庭園の中で最も樹齢が古いもの。大正時代の写真にも写っていました。

芝の奥にタギョウショウという盆栽のような小さな松が見えます。これ、私はイリュージョン効果ではないかと思っています。大きな松が遠くにあるように見えるから、より広く感じませんか?

進んでいくと道の先がガクッと下がって崖になっています。これが国分寺崖線です。10メートルの落差の階段を降りていきましょう。

途中の階段の脇は、ドウダンツツジやボケなどの花木園です。

崖線を降りたらそこは静寂の竹林です。ハケ上とは正反対のしっとりした空間。崖と竹林の間の道を進みましょう。

茶の木です。白い椿のような花が咲きます。剪定の時に出た葉で茶葉を作ってみて、実際に飲んだこともあると聞きましたよ。

崖の土留に使われているのは、なんと富士山の溶岩です。岩崎さんは富士山が大好き。先程の大芝生の二股の右を進んだ奥の藤棚からは昔は富士山が望めたそうです。

崖の斜面に広がるのは、富貴草や熊笹。竹の間のもみじも青々と爽やかですね。

竹の子の名残の皮が残っている若竹。

これが富貴草。草に見えるけど拓殖科の低木です。

このあたりの崖は熊笹に覆われています。

竹林の次は、次郎弁天池です。ハケの湧水はこの池から地下を潜って野川へ流れて行きます。

真ん中に弁天様が昔祀られていたという島があります。

鯉が悠然と泳いでいて、長野まゆみさんの幽玄な小説「魚たちの離宮」の舞台にも。

池を巡って、今度は階段を登って崖の上へ回遊します。上に四阿が見えてきます。

紅葉亭という建物です。これも昭和初期からの素晴らしい建築物です。質素に見えて、贅沢な材とさりげなく凝った意匠、そして何よりとても落ち着く空間ですね。
名前の通り、秋冬の始めの紅葉シーズンは息を飲む光景に🍁

奥の縁側に座るとこんな景色。
前のほうのベンチに座ると崖下の池まで一望できます。
お茶や茶菓子、お弁当を持ち込んでも良いとのこと。(ゴミ箱はありませんのでお持ち帰りください)

私はいつもコーヒーをポットに持ってきて、ここで本を読んだりゆっくり過ごしています。
野鳥の囀りと、木の葉擦れの音と、時折鹿威しの音だけ。

西側の階段を下ってみましょう。
コロナの休園中も木は伸びますから、庭師の皆さんは毎日剪定や手入れをなさっていたとのことです。

降りきった右手に、ハケの湧水源があります。ここから湧き出しているので、年中15度から18度の水温。夏はひんやり冷たくて、冬は温かいんです!ぜひ手を入れてみてください。
(湧水には、不思議なパワーもありそうです)

一度来た道を戻って一番南端の階段を上るとホタルブクロが満開でした。
私は蕾の時が一番好きです。
ぷっくりと蕾が風船のようになってからぽっと開きます。

藤棚を過ぎて、萩のトンネルです。まだ低いですが、開花する夏の終わりには上まで伸びます。

今から楽しみ!丸葉萩と山萩が見られます。

これが庭木の帝王、モッコクの葉です。常緑で暗幕のように周りの喧騒を遮断して別世界を作り出してくれます。
艶々で太陽の光を反射するレフ板のような効果で庭が明るくなりますし。
そして、樹形が美しく、成長しても下の方がスカスカにならないからですね。
5年に一度、紅葉します。

先程の紅葉亭について補足です。
お勧めは四阿を独り占めできる小雨の日。ほんとうに静かで贅沢な時間を過ごせます。

それから、四阿の奥がお茶室になっていて、一般の方にも予約制で貸室しています。おもしろい使い方として、梅の花などでお弁当を仕入れて同窓会をする。座禅会やヨガをするなど。
半日4000円。お茶の道具や湯沸ポット、机などは無料で貸してくれますよ。

雨上がりの回遊式庭園の散策、いかがでしたか?
長くなりすみせん。
読んでくださって、殿ヶ谷戸庭園にいってみようかな?と思ってくださったらとても嬉しいです。

駅前2分の賑やかな喧騒の中に、高い樹々に囲まれてひっそりとこんな庭園があるなんて、奇跡ですよね。

実は駅前開発でデパートになるかもしれなかったのを、近隣の方が反対運動をして阻止し都に買い上げさせてくださったそうです。その熱意のおかけで残されているわけです。護り整えてくださる公園協会やボランティアの皆様にも感謝しています。

季節によって山野草や木々の様子がどんどん変わりますので、また書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?