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映画「鳩の撃退法」考察

映画「鳩の撃退法」を観てきた。
まず初めに、「とても面白かった」と述べておく。

「考察」などとタイトルに掲げてみたものの、正直おこがましい。大体の辞書には「考察=物事を明らかにするため、よく調べて考えをめぐらすこと」といった説明が書かれている。私はそれほど深く思慮しているわけでもないし、何かしら見落としていたり、偏った見方をしていると思われ、こんなのは考察にもならない感想、あるいはただ楽観的に「こうだったら良いな」という希望を綴っているに過ぎない。
それでも敢えて「考察」と書いたのは、↓これ↓に参加するためだ。

上手くいけば何やらプレゼントがもらえるらしい。それがダメだったとしても、このイマジネーション掻き立てられる痛快な作品について堂々語れる場所があることが嬉しいし(公にネタバレ可という寛大な企画だ)、観終えた後で記憶が薄れる前に、あれこれ書き出しておくのも悪くない。

そんなワケで、お題に沿って考察ポイントを挙げてみる。

1.主人公・津田伸一が書いた小説は、どこまでホントだと考えるか?

これはオリビアで津田自身が言っていることが大ヒントというか答えというか。彼が知っているのは断片的な事実だけで、あとは全部彼の想像(あったかもしれない事実)だと説明している。確か、秀吉には娘がいたこと、秀吉の妻が郵便局員と浮気していたこと、秀吉の妻が妊娠していたこと、だったかな。あと、神隠し事件と給料の前借りの事も話してたっけ?
だから以下の描写はフィクションのはず。
・倉田と秀吉の会話内容
・奈々美の昔の男の消息
・偽札の移動経路:房州老人経由でピーターパンの本と共に津田に渡ったことから逆算すると、加賀まりこまでは辿れるけど、そこから倉田の組織の間は確定できない。佐野がSPINから持ち出したという描写自体がフィクションの可能性もある。
・秀吉一家の消息:神隠しの事実から考えれば、晴山と奈々美の密会現場が押さえられて、そこに秀吉と倉田が合流したことはほぼ確定だろう。でも秀吉が手を叩いたことや晴山が車を奪って暴れたこと、混乱に乗じて秀吉一家が逃走したことはおそらくフィクション。

あと盛大に偽札を燃やすシーンだけど、あれは事実ではないと思うし、そもそも津田の小説でもないと思う。「なんで燃やす必要があるんだ?」って鳥飼に訊ねているので、たぶん、小説にそういう描写を入れたら面白くなるんじゃないですか?って鳥飼がシナリオに口出ししたんだと思う。
津田の言を信じるなら、それ以外に彼が登場する場面は全部本当の事なんじゃないかな?

と、ここまで書いてから、津田が鳥飼に説明した「俺が知っている事実」に嘘、あるいは津田の誤解が混ざっていた可能性が無いとは断言できない。ただ、そこを疑ってしまうとストーリーが無限に広がってしまって、考察が永遠に終わらない気がする。このnoteでは無視しよう。


2.津田伸一はなぜタイトルを『鳩の撃退法』とつけたのか?

「鳩=偽札」だとすれば、これは偽札を寄せ付けない方法、ということになる。この一連の事件を小説にして出版すれば、倉田の組織は偽札を使えなくなるし、津田に付き纏うわけにもいかなくなる。だから、津田が自分自身の安全を確保するという願いを込めたタイトルなんだと思う。
あと、誰の手を介したか判らない金じゃなくて、銀行経由で給料を受け取れるような仕事に就いてれば、そもそもこんなリスクに身を晒すことはないよ!という教訓も含まれているのかな?


3.なぜ最後に幸地秀吉は倉田健次郎と一緒にいたのか?

これはさっき貼った松竹のnoteには書かれていないお題だけど、公式裏サイト「本通り裏」とTwitterで募集されているので一応書いておく(noteが公開された時は、このお題はまだ伏せられていたような...)。

・津田の見間違いという可能性:これを真っ先に考えた。小説の結末では、秀吉は混乱に乗じて倉田の車を奪い、妻と娘を連れて逃走した。あるいは、現実には秀吉はダムで殺されている可能性も充分ある。
実際に本を返しに来たのが秀吉か、倉田か、それ以外の誰かかも不明だけど、いずれにせよ、彼らが一緒に居るのは不自然だ。

・秀吉と倉田が和解した可能性:あの雪の晩、秀吉はリンチを受けながらも許しを請い、見逃してもらったかも知れない(つまり津田の小説とは異なる結末)。一家揃って幸せに暮らしているか、妻子の幸せと引き換えに倉田に身売りしたか、妻より倉田を取ったかは定かではないが。
いずれにせよ、ダムから見つかった男性遺体は晴山の可能性が高い。じゃあ女性の遺体は?というと2パターン考えられる。1つは奈々美の可能性。秀吉が倉田の助言通り、奈々美を見捨てた可能性は充分あるからだ(倉田の助言というのも津田の想像だけど、秀吉が奈々美と晴山の安全に固執したのだって津田の想像に過ぎない)。
遺体が奈々美じゃないパターンがあるとすれば、真っ先に思い浮かぶのは加賀だけど、彼女が晴山と一緒に死んでる必然性は皆無でしょう。また、遺体が神隠し事件と無関係だった可能性は否定できないけど、それは物語に関係なくなってしまうし。

秀吉には妻子と生き続けていて欲しいと願っているけど、女性の遺体が見つかった事実から考えると、少なくとも奈々美は生きていないと考えるのが一番自然だ。
津田の見間違いであって欲しいなぁ...。

一応これで、お題には全部答えた。
以下、どのお題に含めるか迷ったのと、考えがまとまってないので、余談として追記しておく。

・倉田の存在

よくよく考えてみたら、倉田って実在しているんだろうか?だって、津田は富山で一度も彼に遭遇していない。ラストシーンで秀吉の隣に居たのが倉田かどうか、津田は知り様もないのだ。
電話の向こうに存在を確認していたけど、それが本当に倉田と名乗る人物だったのかは定かではない(例えばあだ名とか)。理髪店に現れた時だって「倉田です」と名乗ったわけじゃないし。まえだや社長が勝手に「あの人」と呼んで恐れているだけでしょう?
都市伝説の可能性がチョイチョイほのめかされているし。豊川悦司が演じていたのは、あくまでも映像上での表現に過ぎなくて、実は他の誰かだった可能性は充分ある。
仮にだけど、秀吉と倉田が同一人物って可能性はない?なんて思ったり。これは途中のシーン検証要だけど。ただ、それならラストシーンで秀吉の隣に倉田が一緒に居たのは、そういう映像表現なんだと考えることはできるなぁと。

・「つがいの鳩」という表現

上述の通り、偽札を指す符丁なのかなと思っていた(行方の分からない偽札が2枚だったので)。ただ、不自然なことに気付いた。
津田が吟子のマンションから出た時、倉田は電話越しに「つがいの鳩を見たか」と訊ねている。これは、もしかして「幸地秀吉夫妻の行方を知っているか?」という意味ではなかろうか。
考えてみれば、津田が倉田にマークされているというのは、社長&まえだの余計な忠告による被害妄想でしかない。パチンコ屋で見つかった偽札がどういうルートでそこに辿り着いたか、組織は解明できていないのだ。あと、まえだの見込み通り、たぶん、倉田は偽札の行方をそれほど本気で探していない気がする。偽札は使わなければ意味が無い。遅かれ早かれ、あの偽札を誰かに使わせて世間の反応を見なければいけなかったはずだ。そうでなければ、持ち出した佐野と、その3万円を受け取った友人だって殺されていてもおかしくない。だから組織は津田をマークしていない、というのが私の見込みだ。
倉田は理容店を訪れた際に、小説家と、その人物が持っているであろう本の事を訊いていた。これは、神隠し事件の直前の、倉田と秀吉の会話が伏線なんだと思う。秀吉は「あの男から本(ピーターパン)を借りれなかったことだけが心残りだ」と語っていた。
ということは、仮に津田の小説通りに秀吉が逃げおおせたとしたら、秀吉が本を借りるために津田にコンタクトしてくる可能性がある、と倉田は予想したんじゃないだろうか。
更に言うと、その電話の後で、ピーターパンは倉田の手に渡る。それが秀吉らしき人物の手で津田の元に戻るというのは、どういう意味があったのだろう。
何らかの方法で秀吉の行方を探し当てた倉田が「ここにお前の欲しかった本がある」と言ってコンタクトを取って、それが元で二人の和解に繋がったのか。それとも、3000万円と一緒に本もNLHに寄付して、そこから偶然にも秀吉の手に渡ったか。
ここまで考えて3番の考察と延々ループ...。


まぁ、こんなところでしょうか。(了)

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