文極キャス20181030【Adiaŭ Morgaŭ】

うっかり放ったカードケース。
名刺の吹雪。
地面に落ちる前に拾えるわけがなくて。
全部が視界に入ることもない。

高さ160cm以下に広がるモノクロームの世界で
僕を見上げるずいぶん綺麗な四角い空。
黄金比で切り取られた青。

拾い上げたら融け消えた。
世界はグレースケールを固持したいのだ。

一瞬だけ掴んでいた#1e90ffは
僕の右目を奪ったまま離さない。

もう
いなくなったのに。
世界は拒否したというのに。

そうだ。
僕はこの世界から拒否されたのだ。
ドジャーブルーの愛を得て。

右の踵でタイルを打つと
僕は舗道へと透過していく。

見上げると灰色が見下ろしてくる。
この空へ僕が踵を返すことはない。

Saluton
Nova mondo

19秒後
右目が映したのは#87cefa。

愛は僕を送り出して消えた。


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