運命をひらく(致知1月号感想文)

「運命をひらく」というタイトルを見た瞬間、私の脳裏に思い浮かんだ授業がある。

『運命は変えられる』という授業である。7つの習慣の授業開発に取り組んでいた頃に作った授業だ。

授業の冒頭では、「運命は変えられるか」という問いを投げかけた上で、宿命と運命の違いについて例を挙げて説明。

渡邉尚久として生まれてくることは自分で変えられるか。これは変えられない。自分の力で変えられないことを宿命といい、ある意味、これは受け入れるしかない。

では、渡邉尚久としてどう生きていくか、これは自分で決められる。これを運命と言う。運命とは、命を運ぶと書く。誰の命か。そう、自分の命である。自分の命をどう運ぶのかは自分で決められるのである。
 この時の授業は、この後、運命が私たちの思考から出発、それが行動となり、やがて、習慣、性格、人格となっていき、私たちの未来、すなわち運命を創っていくのだという過程を説明、思考が変われば運命が変わるといういくつかの事例を紹介し、最後に、まだ白紙のキャンパスにどんな未来を描いていくかは自分次第なのだ、として授業を終える。

 その同時、「運命はひらくもの」という発想がなかった。今なら、間違いなくそこに今月号の要素を取り入るだろう。

 さて、私が今月号のタイトルを見た時に、もう一つ思ったことがある。それは「ひらく」にどんな漢字をあてるのか、ということである。思い当たる漢字が2つ思い浮かぶ。

 ひらくの開くなのか、それとも開拓の拓の拓くか。
 例えば、江原啓之氏は「“運命を拓く”やはり、耕していかなくてはならないんです。“本当に改善したいんだ”というエナジーが集まってこないとダメ。分析して、諦めるべき事は諦める。その前にやるべき事はやる」とあるインタビューで答えている。

 もう少し調べてみると、「開く」と「拓く」の違いにもたどり着く。
 「開く」は「閉じているものを開く」、「間隔が広がるなど、場広いシチュエーションで用いられるのに対し、「拓く」は「新しいことを始める」、「未知の領域に挑む」という意味合いに特化している点が大きな違いだと。スポーツの試合で点差が「ひらく」場合には「開く」を、運命を「ひらく」ときには「拓く」と使用するのが正しい活用例だとも書かれていた。

 しかし、しかしである。
 私は、どちらの漢字もあるのではないかと思う。

 運命は自分で創ることができると言っても実は誰にでもできるものではないと考えている。なぜか。運命とは実態もなく見えないが、実はそこには扉があり、生まれてきた時にはそれが閉じていて、あることが起きるとその扉が開くのである。その段階が運命を「開く」である。

 では、まず、運命の扉を開くためには何が必要なのか。

 1つは、自分の人生は自分の責任において創るものであると自覚すること。

 1つは、自分は運がいいと思えること。

 1つは、日本人であることを自覚すること。

 人のせいにする人に未来が開けるはずがない。
 また、どんな状況でもなんとかなるだろう、自分は運がいいのだと思える楽観的な考え方も未来への可能性を広げるスイッチとなる。
 そして、なによりも忘れてはならないのは、日本人であるという自覚である。
 松下幸之助氏が以前、「日本人の渡邉尚久である」という自己認識を持っている者の中から成功者が出ているとおっしゃっていた。まさにこのことである。
 この3つのことが自分の運命の扉を開くことができ、次の段階の「拓く」へ進むことができるのだと思う。

 次の段階の「拓く」は、「誰も踏み入れていない領域に挑戦する」という意味である。この拓くができる人には様々な共通項があるが、大きな3つを挙げてみたいと思う。

 1つは、考えていることが壮大である、スケールがでかい、ということである。
 我々は考えている範囲の中でしか何事も実現しないと言われている。だとしたら、つまらない制限を自分にかけず、思考の枠を広げ、それが実現するかどうかはわからないが、大きく描いた方がより実現しやすくなる。

1つは、世のため、人のためという大義をもっているということ。
 運命を拓こうとしている人は、自分のことだけでなく常に意識が外に向いている。今月号の中にも、「200年後の子孫、7代先の子孫まで美しい地球を残すために今、私たちは何をすべきかを考えよう」と活動をしている人がいることを知った。
 やはり、「何のために」活動をするのかという目的が大切なのだ。企業や学校にとっては理念にあたる。

 そして、最後にもう1つ。それは一緒に活動する仲間を大切にすることだ。
 当たり前だが、何事も一人では成し遂げることはできない。特に、リーダーという立場にあれば、一緒に活動する者を一人残らず大切にできるか。家族と同じような感覚を持って愛することができるか。これに尽きる。仲間を大切にすることで、場合によっては、そばにいる者の運命も拓くことさえできるのだ。

 ある占いで、私の今年は、覚悟を決める年だと書かれていた。ちょうどよい。

 100年先、200年先の日本を考え、今の日本人だけでなく、これから先、生まれてくる日本人のために、この節目にあらためて自分は何をすべきなのかを考えたい。

 それが、渡邉尚久という自分の運命を拓くことになるのだから。

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