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テロリズムとテクノロジー

9.11のテロが衝撃的だったのは、その出来事の悲惨さはもとより、テレビで繰り返し放送された世界貿易センターのツインタワーが倒壊する映像だったと私は思う。

まだ幼かった私の脳裏にもあの映像は深く刻まれている。国際政治など知らなかった当時の私は、ただぼんやりと「日本にも出来なかったアメリカ本土攻撃、しかもニューヨークという中心地を攻撃するとは、すごい人がいるものだなあ」と思っていた。そしてビルから飛び降りる人たちの映像を見て、「自分があんな目に遭うのは嫌だな」とも感じていた。

私のような感慨を覚えた者は少なかったかもしれないが、あの映像が世界中の多くの人々に少なからぬ衝撃を与えたことは間違いない。多くの人々は恐怖を覚え、憎むべきテロリストへの報復を求めた。ゆえに、9.11後のブッシュ大統領の支持率は92%に急上昇したし、ビンラディンへの報復を大義名分としたアフガン戦争は、のちにイラク戦争に反対することになるフランスやドイツも含めた多くの国々がアメリカへの支持と支援を表明した。反対に、欧米に反感を覚えていた者たちには痛快と勇気を与えたはずである。

映像のちからは凄まじい。人間の感情を理屈抜きに揺さぶる。感情を揺さぶられた人々は、さまざまな反応を示し、社会を不安定化させる。恐怖によって体制を揺さぶり、転覆させることがテロの目的なのである。テロの効果は、皮肉なことに映像メディアによって世界中に拡散されて、増幅される。

もっと言えば、テロの効果は人々の生活に近いほど大きなものになるだろう。そういう観点からすれば、テクノロジーが生活と密接に結びついている現代は、テロの効果も絶大なものになる。たとえば、スマートフォンなどのテクノロジーをターゲットにしたテロが、これから先ありうるのではないか。

テロリズムのありかたは、時代とともに移り変わっていくはずだ。特にテクノロジーは、その格好の標的となりうるし、効果を拡散、増幅させる役割も果たすことになるのである。

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