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国力主義と国家依存体質

新型コロナウイルスへの対応を巡って、奇妙な逆転現象が起きている。いわゆる右派が経済を重視するあまり、現在の感染症危機を過小評価して、積極的な感染拡大防止対策に反対している。いわゆる左派がもっと私権を制限して、諸外国に見られるような強硬な対策をするべきだと主張している。

こうした彼らのリアクションに、私はずっと違和感を覚えていた。しばらく考えてみても、その理由がわからずにいた。しかしようやく思考の当てをつけることができたので、不完全ながらもここに記しておく。

右派が経済を重視するのは、彼らがいわゆる「国力」を重視しているからだ。自国の国力が他国よりも優っていなければならないと、彼らは考えている。国民よりも国家に執着し過ぎており、新型コロナウイルスの影響で日本の経済力が下落することが、彼らは純粋に耐えられないのである。国民の生活を守ることを大義名分に掲げているが、それは主張の正当化のためでしかない。

いっぽう、左派はもともと社会福祉の充実を訴えているが、その実現は国家権力が強大でなければ不可能だ。ゆえに、彼らは国家権力の制限を重視しているはずにもかかわらず、彼らの社会福祉の充実という主張を実現するためには、皮肉なことに国家権力が際限なく拡大し続けるほかないのである。したがって、今回のような危機に際して、左派はなりふり構わず国家に依存し、その結果としての国家権力の肥大化にはまったく目を瞑ってしまうのだ。

すなわち、新型コロナウイルスへの対応を巡る右派と左派の反応は、右派は国力主義に陥るあまりのことであり、左派は従来の国家依存体質が剥き出しになったがゆえのことなのである。

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