TypingTubeは音ゲーなのか

考える理由

 Xやようつべを見ていると、タイピングチューブを「音ゲー」と呼ぶ書き込みが多々見受けられた。タイピングチューブを音ゲーとして捉えたことはなかった私はそれらがとても引っかかったため、果たして音ゲーと呼べるのかを考えてみる

「音ゲー」の定義

辞書的定義

 主観を除いた定義をWikipediaにもとめた

音楽に合わせてプレイヤーが何らかのアクションをとる(たとえば画面で指示されたボタンを押す、ステップを踏む、楽器を模したコントローラを操作する、など)ことで進行する。一般に、プレイヤーの行ったアクションが音楽と一致していれば得点が上がっていき、逆に一致していなければ得点が得られなかったり減点されてゆく。プレイヤーの操作が曲の進行と大きく外れた場合、曲の途中で強制的に演奏が中断しゲームオーバーとなるものもある。また、一定のペースでノルマが課せられ、そのノルマを達成できない場合にもゲームオーバーとなる。

Wikipedia - 音楽ゲーム 

 タイピングチューブはWikipediaに記述された定義に当てはまっていると思える。一応音楽に合わせて歌詞のフレーズが切り替わるし、プレイヤーはそのフレーズを打鍵する(=音楽に合わせてアクションをとる)。正しく歌詞を入力したら得点が上がるし、誤打すると減点される(=音楽と一致していれば加点、一致していなければ減点)。つまりTypingTubeは少なくともWikipediaの定義では音ゲーであるということになる

 余談だがニコニコ大百科では音ゲーの例が列挙されており、その中にTypingTubeの類似品であるTypenistやTYPINGMANIAが並んでいた

一般的音ゲーとTypingTubeの相違点

 しかしなんだろう、この違和感は
 BEMANIシリーズやゲキチュウマイ、太鼓の達人とTypingTubeを同列に語るのはどうしても抵抗感がある
 違和感の正体を探るため、いったんタイピングチューブを音ゲーであるとしたうえで、他音ゲーとの相違点を探ってみる

ノーツにタイミングを合わせてアクションをとる必要がない(リズムが全然重要じゃない)

 これが最大の乖離であるはずだ。他音ゲーは各種ノーツが流れてきて、それぞれタイミングが何ミリ秒ずれていたかを基準に判定が下され、それらに応じた得点が加算されたり、悪判定の場合コンボが途切れたりする。一方タイピングチューブは歌詞を分割した文字列が1本ずつ、ひとつながりになってプレイヤーに提示され、それをプレイヤーはひたすら速く打つ。フレーズの切り替わりに間に合いさえすればどんなタイミングで打鍵してもいいのだ。

 先のWikipediaの定義で考えた時は「音楽に合わせてアクションをとる」という部分にタイピングチューブは一応合致していると考えた。しかしこれはある種の拡大解釈であるといえる。このゲームにおいてリズムを気にする場面はほとんどなく、せいぜい「短いフレーズが連続して切り替わる部分で、切り替わり前に打鍵開始しないよう気を付ける」くらいである。そもそも切り替わりのタイミングが曲とズレまくっている譜面も数多く存在する。なんなら昔はタイミングを1秒単位でしか編集できなかった(そのため、1フレーズを長くとることでタイミングのズレの影響を最小化する人もいた

Typing Tube 【東方vocal】Against,Per fectCherryBlossom (typing-tube.net)
(1秒単位でしか切り替えれなかった時代の譜面の例)

コンボを気にしないプレイヤーが多い

 タイピングチューブは100点満点が基本の減点式で、「Miss」と「Lost」という2つの減点が存在する。Missというのは打ち間違い、Lostというのは切り替わりまでに打つことができなかった文字のことである。各文字には「100÷打つ文字数」点ずつ割り当てられている。Lostが発生したらその文字数分最終的な点数が減るし、Missが発生したら1回につき1/4文字分の点数が減点される
 そしてこのゲームにはコンボが存在し、Missなく打ち続ければコンボが続くが一回でもMissが発生したら途切れる。これだけ見れば他の音ゲーと何ら変わりないだろう

 フルコンボは各音ゲーにおいて目標とされることが多い称号である。しかしタイピングチューブにおいてはLostが0で一曲を終える「打ち切り」は意識されることが多いものの、「ノーミス打ち切り」すなわち他音ゲーにおけるフルコンボは中~高難易度譜面においてほぼ意識されない。コンボなんてあってないようなものなのである
 というのも、そもそもタイピングゲームガチ勢界隈において「ミスをしない」というプレースタイル自体主流でないのだ。当該界隈においてよく遊ばれる「寿司打」「e-typing」はミスをしてもそこでゲームオーバーになるわけではないし、「タイプウェル」「打鍵トレーナー」に至ってはミス数を(実質)問わない。極端な話いくらでもミスをしていい
 そんな理由もあって、たいつべ勢の間では大体「打ち切り」が他ゲーにおける「フルコンボ」、「ノーミス打ち切り」が他ゲーにおける「エクセレント」「フルパフェ」「全良」のような扱われ方であると感じる。そもそもコンボボーナスが存在しない上、Lostの減点がMissの減点の「4倍」と重要度がまるで違うため、中~高難易度譜面で得点を重視すると自然とミス軽視のプレイ方針になるのだ

各プレイヤーの攻略する曲がバラバラ

 タイピングチューブの「名物曲」「みんながやってる曲」を挙げろと言われても私は回答に窮する。「神っぽいな」「アイドル」などの高速かつ超有名なボカロ曲、ポップ曲は多くのプレイヤーがランキング登録しているが、それらの記録全てが彼らの全力で出されたものではないのは明らかだ
 一般的な音ゲーでは「高難易度曲」やその中でも突出した難しさの「ボス曲」に多くの上位プレイヤーが集まり、一定の点数・達成率、はたまた全一を目標にしてくり返しプレーする
 一方タイピングチューブの難易度は5段階で、歯ごたえのある譜面は大体最高難易度の☆5である。その上曲ごとの難易度は青天井であり、全一記録が100.00の譜面も11.70の譜面もすべて☆5であるため、難易度表示は指標としての意味をなさない。各自が好きな曲をおのおの攻略し、「最高難易度曲に上位プレイヤーが集まる」ことがない。そのため頑張ってスコアを出しても他人と比較できない。「ボス曲」などのわかりやすい目標は存在せず、目標スコアを自分で決めてひたすら孤独に戦うのみなのだ
 これは各プレイヤーが譜面作成をして、それをみんなで遊ぶという仕組み上避けては通れない問題なのかもしれないが、例えばBMSにおいては、プレイヤーが各種難易度表の譜面をダウンロードしてプレイするため、それらの譜面にプレイヤー人口が集中している。難易度表示も機能している。うぇるあめさんが難易度表を整備していたのはこれを見習ってなのだろうか

結論

 タイピングチューブはあくまで「広義の音ゲー」であり、有名なアーケード・スマホ音ゲーとは内容の隔たりが大きい
 冷静に考えてみると、たいつべを「音ゲー」と称する人たちもそんなことは重々承知だろうし、自分が「音ゲー=BEMANI、太鼓の達人など」というイメージにとらわれ、字面ばかり気にし過ぎていたようにも思えてきた
 以上


















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