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なんだか泣けてしまう気持ち

わからないけど、なんだか泣けてしまう、そんなときがある。

私の場合、ニュージーランドの国歌をうたうと泣けてくる。

なんで? と聞かれてもちょっと困るのだけど。とにかく、胸が熱くなって涙が滲んでくる。

ニュージーランドの国家がけっこう好きだ。歌う機会はほぼない。でも、娘の小学校の集会に参加すると遭遇する。

昨日は、2学期の終わりの日ということで、「がんばった生徒が表彰される集会」(終業式みたいで、そうではないもの)に行ってきた。そこで、国歌を歌う子どもたちの姿をみた。

国歌の名前は、「God Defend New Zealand」(神よ、ニュージーランドを守り給え)。NZの先住民族の言葉であり、公用語でもあるマオリ語のタイトルは「Aotearoa(アオテアロア)」。

ニュージーランドの国歌のつくりは、日本人の私にはなかなか興味深く、1番目をマオリ語、2番目を英語で歌う。かならず1番と2番がセットだ。

マオリ語の歌詞って、どんなものなのか。ちょっとウィキペディアから引用してみよう。

E Ihowā Atua,
O ngā iwi mātou rā
āta whakarongona;
Me aroha noa
Kia hua ko te pai;
Kia tau tō atawhai;
Manaakitia mai
Aotearoa

たぶん、いま読んでいる方すべてが、なんて書いてあるんだよと思ったはず。私も意味はわかっていない。ちなみにマオリ語の発音は、日本語と似通ったとこがあり、日本人がマオリ語を話すと「上手だね!」と褒められたりする。

英語の歌詞はこちら。

God of Nations at Thy feet,
In the bonds of love we meet,
Hear our voices, we entreat,
God defend our free land.
Guard Pacific's triple star
From the shafts of strife and war,
Make her praises heard afar,
God defend New Zealand.

ニュージーランドの自然を称えつつ、神様に自由の国を守ってください、と歌っている。

ところで、ニュージーランドという国には、公用語が3つある。英語、マオリ語、そして手話だ。国歌の動画にも、手話がついている。

で、この動画、毎回小学校の集会でも流れる。

私は、200人ぐらいのホールに集まった子どもたちの後ろに立って、スクリーンに映し出された映像をみていた。

相変わらず、私は完璧には歌えない国歌。

ふとみると、斜め前にいるご婦人が手を動かしながら歌っている。前にいる子どもたちは、後ろ姿だから小さな動きはわからない。

けれど大きく手を動かすその瞬間に、けっこうな数の子が手話をしながら国歌を歌っていることに気づいた。

へえ。これが、この子たちの当たり前なのか。

その歌う子どもたちのなかには、我が家の小さい娘もいる。なんだろう。肌の色も髪の色も、背の高さも話す言葉も出身も違う人たちが、この国では暮らしていて。それが、当たり前で。

この歌を歌うと、私はいつもなんだか泣けてくる。

歌は記憶を呼び覚ますというけれど、そういえば国歌を頻繁に耳にしたのは、移住した翌年のラグビーワールドカップの頃だった。見知らぬ土地に暮らすつながりの少ないさみしさと、それでもいま、新しい世代とこの場所にいる事実が、私の胸を打つのかもしれない。

歌詞に登場するGodは、私のなかでは、この国の目を見張るほど美しい、すぐそばにある海や空だ。

タイトルの「Aotearoa」は、「白く長い雲のたなびく地」という意味。

マオリの人は、どこまでも空が広がるこの場所をそう呼んだ。ニュージーランドのもう一つの名前なのだ。



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