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新型コロナ感染は罪か?

有名人の新型コロナウイルス感染が相次いで判明しているが、報道ステーションの富川アナウンサーのように謝罪を表明する者もいる。

新型コロナウイルスの感染力は凄まじく、また濃厚接触者には経過観察として自宅待機が求められるから、感染者がひとり出ると、その周囲は蜂の巣をつついたような騒ぎになってしまう。そういう意味で、感染者は罪悪感を持ってしまうだろうし、結果としては「迷惑」をかけてしまっていることになるのだろう。

だが、新型コロナウイルスの感染で留意しなければならないのは、感染が判明した順番で実際に感染したかどうかはわからないということだ。潜伏期間は平均5日と言われているが、あくまで平均であって、人によってその期間は異なる。また、発症から陽性判明まで平均8日とのことだが、これもそれぞれの事情によって違ってくるだろう。したがって、先に感染が判明したからといって、先に感染したとは言い切れないのである。

たとえば、AさんとBさんがいて、Aさんが陽性だと判明後、Aさんの濃厚接触者としてBさんをPCR検査したら、Bさんも陽性であったとする。しかし、この場合に感染がAさんからBさんの順番だったかはわからない。逆の場合も充分ありうるのだ。この場合にわかることは、AさんとBさんが「クラスター」として感染しているという事実だけでしかない。「だれが感染させた」ということは、結局のところ不明なのである。

世間では、いわゆる「犯人探し」のようなことが行われて、感染拡大の責任を追及する風潮があるようだ。たしかに、一部ではあるが、愚かな行動でいたずらに感染を拡大させているように映る者もいる。しかし、その愚か者がほんとうに感染拡大させているかはわからないし、新型コロナウイルスに対する警戒として模範的な行動をしている者であったとしても、もしかしたら感染拡大させているかもしれない。実のところ、真実は藪の中であり、だれにもわからないのである。

それにもかかわらず、「犯人探し」をしたところでそれは徒労に終わるし、もっと悪いことには冤罪となってしまうかもしれない。新型コロナウイルスは社会的な脅威であるから、我々は感染者を悪者にしがちである。そして悪者にされても仕方ないような行動をしている者も実際に存在する。ただ、もし冤罪を招いてしまったら、それはさらなる悪にほかならない。ゆえに、我々はわからないことはわからないと率直に認め、その事実を広く了解することが必要なのではないだろうか。

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