14.04.2023 「バーバリー」
本年度も育成カテゴリーを担当することになりました。育成カテゴリーといっても少年やジュニアユースではなく、大学生の中でのチームの一番下のカテゴリーということではありますが、結果よりも育成をメインに置いているので育成カテゴリーと呼びましょう。
というわけで育成カテゴリーを担当する際に気をつけていることを何点か書き留めておこうと思います。
MISSION:「成功より成長」
MISSIONと書くとビジネスの分野のようで大業ですが、言ってしまえば達成したいことに相当します。選手をより成長させて上のカテゴリーに送り出す。これが育成カテゴリーの使命です。
そして肝心の内容ですが、なんだか凄くありきたりな文言のような気もしますが、意外とコレができない集団は多いです。要するに、目の前の事象が上手くいったかどうかを気にしてしまいます。
育成カテゴリーはやはり、年単位のスパンで物事を考えて、最終的に選手が大成してくれればいいという度量をまず指導者が持つべきでしょう。その上で結果に拘るよりも選手の成長を第一に考える理由はふたつあります。
ひとつは有望な選手が、結果を重視した指導法によって、怪我を負い選手生命が短くなるあるいは逆説的に結果に貢献できなくなるリスクがあるということです。
選手が成長するというのは、基本的には良い習慣を獲得し、悪い習慣を無くして行く(=アンラーン)していくことです。結果に拘泥しすぎた指導は多くの場合、悪い習慣を身につけることになったり、悪い習慣の改善を放置してしまいます。
もうひとつの理由は、上のカテゴリーに上がる見込みが低い選手にもプレーする喜びを授ける必要があるからです。サッカーをプレーする喜びは何種類かあると思いますが、そのうち大きなウエイトを締めているのが、勝負を楽しむ喜び、いいプレーができた喜び、自分が上手くなっている喜びの3つだと思います。
育成カテゴリーでは選手たちのモチベーションを勝敗に直結した喜びではなくて、上手くなっている実感から保証していく必要があると思います。
なぜなら、彼らはプロフェッショナルではないので、結果に対する責任は負っていません。だとしても、勝負事に負けたくないというのはフットボーラーの本能です。だから、ことさら強調する必要はないのです。
さらに言うならば、結果というのはどんなに頑張っても付いてくるかは不確定なものです。そんな曖昧なものに左右されるモチベーションというものは、チーム運営にとってあまり好ましいものではありません。
このミッションに照らし合わせて、私はトレーニングのことを「ラボ」と呼んでいます。すなわち実験室ということです。ラボでは失敗することが許されています。むしろ失敗することが仕事のようなものです。ただし、科学実験と同様に、何かしらの仮説を持ってトライすることが必要です。結果として仮説が正しかろうが、否定されようが、意図を持って行なった点に意義を見出しているのです。このような失敗を「創造的失敗(creative failure)」と呼びます。
以上のことを踏まえて、私は育成段階での教え方は、「守破離」ではなく「破破離」だと考えています。
最初の「破」は失敗してはいけない、となっている固定観念を破壊し、心理的安全性を確保し、失敗してもいいと思わせることです。
次の「破」は失敗できるようになってきたところで、今まで常識だと思っていた悪い習慣、あるいは無意識で行っている悪い習慣を破壊してアンラーンすることです。
最後の「離」は選手たちが失敗することを恐れず、良い習慣を獲得し、自律し自立した選手になることで、上のカテゴリーへあるいは決断できる選手としてひとり立ちすることです。これを含めて私は「破破離」つまり「バーバリー」と呼んでいます。
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