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120%のよろこびと、3%のさみしさと

5歳の娘がNZの小学校に入学して、3ヶ月が過ぎた。早いもので、明日で2018年の学校は終わり。南半球は、1月末まで開放感あふれる夏休みだ。

産まれて3週間で場所見知りを発揮していた娘は、予想通り新しい環境で毎朝泣いていた。渋い顔で「学校いきたくない」と言うこともあった。

なにか特定のことが嫌なのではなく、とにかくやっぱり嫌だ。でも、友達と遊ぶのは楽しい。授業はつまんない。お母さんがずっと一緒にいたらいい。そんな哀楽入り乱れる状態で、教室まで送り届けたあとは、私の服の裾をはなさず最後は先生に手を引かれ泣きながらバイバイする日が続いた。

その娘が、ついに今日、泣かずに手を振って登校した。

ここ2週間ぐらい、「出席で名前を呼ばれたらバイバイする」ことにしていて、母と離れがたい素振りをみせはするものの涙は流さないようになっていた。なので、今日は思い切って聞いてみた。

「お母さん、今日は郵便局に行くから教室までいったらバイバイするよ」

通学バッグをかけて、ハグをする。まだ8時30分を過ぎたばかりなので、教室の人影はまばらだ。じゃあねと声をかけて去ろうとすると、娘は黙って後ろからついてくる。ドアを出たところで、口を開いた。

「ねぇお母さん、サラはどこ?一緒に探して?」

サラは、娘の仲良しのお友達の名前だ。さてどうしようかなと思ったところで、ちょうど廊下の反対側から父親と一緒にサラが登校してきた。

「あっ、サラだよ」と娘に教えると嬉しそうに友達のもとへ駆けて行った。「じゃあお母さんいくねー」と後ろ姿に声をかけたけど、もう耳に届いてないだろう。でもきっと、大丈夫だ。

***

「She is confident」

「Her confidence is growing」

保育園でも小学校でも、はじめての場所で不安で泣いていた娘が慣れて落ち着いてくるとよく耳にした言葉だ。文字通り、「自信をもつ」という意味なのだけど私はこの表現が好き。

泣きっぱなしで母にべったりでも、お友達と遊ばなくても、別にその子の状態が劣っているわけではない。本来持っているキャラクターが前に出てくるのに、ちょっと自信が必要なだけ。その子が慣れて、いまいるところを大丈夫と思えるまで見守ろう。そんな優しい気持ちが感じられるのは、私だけかな。

娘は自信をつけて、また一歩飛び出した。保育園でも小学校でも泣いたけれど、次の新しい環境ではもう私の前で泣かないんだろうな。


いつもより20分も早く、校門をくぐる。チラっと振り返ると、娘が友達と手をつないで教室に入っていく姿が見えた。

喜びしかない娘の成長に、ほんの少し鼻がツンとするのは、きっと全身で愛情を求め疑うことなく両手を広げていたあの小さな姿に、もう二度と会えないと気づかされるからなんだろう。




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