ヨーロッパの橋のある風景 (ポンテ・ヴェッキオ橋 フィレンツェ イタリア)

第6位 ポンテ・ヴェッキオ(イタリア フィレンツェ)

フィレンツェで道に迷ったら、「ポンテ・ヴェッキオ?」という単語を発すると大抵の人はその方角を示してくれる。ポンテ・ヴェッキオの方角が分れば町を貫流しているアルノ川も一緒に分る。フィレンツェにはたくさんのランドマークがあるが最も分りやすいのはこの二つだと思う。

第二次世界大戦の時、ドイツ軍はフィレンツェを撤退する際、このポンテ・ヴェッキオ以外の橋を破壊して行ったという。ドイツ軍もその貴重な文化財を十分認識していたわけだ。余談ながら、ダンテの「神曲」にも出てくるポンテ・ヴェッキオから一つ下流に架かる橋サンタ・トリニタ橋は破壊されて、戦後、川の中から破片を集めて作り直したというエピソードを持つ。

 そのポンテ・ヴェッキオ。今は橋の上には金銀細工の店が軒を連ねているが、元々は肉屋やなめし皮職人の店が並んでいたという。16世紀にたくさんの税金を取りたいため肉屋を追放して金銀細工の店にしたとか・・・

その軒の上に白壁に等間隔の窓がついた廊下のような建物が重なっている。これが「ヴァザーリの回廊」といわれる廊下でウフィッツィー美術館とピッティー宮殿を繋いでいる。元々は雑踏を避けるため、あるいは暗殺を恐れたメディチ家が作らせたと言われている。予約をすればここを歩けるので時間をたっぷりとって是非歩いてみて欲しい。回廊には夥しい肖像画が並び一つ一つをつぶさに見てはいられないが、注目すべきは橋を渡りきったピッティー宮殿側にあるサンタ・フェリチタ教会のメディチ家専用の礼拝のためのバルコニーだ。この専用礼拝堂はこの回廊からではないと入れないようになっている。そして、小さい教会の2階バルコニーに入ると正面の下に祭壇と司式者だけが見えるようになっている。1階からこのバルコニーは見えないように工夫されている。このことについては2020年4月24日のブログ(天正遣欧使節団の足跡を追って・・・フィレンツェその5)に書いたので参考にして欲しいが、このサンタ・フェリチタ教会の宝ポントルモの「十字架降下」はヴァザーリの回廊からは見えないのでピッティー宮殿やパラティーナ美術館の帰りに是非立ち寄ってじっくりとマニエリスモを鑑賞して欲しい。また、ポンテ・ヴェッキオの定番の風景は町を俯瞰できるミケランジェロ広場や更に高いところにあるサン・ミニアート・アルモンテ教会からの眺めを薦める。

(写真説明: 上から、アルノ川にかかるポンテ・ヴェッキオ。中:対岸の高台・ミケランジェロ広場からポンテ・ヴェキオを含むフィレンツェ市街の俯瞰。下、ヴァザーリの回廊の左岸にあるサンタ・フェリシアタ教会の2階の部分にあるメディチ家専用礼拝堂・・・Wikimedeaより)

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