ギターの弦を買った
ギターの弦を数年ぶりに張り替えた。
整体師さんとギターの話をしたからだ。
昔バンドをしていたという彼は、週に一度はギターの弦を張り替えていたらしい。今でも実家に帰ると、弾かずとも弦を張り替えるという。私はそれをとても丁寧な生活だと思った。
身体が軽くなったその足で楽器屋に出向いた。たくさん並べられたピックを眺める。特にポムポムプリンの柄に惹かれ、その中でもどの柄にするか悩んだ。楽器屋で1番ピック選びに時間を割いたが、結局買わなかった。
ギターやベースのコーナーも覗いた。ベースを試奏している人の音を聞き、胸が高鳴った。今すぐ大音量でギターを掻き鳴らしたい衝動に駆られた。
弦のみを購入し店を出た。整体師さんがバンドをしていた当時、400円だったという弦は今ではその倍の値段になっていた。
夜のバイトを終え、家でギターの弦を張り替えた。弦をキツく締めるとき、指の先がとても痛かった。
新しい弦でB'zのultra soulを弾いた。チョーキングをするとき、やはり指が痛くなった。こんなことで弱音を吐いていては上達しない。整体師さんは言葉通り、手に職をつけている。その手で人の身体を良くすることも、ギターに綺麗な音を鳴かせることもできる。私はそれを羨ましく、憧れに思う。
そして、丁寧な生活も。整体師さんの第一印象は笑顔の素敵な明るい人だった。しかし、そのうち本当は陰を抱えた人なのではないかと考え始めた。人はよくわからない。彼の生活を垣間見ようと、私は弦を買った。
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