文極キャス20180821【星謡】

隠しおおせない光。
三等星を装おうともそれは確かな一等星で
そのものが名を成すと私は確信していた。

それを夜空で見つけた時は
もう全てが動き始めた後だった。
私はその星の話を書かねばならない。
そう思った。
手のひらの上に乗る小さな宇宙の形で。

それが編まれてひとつの形を成した時
そこに乗せられた歌は途切れずに流れ続けていた。
静かに。とても静かに。
その場にあふれる音がひととき止んで
その静謐な響きは確かな命を主張する。
それは水晶鳴りが残す不可聴の振動にも似ている。

距離ならとっくに失われている。
私は書く傍から物語に融けていた。
長らく望んだあちら側へ
私は何も零すことなく降り立って、
その温度に身を委ねる。

歌は時に休みながらも止むことはなく
私の方へ融けて
あの日夜空で見つけた星は私でもあったのだと
じわりみぞおちへと辿り着き
内からまた拡がっていく。

どこまでも自由で不自由で愛おしい。
抱きしめて抱きしめられて
渡る言の葉と響くメロディーを
私も歌う。
ひとつ。すべて。続いて。

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