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〈狂気の指導者を目指して〉「原則1:プレスプレス走り、走り走りプレス」

「原点能力」を高める

今年は初めて年間通してリーグ戦を戦う指導者となりましたが、満足のいかない結果に終わりました。7戦して2勝5敗。失点は18を数えました。一体何が足りなかったのでしょうか。それを考えるためにリーグ戦最終節が終わった後、選手たちに話を聞いて回りました。そこで一番印象的だった言葉があります。それは一昨年度も指導していた4年生選手の言葉でした。

「厚木くんは昔ほど走らせなくなりましたね」

そのとき、自分の指導者としての不覚を恥じて、選手たちに心から申し訳なくなりました。もっと選手たちを徹底的に鍛えることができたのに、それをしなかったことは指導者としてあるまじき行動としかか言えません。当時の指導を思い出すために、2年前の指導時につけていたノートを見ると、ボールペンで大きな文字でこう書かれていました。

「プレスプレス走り、走り走りプレス」

当時の意図はもうわかりませんがおそらくは、週6回の練習のうち3回はプレスの練習を行い、残りの3回は走り(=フィットネス)のトレーニングでちょうどいいというぐらいの意味でしょう。今シーズン、私は週3回のペースで、選手たちに90分間プレスを遂行するためのフィットネストレーニングを課したとは言えませんでした。だから勝てないというのは、考えてみれば当たり前のことです。

もちろん、競技経験がある方は当然生じる疑問ですが、90分プレスをかけ続けることはできるのか?ということが議論にあがります。この点に関しては、条件付きで可能、というのが現時点での私の考えです。条件付きの条件というのは、相手が我々よりフィットネスの面で上回っていなければ、という仮定です。要するに、相手が自分たちより高いフィットネスを持っている場合、試合終盤に向けてフィットネスの差が顕在化する量が拡大していってしまい、タックルラインを維持できなくなってしまいます。逆に言えば、限定留保付きではありますが、90分プレスをかけ続けることは可能だと思いますし、今後のトレンドになっていくだろう予想しています。

先述の通り、フィットネスでの不利は最早戦術レベルでの修正はほんとど不可能と言っても過言ではないでしょう。ボクシングでの階級の違いが、決定的な勝敗の決定因のなるのとよく似ています。つまり、フィジカルが足りないからフィジカルを鍛える。という身も蓋もない結論に行き着きますが、フィジカル面での不利をコレクティブにプレーし、高い技術を持ってカバーするというのは、多くのチームにおいてやはり現実的ではないのでしょう。

そんな中でも技術だけで世界の頂点に上り詰めたのが、ペップバルサでしょう。そんなバルセロナが重視する3つのP、すなわちプレス、ポジション、ポゼッション(Press, Position, Possesion)のうち、ペップはポジション(=立ち位置)を最重要視していると言われています。この考え方に私は概ね賛成ですが、その手段として高いクオリティの選手を揃え立ち位置を調整することで整流するというアプローチは、全てのチームが採用できるストラテジーとは言えません。そこでやはりプレッシング戦術を極めていくことが、良い立ち位置を確保する最適な手段と私は考えます。そこには3つの理由があります。

ます、良いプレッシングの組織的なアクションは、ボール奪取時に、チームがボールを保持するために必要なグループの立ち位置を整備することを可能にするからです。これは例えば、2ndディフェンダーがカバーリング可能な立ち位置を取ることによって、フィルターアクションだけでなくボールを解放するために有効な斜め後ろの立ち位置を取ることをタスクとして選手に課します。ボール奪取後からポゼッションの安定のために必要な6本のパスを回すために有効なポジションを取ることを、良いプレッシングのオーガナイズが助けることは明らかでしょう。

次に、効果的なプレッシングは相手のオーガナイズに影響を与え、ボール奪取時に自チームにとって攻撃に有効なスペースを創出します。考えてみれば当たり前のことですが、例えば相手チームのレシーバーの選手が前進サポートを選択した状況でボールを奪取することができれば、その選手の背後にスペースを獲得することができます。つまり、ボールを保持する能力を高めなくても、相手の陣形を破壊することでボール保持を用意にすることができるのです。この点は、私が今シーズン軽視していたファクターです。というのもボール保持にある問題を保持の局面をトレーニングすることで解決を試みていましたが、ボトルネックは実は他の局面にあったかもしれないからです。具体的に言えば、ボール保持局面を改善したいならばボール保持局面に対して介入するのではなく、ボール奪取からボールを保持に移行する局面を改善する必要があるかもしれないということです。チームがいずれの状況にあるかは継続的なモニタリングをする必要があるでしょう。少なくとも一つの指標として有効なのは、ボール奪取後5本までのパスと6本目以降のパスを弁別することでしょう。奪取後5本目までのパスが上手くいかないなら、6本目以降のパスについて練習する必要性は低下することは妥当です。その点について、基準が曖昧であったことは反省を要するでしょう。

さらに、精度の高いプレッシング戦術はゲームの主導権を握ることに寄与します。相手のディフェンスラインでのミスを誘発することは、相手チームの集団的ストレスを増加させ心理的な優位性を確保することができるようになります。

ここまでプレスについて考えてきましたが、ここで思い出されるのは、ボクにとってはAztec Cameraの名盤『High Land, Hard Rain』です。あのアルバムには、Roddy Frameの才能の煌めきが燃え上がるような曲しかありません。あえて重ねていうならば、High Press, Hard Trainといったところでしょうか。

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