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「3.11を改めて考える」第8回・ゲストプロフィール

『わたしの、終わらない旅』坂田雅子監督

坂田雅子監督

ドキュメンタリー映画監督
1948年、長野県生まれ。
AFS 交換留学生として米国メイン 州の高校に学ぶ。
帰国後、京都大学在学中にグレッグ・デイビスと出会う。1970年結婚後、夫のフォト・ジャーナリストとしての仕事を手伝う。
1976年から2008 年まで写真通信社に勤務および経営。
2003年、ベトナム帰還兵で写真家だった最愛の夫・グレッグの突然の死をきっかけに、夫の死が枯葉剤のせいかもしれないと聞き、まさに藁にもすがるような気持ちで、枯葉剤について調べ、映像制作を一から学び、枯葉剤や核についての映画製作をはじめる。
カメラを手に世界を旅しながら描いてきたのは、戦争や原発事故など大きな出来事に翻弄されながらも、現実を受けとめ、時に抗って生きる人々の姿。彼らとの出会いの中で「私」の小さな一歩が持つ意味に気づき、映画製作の傍ら様々な活動も続けている。

<映画>
『花はどこへいった』(2007年)
『沈黙の春を生きて』(2011年)
『わたしの、終わらない旅』(2014年)
『モルゲン、明日』(2018年)
『故郷を追われてー核被害と温暖化のはざまで生きるマーシャルの人々』(2021年)
『失われた時の中で』(2022年)

<受賞歴>
毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞、パリ国際環境映画祭特別賞、アースビジョン審査員賞などを受賞。(「花はどこへいった」)
仏・ヴァレンシエンヌ映画祭にて批評家賞、観客賞をダブル受賞、文化庁映画賞・文化記録映画部門優秀賞に選出。(「沈黙の春を生きて」)第40回日本映画復興奨励賞受賞(「失われた時の中で」)等、国内外で評価を得ている。

<著書>
「花はどこへいった 枯葉剤を浴びたグレッグの生と死」(2008)
「女たちの3・11 ~それでも、私は命を繋いでいく」(2011)(共著)

<様々なご活動>
2010年にたびたび訪問したベトナムの枯葉剤被害者支援のために「希望の種」という奨学金制度を設立し、子どもたちの教育を支えてきた。
2020年NPO気候危機対策ネットワークの起ち上げにかかわり、副代表理事に就任。
枯葉剤について外国人特派員協会にて、記者会見
枯葉剤と放射能の共通点をみつめ、来日した枯葉剤被害者を福島の被害者につなげるなど。
地元、群馬県みなかみ町で仲間と「利根沼田市民エネルギー」を立ち上げ、環境問題に関する講演会や上映会を開催している。

<メッセージ>
ドキュメンタリー映画を作ろうと思い立った時、私は55歳でした。何の経験もないところから始まった映画作りでした。
グレッグは彼の死によって、私に新しい生を与えてくれたのかもしれません。いくつかの小さなドキュメンタリーを作ってわかったことは、小さな私にもできることがある。いや、組織に頼らない小さな私だからこそできることがある、ということです。
戦争や、国際政治など世界の大きな出来事の前につい立ちすくんでしまいますが、諦めずに一人一人がもち堪えるところに希望はあるのだと思います。

放射能も枯葉剤も根にあるものは同じだという思いです。私たちにできることはわずかですが、諦めずに。。と思います。

上田紘治 さん(八王子平和原爆資料館 共同代表)

上田紘治さん


1942年広島市生まれ。三歳の時に可部町から現在の平和公園内(元柳町)で入市被爆。八王子平和・原爆資料館共同代表。

高校卒業後、自動制御・計測器メーカーに就職のため東京へ。以来、定年まで勤める。
1982年、第二回国連軍縮特別総会への参加者に選出されたことをきっかけに、被爆者運動・平和運動に生涯関わろうと決意。(40歳)

1998年 被爆者手帳取得
1999年 地元八王子市原爆被爆者(八六九会)の会事務局長・東京都原爆被害者団体協議会事務局次長に就任。
2003年 ワシントンDCで教会、大学などで被爆の実相を話す。
2005年 NPT会議へ参加しニューヨーク各地で被爆の実相を話す。
2005年 核兵器製造している街ロス・アラモスの労働者、退役軍人などに被爆の実相を語る。
2005年 八王子の被爆者の証言集を出版。市内のすべての小中学校に寄贈。
2005年 NPT会議に参加しニューヨーク市民に被爆の実相を朝、昼、夜と話す。訪問先には、マンハッタン計画の技術部門責任者である、オッペンハイマーの母校もあり。
2010年 NPT会議に参加しニューヨーク各地で被爆の実相を話す。
2013年 体調悪化をきっかけにフリーで活動。
2014年 在日バングラデシュの方と協力して(3年かけて・・カット)被爆体験集ベンガル語・日本語併記「広島の声」(広島の被爆者17人の証言集)(東洋書店)を自費出版。
2016年 中国語・日本語併記「広島・長崎 今伝えたい被爆の実相」(広島の被爆者9人 長崎4人の証言集)(天地人企画)を自費出版。
2016年 八王子の被爆者9人が小・中学校や平和展などで「証言」している姿を収録した証言DVDの作成
2016年 伊方原発運転差止広島訴訟の原告になる。
2018年 ピースボート「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」おりづるプロジェクト (計106日間)に参加。22か国訪問。その後も同プロジェクトでオンラインでの証言も続けている。
2021年6月 『核兵器廃絶への思いー再び広島・長崎を繰り返すなー』を出版。
あらゆる機会
に、被爆の実相を伝え続けて現在にいたる。

高橋博子さん(アメリカ史研究者・奈良大学教授)
核に関わるアメリカの議会資料などを丹念に分析されてきた研究者
兵庫県西宮市生まれ(大阪出身)
1991年、同志社大学文学部文化学科卒業
2003年、同志社大学文学研究科より博士号(文化史)取得。明治学院大学国際平和研究所研究員、名古屋大学法学研究科研究員などをへて2020年4月から現職。

日本アメリカ史学会、日本平和学会、文化史学会、日本国際政治学会、同時代史学会などに所属。日本平和学会会理事。日本平和学会グローバルヒバクシャ分科会共同代表。広島平和記念資料館資料調査研究会委員、第五福竜丸平和協会専門委員。

著書
『新訂増補版 封印されたヒロシマ・ナガサキ―米核実験と民間防衛計画』 (2012年、凱風社)
共著編著
『帝国と市民』(2003年山川出版社)の「核時代における国家と国民----原爆医療情報と民間防衛」章執筆
『隠されたヒバクシャ―検証=裁きなきビキニ水爆被災』(編著、2005年、凱風社)など。
『ヒバクシャと戦後補償』(編著 2006年 凱風社)
『核時代の神話と虚像』 (編著、2015年、明石書店)
『核の戦後史:Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実』(共著 2015年、創元社)
『核開発時代の遺産―未来責任を問う―』 (共著 2017年、昭和堂)
『核と放射線の現代史』 (共著 2021年、昭和堂)
『歴史はなぜ必要なのか「脱歴史時代」へのメッセージ』(共著 2022年、岩波書店)
『Living in a Nuclear World From Fukushima to Hiroshima』 (共著 Routledge: London, 2022)
現在の研究テーマ グローバルヒバクシャ(世界のヒバクシャ)研究

2023年は第二次世界大戦終結から78年たっていますが、現在ますます戦争の実態解明が急がれます。また、核開発の中での被ばく者、広島・長崎への原爆使用による被爆者、核実験による被ばく者、原発事故による被災者の問題の多くは隠されてきました。私は主に米国立公文書館などで収集した史料や、被災した人々の証言を検証することにより、そうした核による被災の実態解明を進めたいと思います。核開発の中で被災している人々は、旧植民地であったり先住民の人々が多く、世界史的視点での構造的暴力の解明が大事だと思います。

大事にしている言葉:過去の遺産は未来に実りをもたらす種(米国立公文書館)
おすすめ書籍:ハーバート・ノーマン『クリオの顔』

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