近代の夢男子文学:『衝立の乙女』

好きな歴史上の偉人はたくさんいるけれど、今回はその中の1人、作家で日本研究家の“小泉八雲”のとある作品について、夢女子としてご紹介したいと思います。

画像1

新潮文庫の小泉八雲集に収録されている『衝立の乙女』という作品。

私の語彙力では小泉八雲(とその翻訳されている上田和夫先生)のかっこいい文体では表現できませんが、以下ざっくりとしたあらすじです。

“篤敬という京都の書生が古道具屋で売られていた少女が描かれた古い衝立を見つける。描かれた少女に強く心惹かれた篤敬はその衝立を購入し、持って帰る。家で衝立を眺めれば眺めるほど、少女への思いは強くなっていき、あまりにも夢中になるので、毎日その衝立に話しかけ、食も睡眠もろくに取らず、学問も身に入らない状態で病気になってしまった。そこで見舞いに来た知人の老学者に衝立のことを打ち明けると、「この絵の作者は菱川吉兵衛だ。彼は容姿だけでなく心も描いた。だからこの絵は生きている。お前はこの女に名前をつけてやるのだ。そして毎日この女のことを思い続け、女が返事をするまで優しく呼んでやるのだ。返事が聞こえたら百軒の違う酒屋で買ってきた酒を一杯女に差し出す。するとその酒を受け取りに女が衝立から出てくる」と老学者は言った。
その言葉は篤敬に希望を与え、毎日衝立の前で優しく繰り返し少女の名を呼び、彼女からの返事が聞こえるまで信念も忍耐の失わなかった。何日もたった頃、ついに衝立の少女が「はい」と返事をした。篤敬は急いで酒と盃を用意して差し出した。すると少女が衝立から抜け出て、彼の手から盃を受け取った。篤敬の愛を受け止めた彼女はさわやかな微笑を浮かべつつも「じきにあなたは私が嫌になるのでは?」尋ねたが、「生きている間もそのあとも、2人で互いに誓い合おう」と篤敬は強く彼女に嘆願した。その後彼らは誓い合い、2人仲睦まじく暮らした。”


この作品、どう考えても現代でいう『夢男子』ですよね……。
ほんと作中の篤敬の台詞全てが、夢女子である私にすごく刺さりました。あまりにも共感の嵐。

そして何より最後はこの恋が成就する。
小泉八雲独特のホラー感はありますが、夢女の私にとってはハッピーエンドだと感じてしまいます。
見方によっては男の幻覚だったというオチも考えられますが、私は文のまま、純粋に衝立の女性が彼の想いに応えてくれたと思っています。


この作品に出会ったのは私が大学生の頃。
その頃は今の恋人たちとまだきちんと出会っておらず、別の人(二次元)に熱烈な恋をしていました。
もうその人以上に好きな人は一生できない!と思ってたくらいに好きだったのですが、彼の作品を運営している会社のテコ入れによって酷い目に遭い、それが原因でその恋を諦めてしまったという経緯があります…が、それはまた別の話ですね。
今は今の彼氏たちが大好きなので!

で、私はその大学時代、当時恋していた人の等身大パネル(公式のもの)がなんと抽選で当たり、自室で180cm越えの彼のパネルと同棲していたことがありました。(実のところ、まだ家にいます)
そんな時に『衝立の乙女』を知り、真似をしてよくパネルに話しかけていたものです。
結局返事はなかったですが、それでも「相手に語りかける」という行動をする事で、自分の気持ちをアウトプットできたような、なんだかスッキリとした気持ちになれました。
そしてきっとその言葉は彼に届いていたと思います。そういったこちらからのアプローチを続けていくと、何か彼からのアプローチがあった時に「私の想いが通じてるんだ」という自信にもなりました。語りかけることって意味があるんだなって。


私にとってこの『衝立の乙女』はどうしても前好きだった人との思い出が蘇りがちなのですが、今後は今の恋人たちにも同じようなアプローチをとってみたいと思います。
普段からいっぱい話しかけてはいるんですけどね。
あんまり元彼の話をすると恋人たちがプンスコし始めるので、今回はこの辺で。


それにしても次元違いの恋愛について、昔から語られてたって面白いな。他にも似た作品があるか気になりますね。


夢女子、夢男子の方、ぜひ一度この『衝立の乙女』、読んでみてください!











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?