見出し画像

Bon Voyage

こんな文を書いた3日後にこうなるなんてまあ誰も予想できないですよね、ほんとに。別にどうってことはないんですけど。

退任の理由がどんなものであろうと、単純に今は凄く悲しいです。なにしろ、チームとしての体をなしていなかったウチの監督を引き受けてくれて、座礁の危機から救い、勝利の港まで導いてくれたお方ですからね。もしあの時別の監督が来ていれば、今頃我々はJ2でアンドレスと水戸黄門やってた可能性も否定できないですし。

語弊がある言い方をすると、あなたは"ビッグクラブ"を目指すヴィッセル神戸に初めてやってきた"ビッグクラブ"向きの監督でした。入れ替わりの多く大物揃いのスカッドを不満が出ないように制御し、お金こそ出してくれるが一癖ある会長と上手く付き合う。言葉にすればたったこれだけになってしまいますが、実際はこんなに生易しいものではないということは志半ばでいぶきの森を去ったスペインの名将が証明してくれています。

あなたと過ごした日々は、とても素晴らしいものでした。適切な監督に適切な補強が与えられ、どこか噛み合わなかった歯車が少しづつ回り始めていきました。ゴール裏で飛び跳ねる我々の目の前には、確かに"相手を従属させるフットボール"がありました。

そしてあなたは、どんな名将にも成し遂げられなかったミッションを成功させました。トロフィーを掲げ、勝利の港で喜びを分かちあったあの日を、どうして忘れることができるでしょうか。

画像1

そして、2020年。世界の形が無惨に歪められてしまってからも、決してあなたのやっているフットボールは間違っていなかったと、少なくとも僕は思います。足りなかったのはクオリティを維持する選手層と、紙一重のところでの結果。「きっとやってくれるはず」と期待していた若手選手たちは、彼がノエスタのタッチライン際で声を張り上げている間にブレイクスルーを遂げることはありませんでした。

一晩経った今も、辛くてたまりません。近いうちに別れがやってきてしまうことはみな理解していたと思いますが、このような形になるのはとても残念です。

「クラブ史最高の監督に、最高のスカッドが与えられていれば」

「あの忌々しい感染症さえなければ」

フットボールの世界にタラレバは禁物ですが、どうしてもその事を考えてしまいます。あなたとACLを戦いたかったというのが神戸サポの総意ではないでしょうか。

今、これとは別にあなたとの航海を総括する記事を書いています。1年3ヶ月の日々をただ懐かしむのではなく、きちんと評価して次に繋げる。これが今我々のできる最大限の恩返しなのではないかと考えます。あなたが進めてくれた時計の針を、もう戻すわけにはいきませんから。

トルステンチームの皆様、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。あなたと神戸の歩みを一時期だけであれ記録することができたのは、とても幸せな事だったと思います。

また、どこかのピッチで。