ZARD マイフレンドに見られる真実の愛 〜追い風としての彼女〜

マイフレンド / ZARDはリリースから二十五年以上経った今でも愛され続けている名曲。アニメ、SLAM DUNKのエンディングテーマ曲として知られる。
では、なぜここまで愛される曲となったのか。なぜZARDの代表曲の一つとして語られるのか。じっくり考察していきたい。

ではまず、歌詞を見ていこう。

マイフレンド / ZARD 

"あなたを想うだけで 心は強くなれる
ずっと見つめてるから 走り続けて

ひたむきだった遠い日の夢は
今でも眩しい
どんなに不安がいっぱいでも
真っすぐ自分の道を信じて
飾らない素顔のあなたが好き…
変わってしまうことが哀しい

いつも輝いていたね 少年のまま 瞳は My Friend
あなたがそばにいると 何故か素直になれた
この距離通り抜ける 風になりたい

真実の愛なら きっと色んな事
乗り越えられたのに
星のパレード 涙がこぼれない様に
大きく息を吸った
ひとりでいる時の淋しさより
二人でいる時の孤独の方が哀しい

いつも笑っていたね あの頃二人 せつない My Friend
あなたを想うだけで 心は強くなれる
ずっと見つめてるから 走り続けて

いつも輝いていたね 少年のまま 瞳はMy Friend
あなたを想うだけで 心は強くなれた
ずっと見つめてるから 走り続けて

走り続けて…"

作詞 坂井泉水

まずは歌詞の細かい部分よりも先に、言葉が集合したことによる「曲」としての全体のイメージから見ていきたい。

聴く人によって、それぞれ持つイメージは異なる。それを踏まえた上で、今回は話を進めたい。

一般的なイメージでは、「応援歌」として括られ、タイトルも「マイフレンド」であることから、2人の男女と思わしき存在が出てきながらも、恋愛の曲として捉えられることはあまりないと言える。

しかし私はあえてこう言おう。
この曲こそ、日本音楽史上最高のラヴソングだと。そう。これは単純な応援歌ではない。
複雑な感情を爽快に歌い上げた一方通行のラヴソングなのだと。

ではその細部から見ていこう。
本文では、1番のみを考察し、2番からは後編として記述する。
前提としてこの曲の語り手は女性だと仮定する。

"あなたを想うだけで 心は強くなれる
ずっと見つめてるから 走り続けて"

この歌い出し、この時点で2人はもう既に一緒にはいないのだろうと考えられる。つまりバラバラになった後の歌であることがわかる。女は男と一緒にはいられなくなった。男は去るが、女はずっと男のことを想い続ける。
ここから推測できるのは、女は男のことが好きなのだということ。そして可能性としては、2人は付き合っていて別れた、ということが挙げられる。
では続いてAメロの部分にいこう。

"ひたむきだった遠い日の夢は
今でも眩しい
どんなに不安がいっぱいでも
真っすぐ自分の道を信じて"

そう。ひたむきに追っているかつての夢は今でも眩しいのだ。
つまりここでいう夢は、まだ「叶っていない夢」なのだ。だからこそ道は不安でいっぱいで、それでも信じて進まなくてはいけない道なのだ。しかし、「遠い日」から夢は変わっておらず、ずっと同じ夢を追いかけているひたむきさが伝わってくる。しかし、この夢を追っているのが男なのか、女なのか、はっきりは分からない。それを踏まえながら次を見ていこう。

"飾らない素顔のあなたが好き…
変わってしまうことが哀しい"

続いてBメロの部分。意味深なフレーズが登場する。「変わってしまうことが哀しい」
文脈では、「ありのままの君が、君でなくなってしまうことがやだ!」という感じだが、もう少し深掘りしてみる。
「飾らない素顔のあなた」とは、女が理想とした彼の像であり、それはつまり、ずっと遠い日から同じ夢を追いかけている彼なのだ。そんな彼が「変わってしまう」つまり、その夢を諦めてしまうという事。それが哀しいと言っているのだ。
本当に彼がその夢を諦めようとしているのかは分からないが、女からは少なからずそう見えてしまった。それと同時に自分の元からも去っていった。そんな情景がみえてくる。ではサビにいこう。

"いつも輝いていたね 少年のまま 瞳は My Friend
あなたがそばにいると 何故か素直になれた
この距離通り抜ける 風になりたい"

まず一つ、サビで特徴的なのは、上の2行は過去形であること。そこに注目すると、この2人はそもそも付き合っていなかったということがみえてくる。キーワードはタイトルにもなっている「My Friend(マイフレンド)」だ。
かつての彼は、少年のように瞳を輝かせていた。そしてその瞳はMy Friend。つまり、彼の輝く瞳に映るのは「マイフレンド」だった。女は彼にとってみれば、ただの「マイフレンド」だった。なかなかの衝撃だ。
 そして、もう一つ、その後に続く「あなたがそばにいると何故か素直になれた」の部分。女は素顔の彼が好きであることが、Bメロからわかることから、「素」であることが彼女にとって一番大事なことなのだ。そして、あなたがいると私も素直になれる。つまり、女は彼といる時の自分が一番好きで、その自分を最も大切にしたかった。だから彼と一緒にいたということが推測できる。
 そして、最後の部分。「この距離通り抜ける風になりたい」さまざまな解釈ができそうであるからこそ、解釈が難解であったが、私はこう推測する。
「この距離」とは、「遠い日」から、「今」までの距離のことだと。遠い日から追いかけてきた、その夢の軌跡が今までずっと繋がっており、それを「距離」として表現した。そして女はその「距離」を通り抜ける風になりたいのだ。遠い日から吹く風は、彼の背中を押し、追い風となって、今現在まで、そしてその先の未来まで運ぶ。ずっと女が彼の夢を応援してきたのは、「風」だからだったのだ。だからこそ、彼には夢を最後まで諦めずに掴んで欲しいのだ。それが彼女の使命だから。

女はずっと前から片思いであることは気づいており、だからこそ彼女はパートナーとしてではなく、「風」として、最後まで彼を見届けることを心に誓ったのだ。

一番だけで、女が男に抱いた感情と、自分の中の決断が見えてくる。ここまでで既にこの曲は、ただの応援歌ではないことは確かになった。
男にとって女は「マイフレンド」だが、女にとって男は、「好きな人」であり、夢まで運び込まなければいけない最も重要なパッケージと彼女は理解した。

男にとっての「夢」と、女にとっての「夢」は異なるものだ。男の夢は何かは細かいことは分からないが、女の夢は、その夢を最後まで見届けること。つまりゴールは同じなのだ。
バラバラになりながらも同じゴールに向かって向かおうとする。それぞれの思いを抱えながら。

ただの「好きだった」で終わろうとしない。共に最後まで駆け抜けようとする覚悟は、まさに愛だ。これこそがラヴソングだ。

長くなりすぎたので、一旦ここまでにしよう。

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