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社会人こそ華の金曜日

 大学1年生の春、卒業した高校の友達とばかり遊んでいる友人を冷めた目で見ていたくせに、社会人になって、
「大学の友達に会いたいなぁ」
と思う夜が多い。なんだか遠くに行ってしまった気がして、写真を見返す。記憶色というのは実物より鮮やかに錯覚するんだってよ。まるでずっと充実してたかのように改ざんしそうになるところで、論文なんぞ二度と書くか、と現実世界に戻ってくる、週末。

 華の金曜日ってのは社会人が生み出した言葉だよね。学生のうちはずっと金曜みたいなもんなんだから。社会人初の華金を堪能しようと、同期2人と飲みに行く約束を立てた。懇親会は禁止と言われた会社から3駅離れることとし、有楽町に降り立つ。

 配属先が発表され、クラス替えに一喜一憂する体育館を高校生ぶりに見た。それから、1年後の自分へ手紙を書く時間が設けられた。私はこういう手紙の内容をちょっと覚えてしまっているタイプなので、ちゃんと1年後に忘れていることを願う。
「みなさんきっと忘れるでしょうから、今の思いを書いておいてください」
教育係の8年目の先輩社員は、研修中かなり厳しく指導してくれたので、研修最終日は少し寂しかった。

「配属先の先輩方から、毎年のように僕のところにクレームが届きます。
僕はみなさんの生活指導の先生ではありません。
みなさんの良いニュースを待っています。」

 この人に迷惑はかけたくないなと、ビール片手に塩辛を突きながら、思っている。

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