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母からの手紙



産後、実家の部屋を整理しているときに見つけた、便箋7枚にわたる母からの手紙。

なんだか眠れないのでお手紙かいてます。
この頃、あなた達3人(私を含めた兄弟3人)のことばかり考えてしまいます。小さい時はただ毎日過ぎてくだけで、もっとお気楽でした。
あの頃はよかったねと。今はなんでこんなんだろう…と。
みんなが成長していく速度についていけないのかもしれないと、お母さんは今気がつきました。
あなたに、今、もう、どう言えばいいのか、何が一番いいのか分からなくなっています。
……略
期待が息苦しいと分かってて、さんざん「将来のために、後悔しないために」頑張りなさいと言ってきました。この思いはうそではありません。これは私が41年生きてきて、反省して後悔もしているから。
でも、あなたがいろんな事に無理をしていること、もう、ずぅーーーっと前から分かってて、
「もういいよ」「人にどう思われてもいいやん」「もっと楽に」って言うこともできなかった。
すべてのことから解放してあげたいと思ってもできなかった。
……略
書いてる途中、涙もこぼれてしまったりしましたが、あとで読むときっと恥ずかしい手紙になってしまったと思います。
上手く伝わらなかったかもしれませんがこれが今の気持ちです。

驚いたことに、この手紙をもらった当時のことを全く覚えていない。
(文面から、私が高校生の時の手紙のようだった)

何を感じ、何を伝えたのか…
母からこんな素直で正直な言葉を受け取ったのは、人生で初めてだったはず。
なのに、なぜか記憶からすっぽり抜け落ちている。

高校生、反抗期だった私は、母からの言葉に耳を傾けなくなっていた。心ない言葉で返したか、ろくに返事も返さず変わらない日々を過ごしていたのだろう。

「お母さんみたいにはなりたくない!」

そう言い放ち、母を傷つけることもあった。
「こんな私になったのは、この家に生まれたからだ!」
まるで自分は悲劇のヒロインであるかのように。

「私のことを理解して!認めて!」と思う一方で、私は母親のことを理解しようとしていなかった。

自分が親となった今改めて読むと、
ひとつひとつの言葉が胸に突き刺さって、涙なしでは読めなかった。

母がどれだけ悩みながら、葛藤しながら子育てしていたのか。
どんな思いでこの手紙を書いたのか。
当時の私がどれだけ母を苦しめていたのか。


子どもの気持ちが分からない辛さも、
気持ちを分かってもらえない辛さも。


今なら分かる。


子を思うが故の言葉や躾が、
時に子どもを苦しめる。
分かっているけれど、いかんともしがたい親心。


「親と子」は近い存在だからこそ難しい。
お互いを思うが故にすれ違うことも、
ぶつかることも、
関係がいびつになることも。



私は母との関係がうまくいかなかった時、おばあちゃんの存在に救われていた。
私のありのままを受け止め、人生についていろんなことを教えてくれたおばあちゃん。

あの時側にいてくれなかったら、今頃どうなっていただろう…


おばあちゃんにはもう会えないけれど、
今もずっと心の中で諭してくれている。

私は「第二のおばあちゃん」として、
今度は、私や私の母と同じように悩むたくさんの人の救いとなりたい。


けれど、ちゃんと向き合わないと。
まず母とちゃんと向き合わないと。

たくさんの人を救えるような「第二のおばあちゃん」なんてなれっこない。


殻を破らなければ。
もっともっと。


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