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指導者ログ:上半期反省 (10.08.2023)

本格的に指導者になってからのここ半年の間、様々な取り組みをしてきました。その上で、出た感想と反省を書いていこうと思います。

上半期取り組んでみたこと

・パスコン、ロンド、ミニゲームをしない

今季は自らのしばりとして、パスアンドコントロール、特に制約のないボール回し、そして練習の最後に特に制約のないゲーム形式のトレーニングをしない、というのを今季の自分ルールとして取り組んできました。もしこれらのトレーニングをするのであれば、4号球で行うという風に決めて、選手には常にストレス下の状況でプレーしてもらうように心がけてきました。以上の3つのトレーニングは業界の中ではポピュラーである一方で、選手がこれまでに数多く取り組んできたトレーニングであることからトレーニングの空気感がダレやすいという側面がありました。それを踏まえて、自らのしばりをやってみた結果として良かったのは、練習に常にトレーニングを理解しなくてはいけないという緊張感が走っていました。

その一方で、個人のボールフィーリングであったり、個人のデュエルという部分でいうと、選手たちの成長速度に翳りが見られました。なぜなら、技術に特化したトレーニングや最も実践的なデュエルの機会を得られるゲーム形式のトレーニングをしないことによって、その領域での成長機会は失われしまったのでしょう。ですが、個人のベースの能力をアップさせるトレーニングは選手やチームの成長に必要な部分であると認識すると同時に、そこまで手を出しているとトレーニングの時間が足りないというのも事実です。特に1セッション90分で収めるという制約でやっていると、時間の都合上個人にフォーカスを当てることはかなり難しい部分が多いです。そういった意味で自分で自分を鍛えるサイクルに乗せて自走させないことには個の強化は難しい部分が多いというのが正直な感想です。

もちろん、最低限としてどのようなトレーニングであれ、デュエルの機会が増えるようなインテンシティのあるトレーニングへ繋がる雰囲気づくり、トレーニングのオーガナイズをしなくてはいけません。

失敗と反省

・フィジカルコーチが必要

前述の個の育成という内容にも繋がりますが、かねてから私の所属する大学サッカー部にフィジカルコーチをお金を払ってでも導入するべきと主張してきました。やはり素人が多少勉強した程度で指導するフィジカル強化には限界があるというのが残酷な現実で、プロフェッショナルの力を借りなければこれ以上の成長は見込めないだろうという感触があります。餅は餅屋というように、至極当然のことですが、フィジカル強化のプロフェッショナルを入れることがフィットネス向上には不可欠だというのが、今シーズンを通して再度痛感させられました。特にコーディネーションという意味での身体の使い方という部分で専門的な指導を受けないことには、それらの問題の根本的な改善は難しいというのが個人的な所感です。

・組織は指導者の力量以上に育つことはない

これは全ての指導者に当てはまることであり大変心苦しいことに自分も当てはまることなのですが、組織はリーダーの力量以上に成長することはありません。大抵の場合、組織が勝てないことの原因の多くは組織文化に起因しています。そして、組織文化というものは、少なくともある一定の量までは指導者の力量によって変化させることが可能です。例えるならば、組織文化というのは大きな袋のようなもので、組織のメンバーのエネルギーを入れることができる入れ物です。なので組織のメンバーに才能や努力といった大きなエネルギーを注ぎ入れてもらえればもらえるほど、組織は強いエネルギーを持って躍動するのです。
ところが、組織のメンバーには、ふつうプライベートやその他の事情が当然ながらあり、無条件に組織へ最大限の献身を果たしてくれないものです。そんな中でも良い組織文化というのは、メンバーに献身を納得的に要求することができ、多方面に流出しそうなメンバーのエネルギーを組織内にとどめておくことができるのです。だからこそ、良い指導者は良い組織文化を作り上げ、メンバーからエネルギーを引き出し組織に留め置くことで、組織のエネルギーの絶対量を増加させることができるのです。ゆえに、組織はリーダーの力量以上に成長しないという風に断言することができるのです。
基本的に誰かを指導するというのは、上からものを言っても納得してもらえるだけの学びを指導者自身が積み重ねているという取り組みの蓄積が、自身の言動や行動から滲み出て信頼してもらえるものです。今年は大学院受験を言い訳に、自己研鑽を怠っていたというのが正直なところで、良い文学、良い映画、良い芸術に触れ合い続けることもできていませんでしたし、フットボールに関する大量のインプットを確保し続けなければならないと深く反省しています。(特にバスケとラグビーに関する知識は全く更新できていないというのが実情です)

・時間を守る

時間は守ったほうがいいです。信頼を失います。今年は時間に大分ルーズに過ごしてみましたが、あまり選手は時間に適当な指導者に寛容ではないようです。そして、一度失った信頼というものは容易には取り戻し難いです。なので時間は守りましょう。
また、練習開始前にグラウンドに行って、選手の様子を見ることに大きな価値があるので、練習直前にグラウンドへ行って慌ただしくオーガナイズを作ることは選手を見る機会を失ってしまいます。例え人生が忙しくても勝ちたいのならグラウンドに早く行くべきですし、中途半端にしかできないのなら指導者をやめた方がいいと思いました。現在私は中途半端なので、中途半端で無くなるまでしばらく指導者をやめようと思います。

・過度な精神論

私は精神論が大好きです。「正気は心眼にあり」ということです。エナジーとパッションという語を数多く使っていたら、選手に当て擦られました。まぁ、それはいいことなのですが

が、あまり精神論を強調し過ぎても、精神論で選手を焚き付けてエネルギーを引き出すのには回数制限があります。精神論を使うタイミングは見極めが必要でしょう。

今までは「理不尽が人を育てる」という指導方針でやってきましたが、Z世代の子たちには響かないようなので、このポリシーはやめようと思います。今の時代、説明して納得してもらう方が選手たちは動いてくれるようです。

・創発性を引き出すことができていない

最近の悩みは、選手たちが指導者の想像を超えてこない、ということです。

第一の原因は、問いかけの中で選手からソリューションを引き出すフリーズコーチングができていないことにあると思います。それはつまりトレーニングのオーガナイズと、コーチングをセットで計画できていないことにあると思います。場当たり的なフリーズで、指摘されるかもしれないという選手の心が、創発性の妨げになっている可能性は重々考えられます。

厚木の指導者としての弱み

・審判とのコミュニケーションが苦手

先日のリーグ戦で相手選手の報復行為がありながら、退場にならないということがありました。相手校が審判を出しているとはいえ、そのような状況を受け入れずにもう少し審判に抗議して交渉するべきでした。当たり前のことですが。審判団とコミュニケーションをして交渉をすることもサッカーの一部ですから、その点については指導者の未熟さがゲームに大きな影響を与えてしまったなと深く反省しています。指導者が矢面に立ってくれることで、選手たちも安心できるという側面は必ずあるはずなので、ネゴシエーションという面での成長をしなくてはいけないと痛感しました。

・ボランチ脇へのスペース管理が苦手

私が仕込むのが得意な戦術は、前線からのゾーン・プレッシング、プレッシングからのショートカウンター、そしてチャンネルランを多様した動的な崩し、あたりでしょうか。逆に、苦手なところでいうと、ミドルブロックの組み方、ミドルサードのボール保持局面などだと思います。特に今季前半、課題として出たのがプレッシングからミドルブロックへの移行時に、ボランチ脇のスペースを使われてしまうということが多かった点が挙げられます。これははっきり言って前線プレッシングをかけるチームにとって致命的な欠点です。しかし、リーグ戦で繰り返しこの事象が出ていたことを見るに、やはりこの点を戦術的に整備することが苦手なのだと痛感させられました。

この点を修正する際にいつも似たり寄ったりなコーチングのパターンしか持たず、その結果修正がかかっていないことを見るに違うコーチングのアプローチを持つべきだということは明白です。あるいは、ピッチを6等分にする線を毎回引くことで視覚的にタスクをわかりやすくする必要があるのかもしれません。

・カオス型のチームが苦手

今季取り組んだ、スカウティングを行い、分析ミーティングを行ない、徹底的な対策練習をするというスタイルは、ハマったときの強さは私自身も驚くものがありました。それと同時に、相手チームがスカウティング以外のことをしてきたときに、対応できずに後手に回ってしまうという脆さがあり、そのような試合で多く破れる結果となりました。さらにいえば、自分たちで主導権を握るというより、相手の強みを消すことでゲームを作ろうとするアプローチそのものが消極的と言えば消極的でした。

そういった意味で、スカウティングがはまりづらい、参考になりづらいカオス型のチームは、私の苦手とするチームでした。盤面を壊す手という意味でのパワープレー、あるいはこちらがゲームを消しに行ってる時間帯に、相手もゲームをある種捨てることで試合を塩漬けにしてくるとやはり苦しいというのが正直なところでした。

意図的なカオスを作る、というのが指導者としての私の信念ですが、ある程度ストラクチャーを作ってゲームの主導権を「つくる」フェーズも持っていないといけないと感じました。

・ボール奪取後のポゼッションへの安定が苦手

私は指導者として、ボールを前線でフォアチェックして奪い切るプレッシングからのショートカウンター戦術を軸とすることを得意としてきましたが、試合中においては、ボールをいい形であるいはいい場所で奪いきれず、ショートカウンターに移行できなかった際にボールをリサイクルする必要があります。しかし、ポゼッションを安定させるための戦術導入があまり上手くいかなかった、というのが今シーズン上半期の所感でした。

というのもボール奪取後の手段の主なものとしては次の3つが挙げられると思います。
(1)奪う前に見ておき、奪ったボールをダイレクトパス(あるいは数タッチ)で解放する
(2)奪ったボールを近くにいる選手にワンパスして、その選手から解放する
(3)奪ったボールに対するゲーゲンプレスを個人のドリブルで剥がして解放する

もちろん他の選択肢もあるでしょうが、基本的にボール奪取後の局面で求められる視点というのは、「相手のゲーゲンプレスをいかに回避するか」という点です。これに対する第1のアンサーは、「奪う前に奪った後のことを考えて認知しておく」ということになると思います。すなわち、いい奪い方をすることで、ボール奪取後にゲーゲンプレスを喰らうことを回避することです。具体的にいえば、インターセプトしたボールをそのままダイレクトでパスすることができれば、そのまま攻撃局面にスムーズに移行できます。が、これはあくまで理想論に過ぎず、実際には、(2)や(3)のオプションの行使の方が試合中には求められることが多いでしょう。

これを考えるに、選手の個の力と呼ばれる部分は、ボール奪取後再奪取されないという点がかなり大きな部分を占めており、個の力を重視される原因も多くはここにあるのでしょう。したがって、個人でスクリーンして、ボールを晒さずに、ボールを解放できるというスキルはやはり軽んじてはいけないのでしょう。

・疲労という変数を軽視する

こと疲労という変数を軽視してしまうのは、可視化が難しく数値化できないパラメータなのが大きな理由だと思います。また、一緒にプレーしていないということも、疲労を上手く掴めないことに拍車をかけています。疲労というものを科学的に管理する術を持たないのがよくないのですが、慢性的な疲労、1週間の蓄積の疲労、ゲームの中での疲労を、それぞれ別のパラメータとして見ることができていないので選手の疲労の認識が上手く合っていないことがあります。加えて、特に大学生選手がプロフェッショナルのマッサージを受けるわけでも、体調管理をするわけでもないので、疲労がここまで溜まるのかというのが率直なところです。かといって、怪我を防ぐためにトレーニング強度を落とすというのは本末転倒ですが、そうせざるを得ない側面もあるということには指導者として留意が必要でしょう。

見えてきた形

・スカウティングしてゲームに臨むスタイルの有効性

今期のリーグ戦にスカウティングをして分析し、スカウティングの映像ミーティングを実施、1週間戦術トレーニングを実施しました。結果から言えば、スカウティングを行い、映像ミーティングを行うことに利得がかなりあると感じました。繰り返しになりますが、スカウティングを行いゲームプランがハマったときはかなりゲームを優位に進められることも確かです。

が、スカウティングを行う際に、次の数点の反省がありました。

・自分だけで映像分析を行わない=複数の視点を確保する

自分ひとりで映像分析を行うことには、かなりのリスクが付きまといます。なぜなら、観察者のバイアスが常に分析に付きまとうからです。分析者が見落としやすい死角は、そのままゲームプランに死角となって残ってしまいます。実際に分析チームを立ち上げるとまた新たな問題点が生じるかもしれませんが、現実的にはリーグ戦に所属するチームの数の分析官が必要なのではないでしょうか。例えば、関東では12チームが所属ですから、自チームの分析も含めて、12人程度の分析スカッドが必要になるのではないでしょうか。

また、映像は複数の分析官が作成したものを組み合わせて作るよりも、分析官が各自で作る方がストレスがなくてスムーズだと思います。仮に口を出すにしても映像を一緒に見た後にして、映像を作る側のやる気を削がずにフィードバック型で改善していく方が分析官の実践の機会を提供できるので有意義だと思います。その代わりといってはなんですが、映像ミーティングは15分程度を目安に、長くても30分程度、時間は必ず練習前の方が練習の意図を落とし込みやすくて効果的です。あと、映像を各自の端末で見るより、スクリーンを用意して見せる方が効果的に感じました。データをとって検証したり、論文を参照したわけではないですが。

・直近の数試合を見る=できれば全試合見る

自身がボランティア指導者ということもあり、なかなか試合映像を見る時間を捻出できませんでしたが、最低直近3試合は見た方がかなりいいものができるというのが感想です。理想的には、先述の通り所属チームの数だけ分析官をつけ全試合の分析を行なって、ビエルサのようにデータの蓄積を図ることが理想的ですが、学生スポーツでそこまでできるかというのは怪しいところです。直近1試合しか見ないでスカウティング映像を作ったこともありました。

が、勝つためにやれることを全てやらないで、勝ちたいとだけ宣うことほど妄言じみたこともないのもまた確かです。

・4局面のスカウティングを行い、4局面の分析映像とゲームプランを作る

スカウティング映像は理想から言えば、4局面それぞれの特徴を把握するべきです。つまり、組織攻撃、組織守備、ポジトラ、ネガトラのそれぞれの特徴と弱点を把握し、どの局面に苦手な部分が多く詰まっているのかを把握するべきです。特に看過しがちなのが(私がかもしれませんが)、ボール奪取後に速攻を仕掛けるのかボールをリサイクルするのかの基準がなんとなくチームごとにどのエリアからは速攻、どのエリアからはボール保持という線が必ずあるはずなので、その点を正確に推察できるかが指導者の機微が出るところなのでしょう。

意識的にやらないと、弱連結ばかり探して4局面の特徴を押さえるのを私は忘れがちなので気をつけなくてはいけないところです。

・ゲームプランは4つ作る

私のよくない点として、プランA偏重になってしまうというところがあります。現実的な要求としては、コンティジェンシープランとしてのプランは複数個用意されてるべきです。つまり、相手が修正をかけてきた時にある程度予測の範囲内で済ませることができるようにしておく必要があるのです。修正を最も効かせやすいハーフタイムの時点でも、大雑把に言えば、同点、リード、ビハインドの3つの状況が想定されるわけで、それぞれに応じたパターンを持っているべきでしょう。

当初のメインゲームプランのほかに、メインが機能しないときや疲労管理のためのプランB、どうしても1点欲しい時のためのファイヤーフォーメーションと、リードしている時のためのバスの駐車術は持っておくべきでしょう。どれくらいプランをあらかじめ仕込むと選手の脳がオーバヒートするのかわかりませんが、最低4つのプランは必要だと思います。というのも飲水タイムが主流になりつつある今、サッカーは限りなくクォーター制に近づいてきている思うべきでしょう。(プロは若干違いますが。)各クォーターごとに戦術を差し替えることは今後の戦術トレンドになるのではないでしょうか。(もう、フットボリスタとかが特集してたらごめんなさい)

・プレスとビルドアップの形最低4パターンずつ仕込む

プランが4つ必要と言いましたが、時間帯に応じてビルドアップのパターンは4種類使いこなせ必要があるでしょう。1試合通して同じパターンであれば、相手に適応されてしまいますから、各時間帯ごとにコアになるビルドアップのパターンを持っておくべきでしょう。戦術を構想する際には、当然自分たちと同じことを相手がやってくるだろうと考えるべきですから、それに応じたプレスパターンも最低4種類は必要ということになります。デ・ゼルビやアルテタの戦術が流行るにつれて言われ始めましたが、サッカーのバスケ化すなわちプレスとビルドアップのパターン化とそこからくる自動化は今後必然の流れでしょう。

・交代メンバー後のスカウトもする

常識的な話ですが、相手が交代攻勢でどう戦術を変えてくるかも認識し対策する必要があるでしょう。交代パターンとそれに応じた戦術の変化もゲームプランの中に盛り込むべきです。

・交代後のゲームプランを仕込む

故に、自チームも選手交代後どのような戦術を用いるかを1週間の中で落とし込む必要があるでしょう。特にファイヤーフォーメーションとパーク・ザ・バスについては、ある程度定期的に練習する意義が十分にあるのではないでしょうか。

・ポリバレントな選手をベンチに残すこと

ここまでは戦術の柔軟な使い分けについて話してきましたが、戦術の柔軟な使い分けにはポリバレントな選手、つまり複数ポジションをこなせる選手の存在が不可欠です。スペシャリストな選手というのは特徴的な武器がある一方で、チームの戦術を制限する作用があります。そういった意味でポリバレントな選手は「使いやすい」のですが、スタメンでポリバレントな選手を起用しすぎて、ベンチにポリバレントな選手を置かないと、試合の後半、特に負けている状況でチームに可塑性が出しづらく修正をかけづらいという現象が起きます。そういった意味でポリバレントな選手をベンチには置いておきたいのが指導者の本心ですが、実力を加味したときに「ベンチワークのためにベンチにいてくれ」と選手に言うのも難しい話です。

・24パターンのセットプレー

ここまではフットボールにおける4局面にフォーカスを当ててきましたが、セットプレーもフットボールの重要な一部です。今シーズンはある選手に協力してもらいながら、1週間に1回セットピースのトレーニングを行い、年間で24パターンのストックを作ることを目標に取り組んできました。これはかなり有意義だと思います。多くのチームが試合前にセットプレー練習を行いますが、年間を通じてストックを作っておくことが、試合の中でパターンが尽きず有効な戦術の一部になることは確かでしょう。

今後のサッカーの展望

・これからのトレーニングデザイン

これからのトレーニングのデザインは年間を通して計画されたものでなくてはいけないですが、特に今シーズン痛感したのは「1週間1テーマは少なすぎる」ということです。これまでコンセプト・トレーニングと称して1週間ごとのトレーニングテーマを設定してきましたが、1週間に1コンセプトずつしか習得できないのであれば、成長スピードはあまりにも遅いと言わざるを得ないでしょう。1日のテーマの中にも、テーゼとアンチテーゼを設定し攻撃と守備が相互作用的に成長することを企図するべきです。しかし、それ以上に週刊テーマの中で、攻撃と守備両方の要素を導入するべきですし、コアとなる4曲面のひとつを集中的にフォーカスするとしても、残りの3局面の要素を触れないということはもはやあり得ないことなのかもしれません。その分だけ練習の複雑性は増しますが、どこかの局面に限定すること自体が要素還元的なのかもしれません。できるだけトレーニングがゲームに近いことをやはり指導者は大切にするべきなのでしょう。

トレーニングの1週間の計画も、週末のゲームプランとスカウティング映像とフリーズの際のコーチングとトレーニングのオーガナイズが、週間の表と裏のテーマと密接に関連している必要があるでしょう。以下に1週間のモデルケースを書いてみます。

月曜日:OFF
火曜日:映像ミーティング①(先週の反省/週末のスカウティング①)
    TR(コンセプトの導入/有酸素負荷)
水曜日:TR(スモールグリットでのコンセプトの発展と実践/筋力負荷)
木曜日:映像ミーティング②(プランBとセットプレー)
    TR(ラージグリットでのチーム戦術の確認/循環器系負荷)
金曜日:TR(ミドルグリット/ユニットの確認/スピード系負荷/セットプレー)
土曜日:TR(フィットネス調整/戦術確認/前日ゲーム)
日曜日:リーグ戦

映像ミーティングは週の頭に実施すると、週の後半には選手の頭から抜けてしまうという点があります。なので理想的には週2回に映像ミーティングを分割して行うんのが理想的なのではないでしょうか。それとは別に、グラウンド上にiPadを持ち込んでトレーニングの意図を映像で説明すると、練習の意図を出すことに関しては、体感で言えば口頭で説明するよりも数倍選手の理解が早いと感じます。

ここから言えるのは、次のような流れが現状の私にとっては理想的なトレーニングサイクルです。

①練習前の15分程度の全体での映像でのミーティングで導入
②各トレーニングセッションの前にアシスタントコーチから各ユニットごとにトレーニングの意図となる事象の動画を見せる(なのでiPadは3〜4台、とその数と同じだけのアシスタントコーチが必要)
③トレーニングセッションは事象の意図が暗示的に設計されている
④選手たちがオーガナイズに適応する形で問題を解決を試みる
⑤設計されたフリーズでコーチからさらに修正がかかる

なので今の私の願望は、iPadがあと3台欲しいということと、選手に見せる用の映像を切り抜いて練習中に選手に説明しながら見せてくれるアシスタントコーチが3人欲しい、という感じです。

ここまで書いてきましたが、何よりの学びは、フットボールに限界はないということです。
人生、勉強です。

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