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移民制限と経済復興

トランプ大統領は、彼がまだ大統領候補だったころ、不法移民を厳しく取り締まるとの方針を掲げて差別主義者とマスメディアから罵られた。その是非はここでは論じないが、本稿では移民制限による経済的効果を考えてみたい。なお、以下の考察では景気動向は一定とする。

まず、移民労働者が国内に流入してくる状況は、その国にとっての労働力の増加を意味する。つまり労働力需要が満たされやすい環境であるわけだ。労働力が即時に確保できるならば、雇用者は賃金を上げることなく労働者を雇用することができる。すなわち、移民は賃金上昇の阻害要因となる。

移民労働者の流入が減少すれば、労働力不足になる。労働力が不足した場合、雇用者は3つの選択肢のなかから選ばなければならない。

1.賃金を上げて、労働力を確保する

2.設備投資をして、生産性を向上させる

3.なにもせずに、事業規模の縮小を受け入れる

雇用者は利益追求を目的とするから、3.の選択肢はできるだけ避けようとする。利益の見込みがある程度あるならば、雇用者は1.か2.の選択をすることになる。

1.の選択をした場合、労働者の賃金が上昇するので、消費や貯蓄が増加することになる。

2.の選択をした場合、設備投資が必要となるので、投資や借り入れが増加することになる。

このように1.や2.の選択がなされることによって、国内総需要が大きくなる。特に2.の設備投資が重要だ。さらに設備投資によって生産性が向上するので、雇用者の競争力を高めることにも繋がる。グローバル経済のなかでは競争力強化が必須であるから、この点も留意しなければならない。

それに設備投資は大きな借り入れを伴い、したがって経営者から見ればリスクに映るから、低賃金の労働者でまかなうことが可能ならば、どうしても易きほうの低賃金労働者の雇い入れに経営者は逃げてしまうのである。だから設備投資への圧力として、労働力不足の状態を作り出さなければならないのだ。

ここで消費者に価格転嫁されるとか、移民労働者による消費がなくなるとかの反論もあるだろう。

まず、経済は競争であるから、企業は価格転嫁をできるだけ避けようとするはすだ。そのぶん企業の体力を奪うようにも思えるが、資本収益率が経済成長率を上回っている現在では、資本家に分配していた分を労働者に分配したほうが、資本家と労働者の消費性向のギャップからして国内総需要を大きくすることになる。

また、移民労働者による消費分は、賃金が上昇した労働者の消費や設備投資による国内総需要の増大によって、容易に吸収できてしまう程度でしかないだろう。

以上をまとめる。移民を制限すると、経済に対して次のような好影響がある。

1.労働者の賃金上昇

2.設備投資の増加

3.賃金上昇による消費と貯蓄の増加

4.設備投資による投資の増加

5.設備投資による生産性の向上

6.消費と投資の増加による国内総需要の増大

7.生産性の向上による競争力の強化

すなわち、移民を制限することで、国内総需要が大きくなり、国内産業の競争力も強化されることになるのだ。

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