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出生前

今思い返しても、不思議な家だと思う。

酒乱の父親
母親の違う6歳上の姉
精神疾患を患う母親。

そんな家に私は生まれる。


姉の母と結婚して間もなく姉ができた。
最初のうちは、父の親戚の遺産などが入ったりして、結構裕福に暮らしていたらしいが、遺産と言うのは使えばなくなるお金。
働くのが嫌いで、酒ばかり飲み、ついには借金までするようになった父に愛想を尽かした姉の母は、姉を残したまま他の男性へと逃げていった。

酒乱の父一人では子供を育てることができない。
実家に駆け込むも、実家だっていい迷惑だ。
姉の面倒を見てくれる人を探そうという話になったとき、目に止まったのが私の母だった。

昭和10年代生まれの母。
同世代の人たちは、20代に入ると次々結婚していく中、精神的に弱かった母は結婚もできず、仕事しても長続きせず、今で言うフリーターのような生活をしていた。

父の親戚の知り合いだったことから、まだ嫁にも行かずふらふらしている母が目に止まり、お見合いさせられた。
見た目も好みではないし、バツイチ子持ち。
母は断るつもりだったらしいが、父の親戚も必死だ。

「紹介した俺達の顔に泥を塗るのか!?」
「断ったらただで済むと思うな!」
などと脅迫めいた言葉を巧みに用いて、母は渋々結婚した。

農村部からの嫁、しかも後妻とあって、母は近所の人たちに最初からかなりの嫌がらせを受けた。
何度も逃げ出そうとするが、そのたびに父方の親戚から連れ戻された。

そんな中。

酒乱の父が泥酔して帰ってきて…間違いが起きた。

その間違いの結果…できたのが私である。


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