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Disco Elysium -人権と思想、主義と時代のうねりの中で-

https://store.steampowered.com/app/632470/Disco_Elysium__The_Final_Cut/

後半にストーリーばれあり、前半は買おうか悩んでいる人向けに記載しました。

大口の感想

まあこんな場末のプレイログを見ている時点でsteamなどのレビューを見ているかとは思うんですが、このゲームは所謂ドラクエやテイルズなどの「JRPG」みたいなものではないです
個人的にはめちゃくちゃ世界観を作ってあることも踏まえて「TPPG」だなという印象です。なんならゲーム一本の中にルルブまで入ってるタイプのやつ
しかもファンタジーとかじゃなくて限りなく「社会的」「現実的」「思想」的な表現や言い回しなので、不可解な謎も怪しい人物も、そういうのもなんもない。現実のままならないものが凝縮された時代の架空の世界の話。そんな世界です。
ルルブ読むの好きな人で、漢字が並んでても平気な人なら全て読めるかも
でもまあ本筋の事件に関係ないモブも思想や政治の話をするのでさらっと「ああこの人は労働者組合側のリベラル思想なんだな…」ってかんじで読み流すのがいいと思います。

面白いところ
>相棒みたいな関係性の刑事がいる。
汚い、臭い、酒癖が悪い、清潔感0でとにかく地の底まで落ちたヤバい刑事が主人公。一緒に事件を捜査するのは生真面目で清潔感があり常識人の相棒。記憶も常識も服も身分証も無くした主人公をけなげに支えてくれる。もうほとんど妻みたいな相棒がいる。一緒に操作していくうちにかわいいやん…となっていくのがいいところ

>テキスト量の暴力
おい!そこのルルブを全部読んじゃう活字中毒者!このゲームに含まれるテキストはハリーポッター9巻分だぜ!

>グラフィック
砂ぼこりと鉄のサビたにおい、重油、粘っこい潮の香り…
かつては栄えていたのが伺える寂れた街並みから漂う、そんな匂いが伝わってくるようなグラフィック。歩いているとなんでか知らないが気分が落ち込んでくる(この世の不条理に苛まれているかのように)めっちゃ世界観にあってた。住んでる人いたら申し訳ないんですけど、夕方の箱根とか熱海こんな感じの空気するよ

微妙だなと思ったところ

>町の広さ
移動速度に対して町がえぐい広い
わりと移動時間は虚無に感じるかもしれない。
私はこの事件や相棒のことを考えていたり「次なにやるかなぁ」って考えながら歩いていたので割と平気だったけどサクサクプレイをするのはちょっと難しい。
まあでもこういう陰鬱なゲームは移動中にする自分の思考が気持ちいいところあるし・・・

>テキスト量
良くも悪くも、の悪いほう
まじで多い。舐めてた。本筋に全然関係ない人が今の政治に感じていることをしゃべるしプレイヤーもさらに掘り下げる選択肢が選べるので普通の感覚だと「ん?なんか重要なこと喋るのかな?」となる。しかし終わってみると特にない。今の政治が汚職にまみれているのはわかった。
って思ってたら突然重要な話も出てきたりするのでしっかり読むというよりは「要らん話してんな~」って流し見するくらいでちょうどいいと思う

ハマるひとはハマると思う
特に普段から思想の違いとかを考えている人とか。なんだか抑圧されているような気持になっている人とか。ままならない世情に悶々としている人とか。
文学作品っぽさが好きな人は絶対いると思うので、この古典をたのしみたいひとはオススメです




以下ネタバレ
(クリアして悶々としてレビューとか感想聞きたい人向け)




クリア状況
 クリアしたサブクエ
  ナナフシ
  コンテナの中のブルジョア
  スーツあつめ
  桟橋の死体
  マスターとの仲直り
ED状況
 キム生存
 EDで主人公は継続で居残り
 平坦で平凡で解決力のある刑事

まじでルビーに会う前に「おっスーツのボディ回収できたわ、コートで隠せるやーん」って着こんでなかったら死んでたよ
おかげで怪我をしつつキムを助けるのは80%超えだった
(同居人は13%だったらしいので私がキムは踊りたくないだろうな…という意思を尊重したのがデカいね/ドヤ)

このゲームは「思想」から作っている(コンセプトである)という考えに至ってからは比較的スムーズに理解が及んだなーという気持ち
どんなモブキャラにも「思想」「主義」があり、人種なども含めてそれらが当たり前にある世界…なのでそんな現実にあるような不条理の中で生きている主人公たちを描く、その中であなたはどんな思想を持ちますか?という思考実験を楽しむゲームだなという印象でした(そういうところもTRPGっぽい)
だからこのゲームという遊びの主目的は「不可解な事件の犯人を見つけること」と設定されているけれど、その謎解きを楽しむのではなく、その複雑な人間関係、人間性を紐解く楽しさを味わうのがゲームの目的なんだろうなと。
だから突然第三者(しかも凄腕のスナイパーというご都合設定)が出てきてそいつが犯人で丸く収まっている。
推理小説だったらタブーだと思うけれど、このゲームは主義思想を楽しむゲームなので、犯人の男は「凝り固まった思想主義の男」でいいんだと思う
だれもが思想や主義という「正義」を手にしたら殺人も犯せるのだから

っていう主旨のオチなんだろうな…と主人公の功績をフォローしてくれているキムを見ながら思ってたんですけど、すごい海外的な発想のゲームだなぁと感心しました
様々な国籍と生活背景を持つ国で生きている人だったらきっと彼らの思想や主義に関する話題も興味を持って聞けたと思うんですけど、日本人の我々は日常でそんな会話しないじゃないですか。特に政治の話題って結構グレー扱いされているし
そういう意味で日本人だからこそ難しく感じるなと思います。

個人的にはデトロイドをやった時に感じたその「日本人が及び至らない、人種や人権の考え方」を深く深く煮詰めたTRPGって言われると納得できる。
なんか、ここでしか吸えない空気みたいなのは確実にあったなぁと思うので、また気が向いたらやりたいかも。
結構テキストを読みたい欲は満たされたなぁ(ただしめちゃくちゃ眠くなる)

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