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20240922

5日間燃え続けた大きな山火事が消えた日
ずっと世話になってきた先輩が旅立った

「ヘッドガスケットないですか?」
「たしかあるよ。72用?88用?」
「47ミリの方です」
「探しとくよ、あったら連絡する」

「テールレンズありませんか?」
「明日持って行く、ダックスのでいいか?」  
「はい、お願いします」

「ガソリンタンクの穴埋めしてくれ」
「いいですよ」

メールのやり取りを振り返ると、ここ何年もずっとこんな感じだ
そんなメールも、9月の半ば、レストア中のエルシノアの話の途中で途絶えてしまった

長男からの連絡を受け、通夜と葬儀の受付は世話になった私たちバイク仲間で引き受けた

通夜の日
少し早めに着くと、会場の入口にはゴリラと工具とツーリング仲間の写真が飾ってあった

家族はある程度、心の準備ができていたのだろう、いつものようにカラッと、そして落ち着いていた

でもね

その日の晩
若い頃から何かにつけてよくしてもらった自分も女房も、夕食を食べながら泣いた

短気で荒っぽい人だったけど、自分にも女房にもずっと優しかった

いや、わかってる
裏表のない人だったからさ、本当は優しい人だった

だから通夜にも関わらず、会場には入ることのできない人で溢れた

「明日の葬儀にはバイク並べようか」
「そうだね、きっと喜ぶと思うよ」
誰ともなく言った

結局当日は息子さんの希望もあって、斎場まで自分たちのバイクで霊柩車を先導することになった

息子さんの言葉は、その父の性格を、気持ちを、そのまま受け継いでいるはずだから

ちょっとリムジンを先導する大統領風になっちゃったね

でもお陰様で本当にいいお別れが出来たよ

先輩、最後に一緒に走れましたね

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