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父の誕生日

年度末ということで徐々に忙しさが増してきた中ではあるが、一昨日の金曜日は有休を取った。

行きつけの美容院の予約がこの日の午後にしか取れなかったからなのだが、父親の誕生日が偶然この日だったので、夜は実家に帰ってお祝いしようと決めたらそれほど罪悪感はなくなった。

以前ここにも書いた通り、担当美容師のTさんは今月いっぱいで辞めてしまう。予約が取りづらかったのは、きっと駆け込み予約が殺到してるからなのだろう。


午後一番に行って、いつも通りのメニューをいつも通りにこなしてもらった。帰り際、この店で担当するのは今日で最後になるが次回予約をどうするかと聞かれ、「少し考えてから連絡します」と返事をして別れた。

Tさんは昨年秋頃からインスタの個人アカウントで熱心に集客に励んでいた。急にどうしたんだろうと不思議に思ったが、今思えばそれは転職への布石だったのだ。新しく勤める所は市外にある店舗で、数人で借りているがそれぞれ個人経営という形態での営業という話だった。


これまでTさんとは割といい関係が築けてきたし、私もそれなりに信頼を置いていたので、もし引き続き自分の所に通って欲しいと言われたら迷ってしまうかも…と自惚れた考えでいたのだが、特にそういった素振りも言葉も一切なかったので、一抹の寂しさと急速に冷えていく気持ちを抱えながら店を後にした。ただインスタをやっているかどうかだけ聞かれた。

残念ながら私には”遠距離恋愛”は向かないみたいだ。


その後少し買い物を済ませてから実家へと帰ると、先に着いていた妹と姪っ子が笑顔で出迎えてくれて先ほどの寂しい気分は一気に飛んで行った。

1歳半になる姪っ子は会うたびに子どもらしくなっていて、もうすっかり幼児へと成長した。愛らしい笑顔を振りまく孫に父親はメロメロだ。

誕生日のお祝いにこの日の夕食は私が奮発してお寿司の出前を取ったのだが、孫の笑顔には到底敵わない。普段は眉間にシワを寄せ険しい表情わしている父の緩んだ表情を見て、

「…まぁしょうがないか」

と私まで顔が緩んだ。


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