バークとトクヴィルに関するメモ
エドマンド・バーク(1729〜1797)は「フランス革命への省察(1790)」において、フランス革命について懐疑的な見解を展開した。
フランス革命に自由と平等を立ち上がった市民は、人間の理性によって完成された社会を建設することが可能だとする啓蒙主義を掲げていた。
しかしバークは、現状を破壊し、否定すれば前進するというのは幻想であり、莫大な損害を被ることが少なくないと指摘した。実際、フランス革命は恐怖政治の末に混乱に陥り、その後のナポレオンの専制政治を呼び込むことになった。つまり、民主主義の熱狂が独裁者を生み出したのだ。したがって、我々の理性には限界があり、過去の経験値や良識、人智を超えた絶対的なものに価値を見出すべきだと、バークは主張した。
バークと同じ観点から、オルテガは次のように述べている。
『その両者、ボルシェヴィズムとファシズムはふたつの偽りの夜明けである。明日の朝をもたらすのではなく、何度も経験された昔日の朝をもたらすのである。それらは、原始主義なのである。過去のすべてを消化する方向をとらずに、その一部分と格闘を始めるような単純さに陥る運動はすべて、同様であろう』
ただし、バークはなんでも過去を踏襲すれば良いと考えたわけではなかった。人間が不完全であるという前提に立つのが保守思想であり、人間は当然ながら過去においても不完全であるわけで、過去だからといって無謬だとは言えないのである。
フランスの貴族階級出身のアレクシ・ド・トクヴィル(1805〜1859)は、フランス革命後の民主主義が崩壊状態にあることに深く心を痛めていた。そこで、彼は民主制を先駆けて行っていたアメリカに渡り、その視察を始めた。アメリカはリーダーが優れているので民主制が維持されているとトクヴィルは考えたが、時の大統領アンドリュー・ジャクソンは稀に見る傍若無人な男だった。
『ジャクソン将軍は、性格こそ激しいが能力は凡庸な男である。自由な人民の統治に要する資質を示すものは、彼の経歴を通じてなにひとつなかった』
トクヴィルは、たとえとんでない指導者が選ばれても、デモクラシーがしっかり機能する要素がアメリカ社会にはあるのではないか、とトクヴィルは考えた。そして、アメリカ社会は国家と個人のあいだの中間領域が分厚いということに気づいた。結社や教会のような団体への参加により、パブリックマインドが醸成され、他者への想像力が育まれる。そこでの合意形成のプロセスこそが、善き社会を構築し、生きる価値へと繋がっていくのだとトクヴィルは考えた。
しかし、こうした状態がずっと続いていくことには、トクヴィルは悲観的だった。いずれ中間領域に綻びが生じ始めて、多数者の専制に繋がるだろうと考えたのだ。
最後に、バークの言葉を記す。
『Reform to conserve (保守するための改革)』
大切なものを守るためには、変わらなければならないのだ。
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