檸檬の日々

なんとなく朝目覚め、なんとなくな日常を送るようになって、溶けるように時間がすぎた。今日は、指導教員に研究計画書が「厚木くんらしくない」と少し諭されるような、少し詰められるようなお叱りを受けた。

今までのボクなら、「ボクをボクらしさの枠に収めないでくれて」とでも言ったのだろうが、どうもそういう気分にもならなかった。それは多分、ボクに非があることが明白だからだろう。帰国してからというものの、めっきり文章を書けなくなってしまった。文章が出てこないのだ。というより、文章を書いて批評にさらされる場所に身を晒すことをやめてしまった。

もちろん創作活動をしていない人間が、創作をしている人間を撃つというのは愚かな行為だ。無料で動画を見れている視聴者が、ユーチューブの投稿頻度を上げろとか、内容が気に食わないとか、喚いている様は浅ましいというに尽きるが、自分もどこか批評する立場に立って自分がリスクを冒すことをやめてしまった気がする。

「オレがルールなの。オレはここにいる。男は一人でも軍隊なんです。」

そうマーシーが言っていたから、ボクは一人の軍隊として一人で兵卒をやり、下士官をして、参謀将校をしながら、将軍をしていたはずなのに、率先垂範ということを忘れてしまったようだ。だから何もしていない。朝も起きない。家事もしない。日記をつけなければ、家計簿もつけない。勉強もしない。内定もない。読書もしないし、本も買っていない。筋トレもしない。全てを手に入れようと望んで、何も手に入れていない。己の虚しさに悲しくなる前に、悲しくなるほど己の虚しさに向き合わなかった。

周りは就職を決めたり、もう就職して働いたり、ボーナスをもらっていたりする。ボクは負債と睨めっこしながら、牛丼屋でセコセコとお椀に牛肉を盛り、時々何かを加熱するだけだ。

帰国から3ヶ月が経ち、いよいよドイツ語は薄れてきた。基本的な単語も出てこない。この前はmöglichが出てこなかった。今日は英語を喋った。英語も出てこない。もう何も残らない。何もない。

ボクの人間としての雑さ。そういうものに対峙し続けなくてはいけない。そう思う。とりあえず。


よろしければサポートをお願いします。みなさんのサポートで、現地で糊口をしのぎます。