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初夏が香る作品:BEFORE SUNRISE

https://m.youtube.com/watch?v=9v6X-Dytlko

6月16日、列車の中で出会った2人の男女。翌朝9:30、彼がアメリカ発の便に乗るまで、道中のウィーンで過ごした、短く濃密な時間の物語。

アメリカ人の彼はウィーン、フランス人の彼女はパリが目的地。彼の熱意に折れ、女もウィーンで途中下車。そこから物語は始まる。

列車の中で死生観について話したり、ダウンタウンまでのバスの中、質問ゲームをして幼少期の話で笑ったり、街中のレコード屋さんで狭い視聴室の中で素敵な曲に出会ったり、夜の遊園地で互いの家庭環境の話をしたり、占いや詩人に声を掛けられチップを払ったり。

ひとつひとつの出来事に対しての言動で、国籍も境遇も違う2人の価値観が垣間見える。お互いしっくりくるところもあれば、合わない価値観にも出会う。価値観が合おうと、合わまいと、相手について分かったことが、ひとつ、またひとつと増えていくことに対する喜びが、積み重なって行く。お互いのことをひとつひとつ知り、想いも募っていくにつれ、タイムリミットは迫る。

ウィーンの街並みと、女性としての強さと教養、溢れるような透明感を持ちながら少しお茶目な彼女と、子どもっぽいけど真っ直ぐで、自然体な彼。とっても綺麗な映像がひたすらに続く作品。

お互いが、僅かな時間を愉しむために、お互いを知るために、心を使っている、そんな時間の流れ方。切ないはずなのに、なぜか切なさを感じさせない、そんな優しい映画。

そして、翌朝、半年後、また同じ場所での再会を誓って物語は幕を閉じる。

この作品は、1995年の映画なので、今ほど他国への、ましてや海を渡っての旅行は簡単ではないし、インターネットも黎明期。学生が簡単に使うことはなかったと思う。出会ってすぐに、SNSを交換して、これから仲を深めればいい、なんてことはきっとできなかった時代。

だからこそ、こんなに気の合う女性と出会えたのに、ここで別れてはもう2度と会えない、そんな気持ちが彼を奮い立たせて、初対面の彼女を誘い出せだのだろうな。

昔はそんな出会いと別れが、どれほどあったんだろうかと、20年後を生きる私は思うのでした。

2人の想いとは裏腹に、ハードなラブシーンはなく(最近の映画はすぐラブシーン入れる印象。)、終始さわやか。だけど、互いの想いの高まりが細やかに描かれているのが本当に素敵だなあ、と。チャーミングなシーンが沢山。

いつも邦画ばかり観て、洋画に対して全く知識がないので、選んだ時は、前情報無しの、感覚で選んだ作品でした。
ウィーンという舞台が、母親が昔、今の私より若い時期に少しだけ働いていて、ずっと憧れていた街だったので、なんとなく運命を感じてしまったのでした。

さらにその母親譲りの性格か、1人で海外でも何処へでも行く私にとっては、旅先での出会いをテーマにした、この作品には心をぎゅっと掴まれたのでした。ヨーロッパの街並みと、こんな素敵な出会いは、現実離れしてると分かっていながらも、永遠の憧れ。

映画のタイトル通り、夜明けまで、夜通しウィーンの街並みを散歩したり、芝生に寝っ転がって、朝を迎える。夏じゃないとできないこと。観ているだけで夏の匂いが立ち込めてくる。これがこの作品を、夏に観たいと思うワケ。


三部作の一作目、シリーズ観てもこの作品が一番好きです。

#夏に見たい映画 #BEFORESUNRISE

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