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湘南の家−Ⅱ

化学物質過敏症の人のため家
 
 湘南の家-Ⅰでは立体的ワンルームのいきさつについて述べました。日本人のため家の計画では大切なことで、特に子育てのためには個室を作らないことは大切なことと思われます。
 ここではもう一つの要望である化学物質過敏症のご主人のための対応について述べてみます。
 
 ご主人は、古い家の掃除をして埃を吸い、突然、化学物質過敏症になりました。当時、問題になっていましたが、新建材の接着剤や塗料の溶剤や、材木の防腐剤、などに反応して喘息のような症状を起こしてしまうのです。
 始末が悪いのは馴染みの材木、ヒノキや杉の持つ揮発性の物質にも反応してしまうことです。
 
 この状況から、埃の中の何かの菌により、呼吸器のどこかにその菌がとりつき軽い炎症を起こし、空気の中の揮発性の物質の刺激で、その炎症が反応して症状が顕在化するのではと推理できます。(私は医者でもありませんし、科学的に確かめたわけではありませんので断定はできません。)
 
 したがって使用できる材料に制限があり、設計段階で試しながら材料選択する必要がありました。
 幸い症状はそれほど重くはなかったので、壁、天井には有害な揮発性ガスを吸収するプラスターボードと漆喰を選びました。床材が安全か否かの実験をして、価格的に適当なカラマツを床材としました。塗料もドイツ製のアレルギー対応の材料を選び施工しました。
 
 今回は、幸運にも化学物質過敏症の症状が重篤ではなかったため、それほど手間のかかるものではありませんでした。建築から20年近く時が経った今では、ご主人に化学物質過敏症の症状はほとんどないようです。
 
 「湘南の家」は合理的な平面を可能にするために3階建てにしました。それによって鉄骨造になり費用が嵩んだ分、細かい部屋割りを避け、内装費を節約する計画になり建築費を要求の中に収まるようにしました。
 私の住宅設計の課題は日本の伝統を踏まえ新しい時代の日本の住宅ですが、結果的に障子、襖はないものの古い日本家屋に通ずる日本的な家族関係を育てる家になったようです。
 
 これからの課題は子供たちが巣立って、夫婦が退職した後の老後をどう過ごすかになります。夫婦がどこかに退き、子供のどちらかが後を引き継ぐのもいいでしょうし、有効に使って欲しいものです。

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