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声劇台本「買取」 男:2

どうも詩奶です。

今回は5分ほどの声劇台本です。

質屋に来たとあるお客と、買取店員のお話です。

短いのサクッと読めるかと思います。
誤字脱字あったらすみません。
見つけ次第直します。

それでは、どうぞ。

登場人物
店員:質屋の従業員。今回やってきたお客の買い取りを行う。

客:質屋にやってきたお客。何か意味がありげ。

配役
男:2(若干の台詞変更で女性の方もできます)

時間配分
約5分強

以下本編ーーー


客「すみません」
店員「はい、いらっしゃいませ」
客「あの、これ売りたいんですが……」
店員「買取ですね。かしこまりました。どうぞこちらへ」
客「あ、はい」
店員「寒いですね」
客「あ、えぇ……」
店員「年末になってくると増えてくるんですよ、買取」
客「そうなんですか」
店員「はい、やっぱり大掃除をするからなんですかね」
客「はぁ」
店員「あぁ、すみません。どうぞお座りください」」
客「はい、失礼します」
店員「さて、本日はどのお品を買い取りでしょうか?」
客「えっと、これなんですけど」
店員「あ、この袋の中に?」
客「はい。ちょっと雑なんですけど」
店員「大丈夫ですよ。当店、傷もの汚れもの、なんでもござれな質屋ですので」
客「それはありがたいです。じゃあ、」
店員「あっお客様」
客「はい?」
店員「当店、買取を検討していただくお品をお出しするときはお客様にお願いしているんです」
客「あっそうなんですね」
店員「はい、お手数ですが、よろしいでしょうか?」
客「わかりました」
 
客、ものを取り出す。

 
店員「なるほど、ネックレスタイプのジュエリーが二つ」
客「はい、あと、これと、これも……」
店員「時計、ですか」
客「何かよくないことでも?」
店員「いえ、そんなことは」
客「ではお願いします」
店員「かしこまりました、あぁ、しまった。」
客「な、なにか?」
店員「いえ、手袋を忘れてしまったので、少々お待ちください。」
客「あ、あぁ……どうぞ」
 
店員が少し離れる。戻ってくる。
 
店員「お待たせしました。では始めましょうか」
客「お願いします」
 
店員鑑定し始める。
 
店員「ふむ……アフロスキーの2015年ものですね」
客「す、すぐわかるんですね……」
店員「まぁこの業界にいれば、有名ブランドの作品は嫌でも頭に入りますね」
客「さすがです」
店員「いえいえ、それに偶然ですがこちらのお品、私の妻も持っていて」
客「えっそうなんですか……」
店員「はい。頑張って貯めたお金で誕生日に渡したんですが、今じゃもう家のどこにしまっているんだか」
客「あははは……」
店員「あぁすみません、無駄話を。こちらは、そうですね、状態も良いので、こちらでどうでしょう?」
客「……あ、はい、これでお願いします」
店員「かしこまりました……。あ、箱などはありますか?もしあれば+3000円ほどは上乗せできますが……」
客「あ、すみません。探したんですけど……残しておけばよかったです」
店員「ははは、よくあります。ではこのままの状態でお取引をさせていただきます」
客「はい、お願いします」
店員「ありがとうございます。それで次は……真珠ですね」
客「はい」
店員「こちらは保証書などはお持ちですか?」
客「保証書?」
店員「はい、多分真珠を買われた際に一緒に付属していたかと思うのですが……」
客「あぁ……それは……」
店員「あっ、なかったら大丈夫ですよ。ケース同様、ご来店される方ほとんど持ってないことが多いので」
客「へぇ……」
店員「だいぶ大きいですね。伊勢で買われたんですか?」
客「そうですね」
店員「どこらへんの?」
客「どこだったかな……結構色々回ったから」
店員「わかります。私もそれしました」
客「え、本当ですか?」
店員「はい、最後はもう疲れて、妻がピンとくるものを選んだって感じですが」
客「大変だったんですね……」
店員「いえいえ、でもいい思い出です。まぁそれも」
客「どこにあるかわからない……」
店員「はい」
客「ははは……」
店員「さて、こちらは、そうですね、保証書がないので、その分下がってしまうのですが……こちらでいかがでしょう?」
客「はい、大丈夫です」
店員「かしこまりました。……結構すんなり了承してくださるんですね」
客「え?」
店員「あぁ、いえ、質屋に来る方って、売ってくださるものに色んな感情が渦巻いているので、結構渋る人もいるんです。他の質屋に変えたりとか」
客「へぇ……」
店員「その点に比べて、お客様はものに欲や執着がないので、珍しくてつい」
客「……あの、あともう一つ」
店員「あぁーすみません。進めましょう。えーと、最後は時計ですね」
客「はい、これは良い値が付くかなと」
店員「ははは、自身ありありですね」
客「ま、まぁ」
店員「でもその通りです。これはトーセ―が出した2020年の限定モデルです。受注生産タイプなので、中々数が少ないですよ。」
客「ということは」
店員「はい、市場ではしっかり値打ちが付きます。お値段が……こちらです」
客「はい……え?…………ゼロ?」
店員「えぇゼロです」
客「え……そんな、店員さん今、良い値がつくって」
店員「はい、そう申し上げました」
客「なら……」
店員「私は、こういいました。市場ではしっかり値打ちが付くと。ですが、私にとっては値打ちがつく要素はないんです。だってこれ、私のですから」
客「!?」
店員「先日空き巣に遭いましてね、家にある金目のものが盗まれたんです」
客「……」
店員「あなたが最初に来た時、妻と同じものでもしやと思ったのですが、この時計で確信しました。限定モデルは、生産順に番号が付くんですよ。173……。それが僕の時計の番号です」
客「っ……!!」
店員「諦めた方がいいですよ」
客「……は?」
店員「念には念を、あなたがここに質を出したときには通報しました。もう外にいるかと」
客「…………くそっ……!あともうちょっとだったのに!」
 
サイレンの音。

 
店員「……はぁ、私の思い出で少しは改心するかと思いましたが、そうですよね、空き巣に入る家の人間がどんな人間なのか、限定モデルに番号があるなど、思い入れというものに、あなたは縁がないのですから、残念です」
 
サイレンの音、鳴り続ける。
 
完。

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