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『発掘された日本列島2016』の埴輪目撃談

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今年の入口の島には

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縄文土器
六反田南(ろくたんだみなみ)遺跡出土 (新潟県糸魚川市:縄文時代中期 約4500年前)

埴輪じゃなかった…

埴輪はその後ろの壁側、ケースの中。
いいでしょう。たまには脇役に回っても。
ぐるっと回ってじっくり見る。

おお 今回唯一の動物埴輪。
近づくと、目が合った。

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瞳孔を こじ開けてくる 埴輪鳥
京都府の乙訓(おとくに)古墳群の恵解山古墳(いげのやまこふん)出土

粘土の色も質感もいいけれど
なによりも

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その瞳にくぎづけ

鳥形埴輪の目は、くぼみか線刻で表現するのが標準型。
この鳥は、くぼみの周りに半円を線刻している。独特の表情が生まれている。

おまる形の鳥形埴輪の脚は、立体的なものと線刻とがある。

本展の埴輪鳥の脚は

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線刻されていました。

同古墳出土の円筒埴輪にも

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中の段に

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鳥の脚によく似た線刻

鳥の脚を表現しているのか、別のものや記号を表しているのか。
突帯はしっかり突き出ている。

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家形埴輪
こちらも恵解山古墳出土。

屋根は立派な二階建てだが、一階も二階も底抜け。

ところどころ黒いのはなぜ?

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修正部分を別とすると、塗ってあるわけではなく、欠けたために見えている内側の粘土が黒いようだ。
焼きの問題? 気になる。

野焼きしたせい?

参考:長岡京市埋蔵文化財センター特別企画展図録「市内の古墳と埴輪」 

野焼きすると「断面芯部が暗色~黒色系の色調を呈する「サンドイッチ状」」になる?

参考:辻川哲朗(2013)「丹波・周山1号墳出土埴輪について

修正・追記。窯跡から出てきた埴輪に、サンドイッチ状の箇所を発見。
参考:佐野の古墳と埴輪(佐野市郷土博物館)の目撃談
野焼きじゃなくても、窯焼成でも、焼けにくい箇所はサンドイッチ状になるようだ。
サンドイッチ状の箇所だけだと、焼成方法の判断ができない。
サンドイッチ状の箇所に加えて黒斑があれば、野焼きの可能性が高い、ということらしい。

それにしても、この大きさの埴輪をよく野焼きできたなあ。
割れや欠けがあっても、ちゃんと残っているし。
温度が低くても、サンドイッチになっていても、埴輪を焼いてくれたんだからかまわないわ。

一階と二階の間

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ネズミ返しに直弧文。

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朝顔形円筒埴輪
乙訓古墳群の寺戸大塚古墳出

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ちょっと珍しい、二重口縁ではない朝顔形。
真に朝顔似の朝顔形円筒埴輪。

遠目に見ると

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ちょっと傾いているのがわかります

変わり者だけあって、斜に構えた朝顔形円筒埴輪でした。

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ガラス玉、トンボ玉、なつめ玉
乙訓古墳群の物集女車塚古墳(もずめくるまづかこふん)出土

トンボ玉は青に緑の象嵌。

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巴形銅器と鏡のかけら。
乙訓古墳群の鳥居前古墳出土

参考の図は、大阪府和泉黄金塚古墳の盾。
巴形銅器って、そんなところに装着するものだったのか。
盾としてはどうなのか。当時は銅が光っていただろうから、目を引いてしまいそうだけど。
ピカピカぐるぐるで、目くらまし効果あり?

物集女車塚古墳と鳥居前古墳からも埴輪が出土しているようですが、今回は来場せず。

遡って移動して広島。

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広島県安芸高田市の甲立古墳(こうたちこふん)出土の家形埴輪

高さ約68.3センチ、屋根の最大幅約87.0センチ。
やっぱり屋根が大きくて二階建て、そして底抜け。

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柱の文様がおもしろい。「鍵手文」というらしい。

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屋根は網代文。

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床がある小さな家

お盆に乗せたかのよう。
子持ち家形埴輪の一部らしい。

これも

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家らしい。囲形状建物らしい。

よくわからないことが多いらしい。
掘れば掘るほど埴輪の謎は深まる。

何周か見ていて、ようやく気付いた。
上の方に素敵なものが。

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恵解山古墳の武器埋納施設の復元の表現

たくさんの刀子や矢。詰めに詰めたね。
まだ詰める。赤い顔料と白い粘土。
これを縦にして、掛け軸にしたらよさそう。

埴輪に集中してしまうと、ほかのいいものを見落としがち。
たぶんまだ見落としがあるのだろう。それは仕方ない。

群馬県の有馬条里遺跡のパネル展示。
地層を見るとわかること。榛名山は古墳時代に2回噴火した。
人も田畑も埴輪も埋もれた。
生き残った人々が、新たな畑と埴輪を作った。

繰り返す。

掘り出された埴輪は、火山灰に覆われたおかげで残りが良い。
ムラもそのまま残ったのでありがたい研究材料となった。
日本のポンペイ。

 

古墳時代の遺物以外。

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岩偶
北海道・館崎遺跡(縄文時代中期)出土

陶板。人物上半身、頭部は欠損。
でも、パッと見て人の上半身だなってわかる。

そういえば、人物埴輪にも、腕や頭が欠けて胴体のみのものが多く出土している。
体幹は丈夫。

縄文時代の北海道は石文化が栄えていたのかしら。
古墳時代の本州は石より粘土で埴輪。
いや、葺石・石室・石棺もあるか。九州には石人石馬もあった。

ところで、黒曜石は天然のガラス、とあった。へー、知らなかった。
鋭いわけだ。

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土偶たちと男性土偶
福島県・高橋遺跡(縄文時代後期~晩期)出土

今回の土偶はみんな板状。
埴輪にも、男性器を表現した人物埴輪がある。

解体工事中の薬師寺東塔。パネル展示。
薬師寺東塔は、フェロノサが「凍れる音楽」と呼んだ、と言われている。
閉じ込められた奈良の音階を、目で聞く。
解体・再建しても、響くのか?
「凍れる音楽」は別人の言葉だという説もあるようだ。そのせいか図録にこの話はなし。

「輪」の文字だ!

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茨城県の台渡里官衙遺跡群(だいわたりかんがいせきぐん)出土の文字瓦

だが「埴輪」ではなく「徳輪寺」らしい。
水戸市教育委員会 台渡里遺跡(第 39 次調査)  ―公共下水道工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書―

たくさんの文字瓦 、皆さん達筆。
この時代の人はもう文字を使いこなしていたのか。9世紀ごろ?

江戸城の石垣の石を確保する苦労。 パネル展示。
石割に失敗したのか、採石場に置き去りの石。
その石から、どうやって石を割っていたかがわかる。

いまお城の石垣というと、連想されるのは熊本城。

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今年4月の熊本地震の爪痕

元の石だけで直せるのかな。足すかしら。足すとしたらどこから持ってくるのかな。

列島展は、毎年サイトやチラシが遅いなあと思うのですが、最新情報をまとめて展示することを考えると、仕方ないのか。

でももうちょっと早く出来ないかしら。もうちょっと。新年度に間に合うようにしてほしい。

 

地域展 「掘り出された江戸の町 一橋高校遺跡出土資料から」

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江戸から現代までの地層。実物大で再現。

その中に、円筒埴輪似の桶が埋まっている。
カラフルなリボンの先には、各時代の遺物。
高さのある会場を生かした展示。 

おまけ

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注意を促すハート形土偶

(2016/06/29江戸東京博物館訪問)

図録について。
会場でじっくり見せてもらいました。
円筒埴輪の写真だけなかったです。
古墳名の下に、その古墳の形が描かれているのがうれしい。
他の時代のページには、当然ないのだ。

『第22回 発掘された日本列島2016 新発見考古速報』
会場および開催期間
東京都 江戸東京博物館:2016年6月4日(土)~7月24日(日)
滋賀県 大津市歴史博物館:2016年8月6日(土)~9月11日(日)
秋田県立博物館:2016年9月22日(木・祝)~10月30日(日)
高知県立歴史民俗資料館:2016年11月12日(土)~12月18日(日)
福岡県 北九州市立自然史・歴史博物館:2017年1月14日(木)~2月28日(日)

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以上、『埴輪のとなり』掲載のページを修正し再掲しました。

今年も行くぞ! 列島展!

お読みいただきありがとうございます。サポートいただきましたら、埴輪活動に役立てたいと思います。