泣きわめいた男
あんなに泥酔したのは、20代の頃以来ではないか。
店内では平静を保ち、客やスタッフと楽しく話したのを覚えている。
何を飲んだかも、しっかり覚えている。
テキーラベースのカクテル二杯。テキーラのショット一杯。ギムレット、モヒート、もう一つラムベースのカクテル。それから、客のアメリカ人と乾杯したウイスキーショット二杯。
スタッフに、酒強いですねと言われたが、歳をとってだいぶ弱くなった方だ。
店は12時に閉まる。その少し前に運転代行を呼んだところまでは覚えている。
目が覚めたのは、自宅の駐車場。
助手席のドアをあけたまま、車の中で寝てしまっていた。時計を見ると朝5時になっていた。
音を立てないように家に入り、妻とは別々の、自分の寝室に行った。
その後、10時過ぎまで寝てしまった。
もちろん、妻は口をきいてくれない。
夕方になって、
「このままスルーするつもり? 昨夜のこと、あなたから説明しないかぎり、あたしはあなたと話したくないし顔も見たくない」
と、妻の方から切り出した。
運転代行で帰ってきたが、車の中で寝てしまい、5時ごろ家に入ったことを話すと
「それだけ? あなた覚えてないの?」
「え? 何かした?」
夜中に、寝ていた妻に電話をかけたそうだ。
そして泣きわめいていたと。
さらにひどいことに、ゲロゲロと戻しながら泣いていたとのこと。
全く覚えていなかった。
体調がすぐれずいつもより早く寝たという妻は、夜中に起こされて、俺の泣きわめく声と吐く音を聞かされたのだ。
「気分が落ち込んでいる時に飲みに行くなと、何回言った?」
こっぴどく叱られた。
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