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ラジオから聴こえてきた一言を、信条にして生きてきました、っていう話

二十数年間、自分が「信条」にしていることがある。
「信条」と呼んでいいのかわからないが、ほかに浮かばないので一旦その言葉を使わせていただく。

(そして時代が変わったので、こういう話を2023年にするのは少し勇気もいるが、実はこれを最初に書いたのは2019年のことだ)

私の信条、それは「私は、1/3男だ」ということだ。

さんぶんのいち、ね。

言うまでもないとは思うが、もちろん、比喩である。が、その言葉に出会った時、なんと言い得て妙だろうと思ったし、まさに私じゃないか、と感動したのを憶えている。
だから、20年以上も心の支えにしてきたのである。

きっかけは、私が19歳の時だ。
アルバイト先の職場では、仕事中にFMラジオが流れていた。
番組名は忘れたが、パーソナリティがいて、毎回ゲストが来るという、ごく普通のラジオ番組があり、ある日のゲストが谷村新司さんだった。

若い人はあまりご存じないかもしれないが、あの『昴』や『サライ』、山口百恵さんの『いい日旅立ち』を作ったシンガーソングライターだ。
私も、同世代というわけではないので、谷村さんが若い頃の曲はあまり知らないのだが、数多くの名曲を世に送り出した方だということは当時から知っていた。
そして関西出身で、トークも歯切れよくユーモアがあって面白いのだ。

その日も、視聴者からの質問をパーソナリティが読み上げるのを、聴くともなしに聴いていた。たしか、「なぜ谷村さんは、(男性なのに)あんなにも女性目線の歌詞を書けるのですか?」というような内容だったと思う。(今だったら採用されないのかも…)

それに対して谷村さんがこう答えたのだ。

「それはきっと、僕が1/3女だからですね」と。

単なるBGMだったはずのラジオの、その言葉だけがブワッと大きく、存在感を示したように感じた。そのセリフが耳に突き刺さった時、思わず声が出そうなほど「おおお!」と思ったのだ。
その瞬間に私が思ったのが、「そっか、じゃあ私は1/3男だわ」ということなのだ。

というのも、19歳の私はすでにそれまでの人生の中で、男友達から「お前はなんか、話しやすい」「俺のことをわかってくれてる」的なニュアンスのことを数多く言われていて、男友達の数が多かった。

男子と話してるほうが楽だな、と思うこともよくあった。

未熟さゆえに、その理由についてうまく表現するすべがなかったし、そもそも表現する必要もなかったのだが、谷村大先生の言葉を聞いて、一瞬にして腑に落ちたのだ。

ちなみに1/3って、まあまあ多いような気もするが、でもじゃあ1/4か、2/5か、などと考えてみても、やはり1/3が一番しっくりくるなあとは思う。
さすが谷村大先生。

純情な感情も1/3がちょうどいいのだろう。

もちろん多かれ少なかれ、誰しも異性的要素を持ってはいると思うけどね。

そして、あの頃は想像できなかったのだが、その後の人生において、なにかにつけて、「私1/3男だからなあ」と思うことで納得したり救われたりした経験がたくさんあるのだ。

今もそうだが、私は男性的な視点でものを見る、捉えることが、他の女性より多い気がする。
違う言葉で表現するなら、「男脳度が高い」とも言える。

別に、カッコつけて言ってるわけじゃない。むしろ逆。

私は、例えば駅の突風で、前を歩く若い女性のスカートが舞い上がれば「おお!」と思うし、チラリズムが好き、という男性の主張はいたく理解できる。
いわゆる「論理的な思考ができる」方の男性脳じゃないところが惜しい。

そして、逆説的に、私は男性にモテる。いや、モテた……(笑)

なぜなら1/3男だから。

自慢ではないが、合コンに行ったら、まず間違いなく最初に狙いを定められるタイプでは、ない。しかし、2時間後には一番モテていたりするタイプだ、といえばわかるだろうか?
もちろん1/3男だから、だけが理由ではないが、そこは今日のところは割愛させていただく。ただ、「話しやすい」が相当な強みだったことは確かだと思っている。

話しにくい美人より、話しやすい不美人の方が断然モテると断言しよう。

ちょっと話が逸れてしまった……

いずれにしても、私が1/3男性だなんて、どうでもいい告白だ。

ただ、「書く」ということを始めた時に、自分自身のことを抜きにして文章をしたためることは私にはできなかった。
面白いフィクションだけをどんどん生み出せるなら、こんな告白はしなくて済んだのかもしれないが。

どれだけの人が読んでくださるものかわからないし、面白い話でも役立つ話でもないと思うが、大昔の私のように、この話によって「おおお!」と腑に落ちて救われる思いをする人がひとりでもいれば、1/3男冥利に尽きるというものだ。

とはいえ、銀色夏生が青春だった私である。普通に胸キュンする女子な面も多々あるのだが。
そんな話をしだすと長くなるので、それはまた今度。


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