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事業者を救済する必要はない!

新型コロナウイルス感染拡大を受けた、いわゆる自粛経済のなかで、経営が脅かされている事業者が多くある。ゆえに、政府や地方自治体による事業者支援策が次々と打ち出されている。

私は、一義的には事業者を救済する必要はないと考えている。政府が保護すべきは国民ひとりひとりの生活なのであって、事業者の経営ではないからだ。

ただ、当然ながら、事業者自体は商事登記に記載された紙切れに過ぎないものの、そこで雇用されて働く労働者があり、事業者が倒産してしまうと、その労働者たちの生活が危機に瀕してしまう。したがって、労働者の生活を保護するための「手段」として、政府は事業者を救済する必要があるのだ。

しかし、この論理展開を理解せず、事業者の救済は本来「手段」であるはずなのに、いつのまにか「目的」にすり替わってしまっている。そのため、ほんとうに守られるべき末端労働者がまったく無視され、彼らに支援が行き届かないという深刻な状態に陥っている。

経営者は古い言い方になるが、あくまで資本家であり、資金を調達する手段を基本的には有している。さまざまな支援策が打ち出されている現在では、そのことは特に強調しておかねばならない。それに比べて末端労働者たちは、おそらくサラ金に行っても貸してもらえないかもしれないし、貸してもらえても高利の借金に苦しむことになるだろう。経営者は銀行で貸してもらえるのに、末端労働者は銀行ではほぼ貸してもらえないはずだ。

また、事業者が倒産したらお店がなくなるなどという牧歌的な意見もあるが、経済とは需要が供給をつくるのであって、供給が需要をつくるのではない。たとえば、東京の飲食店がほとんど潰れても、景気が回復してくればすぐにもとどおりになる。大切なのは需要であり、その大部分を形成しているのは、消費主体たる労働者たちなのだ。

救済すべきは国民の生活であり、特にその日暮らしのような、末端労働者たちなのだ。まずはその人たちから支援しなければならないのに、現実には比較的富裕な資本家(事業経営者たち)から支援されてしまっている。

それでも、事業者が雇用者としての義務を果たし、休業等に伴う手当(給料)をきちんと労働者に支払っているならば、まだ理解はできる。だがしかし、実際にはバイト等の非正規雇用者たちは、すぐに解雇されたり、法定の休業手当すら支払われていないのではないだろうか。雇用の責任を果たしていないかもしれない事業者を、我々の税金を使って救済しようとしているのである。これが政府のやることだろうか。非常に憤りを感じるし、政府の責任放棄だと断ぜざるを得ない。

なぜ、支援を受ける事業者に休業手当を含めた労働関連法を遵守するとの誓約書を書かせないのか。どうして政府は、法令遵守をしていない事業者の支援は打ち切るとのメッセージを発信しないのか。それはほんとうに困窮している国民の姿が、政府の視界には入っていないからだ。自民党の支援団体である事業者にしか、目が向いていないからだ。

こんな状況下にあるのに、はたして事業者を救済する必要があるだろうか。私は「その必要なし!」と断言する。まず救済されるべきは末端労働者たちであり、彼らを無視した事業者支援は、政府が国民を見捨てた悪虐非道の行為なのである。

事業者は商事登記上の紙切れに過ぎないが、国民、そしてその大半を占める労働者は人間であり、実体がある。実体よりも紙切れを重視するのは、本末転倒でしかない。国民の生活を保護するという本来の目的を失念せずに、政府は紙切れではなく、国民の生活への支援をしていかなければならない。

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