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ロックダウンに抗議する住民とトランプ大統領

2019年4月17日、ドナルド・トランプ米大統領は、州知事による厳しい外出制限に住民たちが抗議行動を起こした州について、「解放しろ」と大文字で強調したツイートを連投した。「 ミネソタを解放しろ 」、「 ミシガンを解放しろ 」、「 ヴァージニアを解放して 、みんなの偉大な修正第2条を守れ。攻撃されている」と連続してツイートした。

トランプ大統領は17日のホワイトハウス定例会見で、こうしたツイートについて記者団に問われ、ミネソタ、ミシガン、ヴァージニアの各州知事による規制の一部が「厳しすぎる」からだと述べている。

州政府による外出禁止など厳しい行動制限に抗議する住民デモは、ミシガン、オハイオ、ノースカロライナ、ミネソタ、ユタ、ヴァージニア、ケンタッキーの各州で起きている。いっぽうで、トランプ大統領がツイートで名指しした3州は、いずれも知事が民主党所属である。

ちなみに、住民デモの規模はまちまちで、ヴァージニア州の参加者は数十人だったが、ミシガン州では数千人だった。

また、さらに今後、ウィスコンシン、オレゴン、メリーランド、アイダホ、テキサスの各州で、ロックダウンに抗議する住民デモが予定されている。

前日の4月16日、トランプ大統領は国内の経済活動再開へのガイドラインを発表している。そのなかでトランプ大統領は、住民に同情するとしながらも「自分の意見は知事たちのとほぼ同じだ」とも話している。

ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、日本時間18日午前の時点で、アメリカで確認された感染者は70万1000人超と世界最多で、死者は3万6800人を超えている。16日の全米日別死者数は、過去最多の4591人だった。1日あたりの死者数が急増したのは、世界各地のデータを集計する同大学が、新型ウイルスによる感染症「COVID-19」で亡くなった可能性のある人も死者数に含め始めたことが、影響している可能性がある。

デモに参加する人たちは、厳しい行動や経済活動の制限はウイルス感染拡大に対する過剰反応だと主張している。市民生活に不可欠ではない事業所の閉鎖や移動制限を命令したウィトマー知事(ミシガン州)に対しては、すでに複数の訴えが連邦地裁に提起されている。

しかし、公衆衛生や疫学の専門家、さらには共和党所属の州知事の間でも、他人との距離を保つ「社会的距離」の重要性を訴える声が出ている。

以上、BBCの記事をベースに、ロックダウンに抗議する住民デモとそれに対するトランプ大統領の動きをまとめた。

まず、注意しなければならないのは、トランプ大統領が主導してこうした抗議デモが起きているわけではないということだ。自然発生的なデモの動きについて、トランプ大統領はツイートしているにすぎない。

トランプ大統領としては、11月のアメリカ大統領選でこうした考えの人たちの票を失いたくないだろうし、これまでの経済政策の実績をなんとかして守りたいという気持ちがあるのだろう。また、アメリカは戦争中でも選挙は必ず実施する国だし、デモは民主主義において極めて重要な権利である。自由と民主主義を擁護する観点からすれば、住民たちの動きは当然のことだと私は思う。

ただ、今回は感染力の強い感染症の対策をしているのであって、トランプ大統領は、一国を預かる指導者としては住民デモを煽るようなツイートをするべきではなかった。トランプ大統領がするべきだったのは、住民たちの気持ちに共感を示しながらも、感染症対策への理解を求めて、デモを抑制することではなかっただろうか。

「デモは民主主義の基本的権利であり、自由はなによりも価値のあることで守られなければならない。また、経済的不安があることも理解している。ただ、いまは感染症が流行している。アメリカのために、ここはしばらく忍耐してほしい」といったメッセージを、トランプ大統領は指導者として発するべきだったと私は思う。

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